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赤塚とブライアン・ウィルソン。両者が築き上げた「創造とハーモニー」

海をまたぎジャンルの枠を越えた二人の天才の共通点

外山滋比古氏がお亡くなりになられた。
と言ってももう数日前。メディア報道のスピード感とそれによる国民の関心の移り変わりは早い。
人物に関心の無い人間にとっては一瞬目の前を通り抜けた風のような報道なのだろう。

とは言っても私がこの人に物凄く思い入れがあると言う訳では無い。
影響を受けたのは有名な「思考の整理学」の中の記述。

「文章を最初から最後まで順番通りに書く必要はない」
このやり方は強烈に今の私の物書きスタイルに活かされている。

例えば「シャーマニズム・スパゲッティ=霊性スパゲッティ(冷製スパゲッティ)」というダジャレが頭に浮かんだ時、どこでこのダジャレを使うか?色んなシチュエーションを考えてこのダジャレが活きる舞台をアレコレ考え、客と主人の会話だったら、そこから又新たな料理を巡るシャレを考えていく。そういう風にワンフレーズ浮かんだら、そのフレーズが活きる設定を考え、小さい断片を繋ぎ合わせて枠組みとして一つの流れを持った作品が出来上がっていく。

歌詞作りも同様でクイーンの「We Will Rock You」のメロディにある日フと「温泉上がりの卓球!」と言う言葉を載せるアイデアが思いつく。
そうするとその「温泉上がりの卓球!!」と言う言葉の可笑しみを出すにはどうすればいいか?ディテールを細かくしてサビ以外のフレーズで説明を補う。後は歌詞の流れに合わせて「インドのおじさん号泣!」「印籠見せても熱中!」と次々と韻を踏んで可笑しくてたまらないフレーズが思いつく。

67年にビーチ・ボーイズのリーダー、ブライアン・ウィルソンがクリエイティビティのピークにあった時期に創造の神に全てを捧げる覚悟で没頭し、結果当時未完に終わった事でその後の人生に深い影を落とした大作レコード「スマイル」で用いた制作手法もこの「断片的なフレーズのコラージュ」だった。共作者のヴァン・ダイク・パークスの影響も濃厚だろう。彼の「ソング・サイクル」やその他諸々の作品を聴けば音楽が起承転結を意識して練り上げられたものではなく、細かいフレーズの断片を繋ぎ合わせて最終的にギリギリのところで整合感を持たせているのが感じ取れる筈である。特に「ソング・サイクル」にその印象が躊躇である。

「スマイル」はあまりにも型破りであったために作者であるブライアン自身がそこに明確な説明を加えて差し出す事が出来ず発表を断念せざるを得なかった作品だ。

実際2012年の編集版を聞いてもあの形で発表しても充分に内容の素晴らしさは理解出来た。
然し67年に置いて時代性のせいだけには出来ないがやはりそこに「明確な意味」を提示する事が必要だったのだ。後、もう少し時代が遅ければ。実際同年に別発売された膨大なセッション音源を聴くと同じ内容のセッション演奏を少しずつ変化を見せながらも延々と繰り返し、終わりの見えないクリエイションループの中を回り続けているような制作の混乱ぶりが伺える。

日本に置いて私の中でクリエイティブな面でのイノベーションの質がブライアン・ウィルソンと被る表現者が漫画界に存在する。

「元祖天才バカボン」赤塚不二夫氏である。

ブライアンが「スマイル」の制作を開始し、挫折し、途中中断したのが66〜67年の間。

同じ頃赤塚氏は「おそ松くん」の連載を終え「バカボン」の連載に重きを置くようになる。
当初はホームコメディの体裁を取っていたバカボンが回を重ねるごとに実験精神とブラックユーモア、はたまた当時ギャグ漫画の世界では珍しく殆ど使われなかったと言われるシュール漫画と形容されるスタイルに至るまで異空間とも言える紙面から飛び出さんばかりに赤塚の有り余る情熱をキャンバスいっぱいにぶつけた前衛アート発表の場になっていた。

赤塚氏がギャグ漫画の世界に持ち込んだのも前後関係の脈絡無視に次々と可笑しなギャグやフレーズが連発する意図的な破壊行為であり、それを受けて70年代の「がきデカ」や赤塚影響下の芸人の代表的な人物タモリなどの芸が登場する。

「意味が分からない」は芸術を「意味として理解し、処理したい。そして腑に落ちることで納得したい」と言う受け手の欲望を簡単には満たさない。

「想像の扉を開けなさい。理解出来ない声に耳を傾けなさい」
と簡単な説明を拒否する。

アンドレ・ブルトンが「意味や道徳にとらわれない奔放な精神運動としてのシュールレアリスム運動」を唱え、同時代のピカソやダリが既存の芸術を破壊したのと同じように、60年代においてブライアン・ウィルソンと赤塚不二夫。この二人が自国で巻いた種は様々なエンターテイメントの世界で花を咲かせていった。

タモリは「私は先生の偉大な作品の一人です」と弔辞の席で赤塚先生を称えた。

私は「貴方の作品の一人です」などと当の本人に言うのはとてもおこがましいので出来ないが、両氏が創造した「自由と言うもの」そして「それを守るための破壊」というテーマと音楽を通し、漫画を通し、築き上げ温め続けた周囲の人間との「ハーモニー」

創造とハーモニー。人生の中で両者を両立させることの大切さ。
どちらか片方が無くなってももう一方が嘘になってしまう。

険しい人生だが、一歩一歩前進していこうと思うのである。

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