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2017年10月4日

坂木なみお (16歳)
35
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

「第2章」が始まる

2・ファーストアルバム「VIRGIN」発売によせて

放課後、制服を着たまま母の車に乗ってショッピングモールへ。そこには地元で唯一タワーレコードのショップが入っているから。

それが3年前と同じシチュエーションだと気づいたのは、車を降りたときだった。

中1の終わり、セーラー服を着た私は、着くなりすぐに車を降りてタワレコまで急いだ。待ちに待ったその日に抱えていたのは、わくわくというよりも、不安に近いものだった。終わりを認めてしまわなければいけないことへの不安。
手に取ったのは、The SALOVERS活動休止前の最後のアルバム、「青春の象徴 恋のすべて」。それが、私が持っているただ1枚のThe SALOVERSのCD。

ラジオで流れるその音楽に撃ち抜かれて、「The SALOVERS」を検索にかけたのは中学生になったばかりのころだった。何曲か聞いて、「これは絶対に好きだ!」とすぐに確信した。
田舎の中学生にはライブなんてとても縁がなくて、私がもらっていたのは、CD1枚買うのにもかなり躊躇するくらいのお小遣い。スマホなんて持たせてもらえなかったから、親のパソコンを使わせてもらって、動画サイトに上がっている動画全部を見た。大好きだと何度も思った。「ファン」だと言える証拠は私のどこにもなくて、でも好きな気持ちがあればそれで今は充分なのだと思っていた。だからいつかCDを買って、いつかライブに…。

だけど、そんな「いつか」は叶わないものになった。

それを知ったのは、テストが終わり久しぶりにラジオを付けた夜。The SALOVERSを知るきっかけにもなったSCHOOL OF LOCK!が始まり、そして聞こえてきた言葉に、耳を疑った。
「The SALOVERSのラストアルバムから、一曲オンエアする」
パーソナリティのとーやま校長の言葉をゆっくりと整理して、やっと状況を飲み込んだ。
ラストアルバム?どういうこと?混乱する頭は追いつかないまま、その曲が始まった。

ただ、その事実を受け入れられないまま、ああ、やっぱりかっこいい、好きだなぁと、そう思った。
その曲が終わり、とーやま校長が「最後のアルバムなのに、まるで何かが始まるような曲だ」そんなことを言っていたのを、今でも覚えている。

次の日、家のパソコンを借り、改めて活動休止の事実を知った。発表からは少し経っていたようで、リアルタイムでそれを知れなかったことへの悔しさがじわじわと胸を締めた。
同時に、気づいてしまった。私は彼らのCDを持っていない。ライブに行ったことがない。私にはまだ、彼らのファンだと言える確かな証拠が何も無かった。
何も無いまま、知らないところで終わってしまう。そのことが、どうしようもなく悲しくて悔しくて、だけど子供な私にはやっぱり何もできなかった。お小遣いを前借りしてCDを買うことくらいしか。

そうして私は「青春の象徴 恋のすべて」を手にした。ジャケットは、遠くの方で歩く4人の後ろ姿。
家に帰ってすぐ部屋に駆け込み、プレイヤーで再生した。たった29分のそのアルバムを、何度繰り返して聞いたかわからない。

それから、たくさんの音楽と出会った。好きなバンドがたくさんできた。ただその度に、The SALOVERSのことを思い出した。
 

高校生になってスマホを持つようになって、Twitterを始めた。そのころ、母からThe SALOVERSのボーカルだった古舘佑太郎さんが朝ドラに出演すると聞いて検索してみると、佑太郎さんのアカウントがあることを知った。ソロ活動をしていたことも知らなかった。
そのとき気になったのが、プロフィール欄にあった「2(ツー)」の文字。そこから、佑太郎さんが新しくバンドを組んでいることを知った。
バンド名「2」の由来は「第2章」。佑太郎さんだけでなくギターの加藤さんもまた、所属していたバンドが無期限活動休止している。
公式サイトにはこのようにある。
 

『これはロック・バンドという素晴らしいダイナミズムを知ってしまった人間たちの業であり、エピソード2に当たる。』
 

新しく始まっていた。あのアルバムを買った日から私の中で終わってしまったあの人は、また動き始めていた。また私は遅れてしまってるじゃないか。そんな歯がゆさがまた胸を締めた。だけどそれ以上に、わくわくする気持ちを抑えられなかった。

それからしばらくして、佑太郎さんが動画サイトのリンクをツイートした。2の楽曲「ケプラー」の初公開だった。
新曲!!
すぐにリンク先に飛んで再生した。高ぶる気持ちは収まることのないまま、あっという間にその動画は終わってしまった。ただ雷に打たれたような、初めてThe SALOVERSを聞いた日と似ている、何かが強く動こうとする感情が押し寄せた。
ーー好きだ。やっぱり好きだ。バンドをやっているこの人が好きだ。
まっすぐに届く歌声、心揺さぶる歌詞。だけど、The SALOVERSとはまた違うもの。
何よりもそれをリアルタイムで知れたことがうれしかった。
今度は、今の私ならば、ちゃんとついていけるだろうか。

そして高1の秋。私が着ているのはセーラー服じゃなくてブレザー。待ちに待ったこの日に抱えているのは、ひたすらに高ぶる気持ち。車を降りてタワレコへと急ぎ、手に取った1枚のCDは、今度は終わりじゃなくて始まりのアルバム。

バンド・2 のファーストアルバム「VIRGIN」。

家に帰るとすぐに部屋に駆け込み、プレイヤーで再生する。
一曲目「ANTHEM SONG」は、こんな歌詞で始まった。

『新たに始まるストーリー 原作はなくて俺らオリジナルで進む 己への復讐劇』

それは、このバンドの幕開けを象徴するような言葉だった。

『ピリオドの先で 鳴らし続けていく』

一度終わった、ピリオドの打たれたThe SALOVERSの物語。そしてその先で、2の物語が始まった。

たった33分でアルバムは終わってしまって、再び再生ボタンを押す。好きだと思う気持ちが何度も何度も胸を打つ。それを何度繰り返したかわからない。
 

発売の3日前、佑太郎さんはこんなことをツイートした。

『一度倒れた人間による、ゾンビのような復活劇、「第2章」です。』

今、私は「第2章」の始まりのそばにいる。そして次こそは、決して見逃すことの無いように。知らないところで終わってしまったりしないように。この人を追いかけていくのだと心に決めた。

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