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ナポリタンと聞いて思い出すのはVaundyじゃないかな いつも

静かなる情熱、とろける歌声。無性にソレを聴きたくなる。

無性にソレを食べたくなるときがある。

もっちりとした程良い太さに、酸味と甘みが絶妙に絡み合う。
銀皿にこんもりと盛られた魅惑の朱赤色、そう、喫茶店のナポリタン。
日本発祥の和風なソレは、他のパスタ系とは一線を画す。
ハイカラな見た目、なのに所謂イタリアのパスタみたく澄まし顔じゃない。
むしろ日本固有の心の機微を感じる食感と味わい。だから一口頬張れば、
懐かしさが五感を伝って広がり、老若男女問わずたちまち虜になる。

そんな斬新だけどノスタルジックな“魅惑のナポリタン”に、否、“音楽”に
出合ってしまった。Vaundyの『napori』がソレである。

YouTubeのコメント欄で読んだ誰かの受け売りだが、“(自分の)髪の毛に
ちなんでナポリタンという曲を作ろう”と、Vaundyがインスタライブで
何の気なしに言ったらしい。これきっかけで生まれたのかは知らないが、
最高に“エロくてエモい”ってことだけは、私にもわかる。

初めてこの楽曲を聴いたとき、私が耳にしてきたラブソングのどれとも
違う“快感”があった。と同時に、控えめでほんわりとした青年の眼鏡越しの瞳に、
底知れぬパワーと上質なセンスを感じた。そして、とんでもない才能に出会した
嬉しさと恐さに、心震えた(加齢による動悸ではない)。

この歌の一番の魅力は、同じアルバムに収められた楽曲と毛色が全く違うとこだ。
『napori』が収録された1st. album『strobo』は、今時の20歳らしくジャンルレス。
なら他の曲と比べようがないと言われればそれまでだが、とにかく私にはこの一曲だけが、
彼の実年齢を越えてやけに“色っぽく熟れた”世界観に感じる。
だからなのか、一昔前のR&B好きな50代の私にもしっくりくるのだ。
アンニュイな歌声、トリッキーなリズムが心地好く耳に絡みつくソレは、聴けば聴くほど
アルバムの中で異彩を放つ。

それは、つまり我々日本人が幼い頃から馴染みあるあのナポリタンのよう。
シンプルなのに情熱的。個性ある存在感にもかかわらず、どこか“懐かしさ”や“親しみ”を
抱いてしまうのは、誰もが一度は経験するであろう恋模様をchillな空気を纏わせリアルに
描いていた点にある。しかも聴く者によって、恋の行く末が“明にも暗にも”解釈できる詞の
“引き算”の巧さに舌を巻く。
聞けば彼は大学でデザインを専攻しているそうだが、引き算の美学と言えばアートの
世界では基本中の基本。他の曲のように精密に情景描写しなくとも、この歌はリスナー
それぞれが“余白”を楽しめる。そこがまた中高年にも親しみやすく、私も抵抗なく聴ける
理由だろう。

<縁そっとflight
僕ら互いの指を絡めあってもう
naporiずっといたいよ
ここで見つめあって互いに安堵する
oh right oh right oh right
絡めあっていく
oh right oh right oh right >

クドいようだが、どうしてもナポリタンを連想してしまう<絡めあって>のフレーズ。
歌詞の中に繰り返し登場してはフックになっている。このワードが発せられる度に、
Vaundyの唄い方にエロさが増し、ふたりの距離感に変化が感じられる。例えるなら、
朱赤の山をスプーンに絡め取り口に運ぶ度に、ナポリタンへの好きの気持ちが膨らみ、
食べ終えるのが惜しくなる。まだずっと麺を絡めていたい。ずっとずっと食べ続けて、
身も心も満たされたい・・・そんな感じに近い(わかりづらい)。

<当然こんな夜にはコーヒーがいいだろ
そんな僕の横でハイボールを1口
もう なんて言うんだろ
そう君見てると
酒入ってなくても
酔いが回るんだな>

<君が
大人になって
思い出すのは
ぼくじゃないかな
いずれ >

※<>内はすべて1st. album『strobo』収録『napori』より拝借※

イタリア人のような感情むき出しの押しの強さで“好き”だの“アイラブユー”だの愛を
連呼しなくても、たったこれだけのフレーズで、主人公がどれだけ彼女に惚れてるのかが、
わかる。この部分があってこそ、<指を絡めあって>の繰り返しがじわじわ効いてくるわけで。
ふんわり想いをほのめかす“古風な愛情表現“と、ひたひたと高まっていく熱量の加減に、
奥ゆかしさを感じる。言葉数も音数も抑えたお蔭で、耳が音や詞に集中できる。
ラブソングだからって、具沢山パスタみたいにごちゃごちゃゴージャスに飾り立てずとも、
『napori』を一度耳にすれば聴き手の想像力は刺激され、さらにもう一度・・・
と求めずにはいられない。

時間にすればあっという間。他の収録曲に比べ歌詞もシンプルだが、曲自体も短め。
夢中になった頃に、あっさりと終わるところがまた、もっと食べていたいのに・・・と
名残を惜しんでしまうナポリタンと似てる。ナポリタンに、こじつけすぎ!と突っ込まれ
ようが何だろうが、私にはこの歌がそんな風に聞こえる。

そんなわけで、昨日も今日も明日も・・・このところ無性にソレを聴きたくなる。
Vaundyの声、エロいなぁ!とかうっとりしながら、何度も何度も『napori』を
“おかわり”してしまう。

******

【おまけの話】
この前『napori』ほかアルバム曲を部屋に流して聴いていたら。傍でうたた寝してた
ダンナが「歌うまいなぁ、この人!」と突然叫んで、むくっと目覚めた。
寝る子も黙る・・・もとい、寝た子も喋りだすその“とろける歌声”で、喫茶店のナポリタン
好きな50代のおっさんをも唸らせる。Vaundy、畏るべし。

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