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日本中の”天才”たちへ

Creepy Nuts 「かつて天才だった俺たちへ」を聴いて

憧れは憧れのまま、無理なものは無理。
無意識にそう処理していくのが普通だ。

私は決して選ばれし者ではないし、ましてや天才だなんて言えるはずもない凡人だから。
 

だが私だって、
“頭が悪いとか 思わなけりゃ
 きっとフェルマーの定理すら解けた”
かもしれない。

“力が弱いとか鈍臭いとか 知らなきゃ 俺が地球を守ってた”
かもしれない。

もし自分を”天才”だと信じて疑わずにいられたら、どんな人生だったか。あるいはこの先どうなるのか。
こういう風に考えたのは初めてだ。
 

そんな曲
Creepy Nuts 「かつて天才だった俺たちへ」
を聴いて、
これからも続いていく人生の選択を、もう少しだけ自分の可能性に委ねてみようと思えた。
 
 
 

Creepy NutsはHIPHOPユニットで、老若男女問わず多くのファンがいる。
UMB という日本最大級のMCバトルを3連覇したラッパーのR-指定と、DMC World DJ Championships というDJの世界大会で優勝したDJ松永の二人組だ。
どう見ても輝かしい功績。
音楽的センス抜群の、自分なんかとはかけ離れたいわゆる”天才”っぽい感じがしてくる。

けれど、彼らの「かつて天才だった俺たちへ」が、何故か凡人のわたしに、こんな文章を吐き出したくなる程に響く。
 

凡人は凡人なりに、様々な楽しみや悲しみ、充実感や喪失感がある。そんな私の日々に寄り添ってくれるのが、彼らのラジオだ。

端的に言うと、Creepy Nutsのラジオは抜群に面白い。けれど面白いだけではない。
それぞれがMCバトルとDJでタイトルを獲った王者であるにもかかわらず、その喋りから見てとれる価値観はものすごく世間と対等であり、なんなら劣等感すら伺える場面もしばしばある。
けどそこがいい。

楽曲に対しても、不満や自虐を落とし込んでいるようなものが今までにいくつかあった。私はなんとなくそれが”HIPHOPっぽい”と思っていた。
リアルを吐き出していくことがカッコ良かったし、それがジャンルとしての強みだと思った。
 

けれど、だんだんと覆されているように感じる。
これまでネガティブに発してきたものが徐々に意味を持ち、言葉も音も全てポジティブな方に向かっていると思うのだ。

たとえば「助演男優賞」では一貫して、主役の枠ではないけれどいつかはその座を奪いたい、ということが綴られている。

“ロックフェスでのクリーピーナッツ
 時として主役を喰っちまう”

まさにこれだ。
今年8月末に大阪・泉大津フェニックスで行われたRUSH BALL
2日間名だたるバンドが出演した大型のロックフェスだ。本来ならば年間通して物凄い本数のライブをしているバンドや、アリーナクラスの大きな会場でライブをしているバンド。いわゆるゴリゴリのロックバンドたちが大勢いた。
だがこのイベントを締めくくったのは他でもなくCreepy Nutsだった。

ロックフェスでのCreepy Nutsは、異色と王道を併せ持ったような雰囲気だ。多数のロックバンドの中でラップ・DJをする異色感に誘われステージの方に行くと、歌っぽく聴こえる曲や、ひたすらラップする曲などセットリストも様々。HIP HOPでは王道的なものがそこでは違ったり、だがすごく新鮮でカッコよくて嵌ってしまったり、ここまでくるとジャンルの壁なんかないんじゃないかと思う。

フェスに行ったことのある人なら分かると思うが、大トリを飾ったアーティストの姿はものすごく印象に残る。
脳内に思い出のフォルダがあるとしたら、サムネイルのような役割かもしれない。パッと思い出すのがトリを飾ったアーティストだ。

“いつか主役の座が奪いたい”
と曲にした彼らだが、その会場にいた観客にとってはCreepy Nutsは紛れもなく主役だったはず。

過去に彼らが表現したことが現実として起こり、さらにはHIP HOPというジャンルをより一層懐の深いものしてくれたと思う。そして曲に込めていた悔しさや劣等感は、今では大器晩成を示す証拠になった。
 
 
 

「かつて天才だった俺たちへ」の中にある、
“悩めるだけ悩め”
“時が来たらかませ”
というフレーズが響くのはいまの彼らだからこそだと思う。
これまで彼らが溜め込んできた数々の恨みや辛みが、巡り巡ってこれほど前向きな切り口に変形し、日本中の”天才”たちの背中を押してくれる。

ありふれた凡人の私にも可能性をくれた、最強の一曲。時が来るまで自分のやりたいことをやれるだけやってみようという気になれたし、天才だと信じてみようとも思った。
 
 

散々褒めちぎるようなものを書いたが、死ぬまでラップもDJも上手くなり続けたいという彼らにとってはまだまだ発展途上なのだと思う。
生きている限り鍛錬が続き、これからも紆余曲折がある。どんなに突き詰めようとも、必ず余地があるはずだ。だがそれでいい。
いつまでも、たりないふたりでいて欲しいのだ。

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