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3人の魔法使いと2月25日

「Perfume 8th Tour 2020“P Cubed”in Dome」によせて

2020年2月25日、東京ドームで行われた「Perfume 8th Tour 2020“P Cubed”in Dome」が私の訪れた最後のライブになった。

新型コロナウイルスの影響で音楽ライブに限らず多くのイベントが中止・延期となったが、当時はまだ政府からイベント自粛要請が出ておらず、主催者や来場者の判断に委ねられていた。
Perfume側は、前日の24日の時点で、25日と最終公演である26日のライブ開催はするが、来場をしない場合には払い戻しを行うことを発信していた。

私は当日まで悩んでいたが、友人や同僚が「行きなよ、行った方がいいよ」と背中を押してくれ、同行者も「行きたい」ということだったので、葛藤の中、水道橋駅へと赴いた。
東京ドームの中で、私たちの座席はいわゆる天井席で、左右前後をはじめ多くの空席が目立った。
10年に渡って応援してきたが、今まで参加した彼女たちのライブでは初めてのことだった。
「本当に来てよかったのだろうか」という不安と、周囲に人がいないことに対する安堵が同時に胸に広がった。

そして、その憂慮は一曲目の「GAME」で見事なまでに砕かれる。
そうだ、私はまたここに来たかったんだ。

ふんわりとしたMCをしていても、曲がかかれば表現者の目に変わるあ〜ちゃん。
周囲の色が違って見えるほど、オリエンタルな魅力に満ちた空気を醸すかしゆか。
キレのある正確なダンスと、エモーショナルな表情で観客の感情を鷲掴むのっち。

そんな3人と素晴らしいスタッフたちによって作り出される、幻想的と言っていいほどに幾何学な、生身の人間とデジタルが融合した空間。
そこで繰り出されるパフォーマンスが1秒の誤差もなく感じられるライブを、私はずっと待ち焦がれていた。

さらに、12曲目の「edge」によって、この状況の中ライブを決行するに至った理由を私は確信する。
なるほど、これは今、この場所でしかできないことだ。

9月2日に発売された「Perfume 8th Tour 2020“P Cubed”in Dome (Video Album)」の一部がApple Musicでも公開されており、その演出が確認できるが、この感覚はおそらく映像では伝わらないだろうと思う。もしかしたらアリーナ席でも伝わらなかったかもしれない。
会場全体を正面から俯瞰した時に、そうか、これを見せたかったんだと納得した。

その後も、「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」では号泣し、「MY COLOR」では会場全体で一つになり、多幸感に包まれながらその日の公演は幕を閉じた。

翌26日、政府のイベント自粛要請が発表され、その日予定されていた千秋楽は中止、奇しくも私が訪れた公演がツアー最終日となった。

あの時、違う日程が当選していたら、知人や同行者に後押しされなければ、何よりPerfumeとスタッフが開催を決断していなければ、観ることのできなかったライブ。
それを実施したことに対する善悪はいまだにわからないが、年に何度も足を運んでいたライブ現場に行けない私を、ずっと支えてくれたのは間違いなく2月25日の“P Cubed”だった。

TAARは「Music Never Save Us」(音楽は僕たちを救わない)を作り、大森靖子は「音楽は魔法ではない」(「音楽を捨てよ、そして音楽へ」より)と歌ったが、今ならそれが本当かもしれないと思える。
私を真に救うのはライブだ。長い人生の中ではほんの一瞬の魔法のひとときだ。

そのたった一夜の輝きが、今でも私を救っている。
きっとまたライブに行ける日まで、解けることのない魔法の中で。

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