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2017年10月2日

マナミ (19歳)
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正解なんていらない

歌ウサギとスピッツと私

〈こんな気持ちを抱えたまんまでも何故か僕たちは ウサギみたいに弾んでー〉
語りかけるように、でも何処か独り言のように始まるこのメロディー。私の大好きなスピッツの大好きな曲、“歌ウサギ”。昨日も聴いたこのメロディーを、言葉を、やっぱり今日も再生させる。間違いなく明日もだ。一番最初にこの曲を聴いた時にふと思った。〈こんな気持ち〉ってどんな気持ちだろう?

スピッツのボーカルであり、ほとんどの楽曲の作詞作曲を担当している草野マサムネ氏は、色々な解釈をしてほしいから歌詞についての解説はしたくないと公言している。だから、正解は分からない。けれど、私は何となく〈こんな気持ち〉が理解できるような気がする。それは、私が19年間それなりに頑張って生きてきたから分かると思える気持ちなのかもしれないし、それだけでは足りなくて、妄想の中から引っ張り出してきた気持ちなのかもしれない。どちらにせよ、私は〈こんな気持ち〉としか言い表せない気持ちになったことがある。そして、誰もがそうではないだろうか。聴き手を限定しない。選ばない。これはスピッツの大きな魅力である。

しかし、スピッツの音楽において「共感」という言葉だけを使うのは、違うと私は思っている。スピッツの歌は「僕と君」(もしくは俺とお前)だけの歌であり、〈誰も触れない 二人だけの国〉(“ロビンソン”)だからだ。そして、全国にどんなにたくさんのファンがいようとも、曲が続く約5分の間は私だけの歌なのだ。そう思ってしまうくらい、スピッツの音楽は心の僅かな隙間まで満たしてくれる。優しさを与えてくれるではなく、心の奥に潜んでいる小さな反逆者を慰めてくれたりもする。私は、私が生まれるよりも前に父がこのヒット曲目当てで買ったアルバムを聴いて、スピッツを好きになった。子供ながらに衝撃を受けたのだ。19歳になった私は、地図を広げて探してみても、こんな国が何処にもないことを知っている。けれど、もっと子供だった頃は知らなかったはずのこんな気分になることはあるし、この曲が流れる4分21秒の間にはそんな場所が存在するのだと本気で思ってみたりもする。

〈「何かを探して何処かへ行こう」とか そんなどうでもいい歌ではなく 君の耳たぶに触れた感動だけを歌い続ける〉
〈敬意とか勇気とか生きる意味とか 叫べるほど偉くもなく さっき君がくれた言葉を食べて歌い続ける〉
これは“歌ウサギ”の歌詞の一部だ。私は、他の誰かから見てどうだとか、世の中がどんな風に動いているかだとか、そんなことがまるで関係ないスピッツの世界が大好きだ。僕と君だけの世界で、僕の目の前にだけ広がっている少しの光を見るのが好きなのだ。〈さっき君がくれた言葉〉だって、その言葉が何なのかは分からない。もしかしたら名言みたいなものではなく、ごくごく普通の言葉だったのかもしれない。それでも、僕にとっては大事な言葉なのだからそれでいい。それがいい。

だから、これから先も正解なんていらない。正しい答えなんかより、大切にしたいものがあるから。そして、ずっとずっとこれからも、私の人生にはスピッツがいてほしい。スピッツが結成されて30年目に生まれた“歌ウサギ”を聴いて、強くそう思った。

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