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臆病なヒーローと可憐なヒロイン

BUMP OF CHICKENとaikoの歌、その登場人物同士が恋に落ちたら

BUMP OF CHICKENというバンド名には「弱者の反撃」という意味がある、そう聞いたことがある。たしかに彼らの楽曲には、躊躇ったり悩んだり、過去を振り返ったりクヨクヨしたり、そういう「弱き人」が登場することが多い。

だからこそ、時たま放たれる「闘志にあふれる歌」「物怖じしない歌」が燦然と輝くのだろうと、僕は考えている。人間の弱さというものは、星あかりを引き立たせるための闇だと言えるのではないか。誰もが自分の弱さを嘆きながら、淡い希望を持ち、おぼろげな誇りをいだき、かすかな光を放ちながら生きている、それが「世界」の成り立ちなのではないだろうか。

美しい闇のようなディスコグラフィに取り巻かれながら、一等星のごとく強い光を放つバンプの名曲として「アルエ」が挙げられると思う。

<<ハートに巻いた包帯を>>
<<僕がゆっくり解くから>>

いくぶん気障な比喩表現ではあるけど、力強い宣誓だ。愛しい人の心を癒やしたいと願う「アルエ」の主人公は、何とも勇ましい。それでもバンプは、やはりチキンでもある、ただ「強いだけ」の主人公を描きはしなかった。

<<一人で見ていた夕焼け>>
<<僕もいっしょに見ていいかい>>

彼は「アルエ」を守ろうとする気概を持ちながら、同時に「アルエ」に焦がれてもいる、か弱きヒーローだ。少しずつ距離を縮めたいと願う、あどけない少年(あるいは青年?)だ。

楽曲「アルエ」の主人公が、aikoさんの作品「終わらない日々」のヒロインと巡り合えたら、素晴らしいことが起こるような気がする。

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aikoさんのシングル曲、ヒット曲には、無防備に恋情を打ち明けているという意味で、バルネラブルなヒロインが度々、登場する。それでも根底にあるのは「誰かを守りたい」という強い意志なのだと、ハッとさせられることはある。楽曲「終わらない日々」のヒロインは、こんなことを歌う。

<<あなたの情けないくだらない所さえも愛してゆきたい>>
<<あなたが泣いたなら気持ちを重ねて抱きしめて>>

相手に無上の強さを求めるのではなく、むしろ弱さを包み込もうとする彼女の生きざまは、やはり星のように綺麗だ。それでも、その「星」の周りには、闇が広がってもいる。つまり楽曲「終わらない日々」には、可憐な要素も含まれている。

<<屋根から飛んでみる勇気なんてあるわけないじゃない>>
<<全てあなたが側にいるから出来るんです>>

勇気がないと認めることこそ、ある種の勇気なのではないかと思う。そして自分に「できること」が、誰かの存在あってこそのものだと意識するのは、クールなことだと考える。恋愛に限った話ではないだろう、誰の力も借りずに「無」から何かを生み出すことなど、人間には困難だ。秀でたアーティストは(それこそBUMP OF CHICKENやaikoさんは)多くの独創的な作品を生み出しているけど、それもやはり「誰かの支え」あってのことなのではないかと察する。

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愛しい人の心を開きたいと願う「アルエ」の主人公。恋人の弱さこそを見つめたいと願う「終わらない日々」の主人公。この二人が出会えた時、その上空には無数の星が散りばめられるのではないだろうか。

aikoさんは何度も<<いい?>>と問いかける。
<<あたしはサラリと歌いこなす事も出来ます。いい?>>

BUMP OF CHICKENは躊躇いがちに、勇気を振りしぼって声をかける。
<<僕も一緒に居ていいかい>>

ふたりが結ばれるまでには、回り道やすれ違い、不器用なやりとりといったものがあるかもしれない。それでも伴に歩き出せた時、その一足、一足には「真なる勇気」が宿るのではないか。自分が臆病だと認めるがゆえの勇気が、誰かの存在に守られていることを知るがゆえの勇気が。

<<そんな寒いトコ今すぐ出ておいで>>
<<全てあなたに教えたいなと思うもの>>

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アーティストは、楽曲の数だけ「ヒーロー像」や「ヒロイン像」を持っているものだと、僕は考えている。バンプの歩みにも、aikoさんの活動にも、一貫性のようなものはあるけど、放たれるメッセージや想いは様々だ。

今回、僕は「アルエ」と「終わらない日々」と主人公を結び付けるような試みをしてみたけど(そういう記事を書いてみたけど)、他にも「理想のカップル」は、たくさん生まれるのではないだろうか。

BUMP OF CHICKENの愛聴者は、それぞれ「これこそが自分にとってのヒーローだ」という作品を挙げられるのではないかと思う。そしてaikoさんの愛聴者は、やはり、それぞれに「これこそが自分にとってのヒロインだ」という作品を思い付けるのではないだろうか。

バンプのリスナーと、aikoさんのリスナーが、どのくらい重なっているのかは分からない。どちらの楽曲も聴いてきた僕は、もしかすると「わりに珍しい例」なのかもしれない。それでも本記事を読んでみたことで「バンプの曲を、もっと聴いてみようかな」と思い立つ人がいたり、「aikoさんの曲を、色々と知ってみようかな」と考え始める人がいたりするのなら、その「出会い」を尊いものだと僕は思う。

あるアーティストの曲を、こよなく愛せるということは、それほどに強く「何かを好きだ」と思えるということは、べつのアーティストの素晴らしさに気付く可能性をも意味しているのではないか、不遜かもしれないけど、そんなことを僕は思う。

これからもバンプによって、頼りなくも強いヒーローが生み出され、aikoさんによって、か弱くも逞しいヒロインが描かれ、その二人が、リスナーの「妄想」という限定的な世界のなかではあれ、強く結びついていくのなら、きっと僕は何度でも「おめでとう」と呟いていくことになるだろう。

※<<>>内はBUMP OF CHICKEN「アルエ」、aiko「終わらない日々」の歌詞より引用

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