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重なる、溢れ出す

BUMP OF CHICKENの「Gravity」を受け取って

新しい音楽が届くと、そこからしばらく、その音でいっぱいになる。

BUMP OF CHICKENの新曲「Gravity」が配信された。
映画「思い、思われ、ふり、ふられ」の主題歌に起用された曲だ。映画の予告編と共に、うけとっていたのはかけらだけだった。
配信開始のお知らせが届いて、はやる気持ちでイヤホンを耳に差し込み、MVのリンクを開く。流れ出したのは、とてもとてもやさしい、せつないギターの音。予告編で使われた、映画の主題歌らしい華やかな部分からは、予想のつかないやわらかい音だった。

明かりを落とした部屋で、じっと耳に意識を集める。
情景は違えども、出だしの歌詞で思い出したのは、何より彼らの、BUMP OF CHICKENのライブのことだった。

“僕らは時計を見ないようにしていたけど
そんな風にして時間に気付いてしまうから
かき消すように喋ろうとして
なんだかやっぱり黙ってしまう”

私は、彼らのバンドの歴史からすれば、彼らの音楽にちゃんと出会ってから日が浅い。前回のaurora arkは、当時子供がまだ乳児だったこともあり、最終日の1日だけだったけれど、幸いにも過去何度かライブを拝見している。だから、おおよその流れみたいなものは何となく分かる訳で。
時計を見なくても、魔法みたいな時間の終わりが近づいてくることに、寂しさがじわじわと染み出してくることに、気づいて、気づかないふりをする。それでも終わりの時間はくるから、汗とか声とか涙とか、色んな感情と一緒に出し切った体と、それ以上の幸せを受け取った心で「またね」の挨拶をして、続きの、それぞれの毎日を生きる。

世の中全体がライブというものから遠ざかり、ようやく少しずつ、会場アーティスト観客みんなの工夫と協力のもと、手探りに開催されつつある。
ライブは間違いなく日々の頑張りのご褒美で、チケット落選の日にはそりゃもうのたうちまわるくらい、大事な時間だ。
前述の通り、私は去年のライブを拝見できたのは1日だけだった。そのせいか、今の、次の約束が見えない状態についても、比較的ダメージは小さかった。しょうがない。今自分が出来ることをしっかりやっていたらまたいつかその日は来る。あまり悲観的にならずに、なんとかそう思えている。思えていた。この歌が届くまでは。
悲観的ではないのは変わらない。けれど、自分で思っているよりもずっと、ずーっと、彼らの音楽を真ん中にした時間がいとおしく、恋しいものだと気がついた。

この歌のうまれた経緯については、いつかなにかで語られることもあるかもしれない。それはそれで楽しみにしておくとして、私にとっては、「僕」を自分自身として、いくつかの大事な大事な、宝石のような思い出と重なったのだった。
 

“見つけた言葉いくつ 繋げたって遠ざかる
今一番伝えたい想いが 胸の中 声を上げる
せーので全て飛び越えて 僕らのまま笑って
裸足のメロディー歌うから そして一緒に手を振るんだよ
笑顔のまま またねって”

今、こうして私も、思いつく限りの言葉を形にして繋いでいるけれど、本当に伝えたいことには、どうにも届いていないきがする。
ありがとうとか、大好きとか、いとおしいとか、なんかそんなのに当てはまるとして、とてもとても足りていない。もういっそ、当てはめなくてもいいのかもしれない。

あの日聴いた「またね」の約束を、こっそり大事にもっている。
それが叶うように、また私は、彼らの音楽と一緒に歩いていくのだ。

(引用符内は全て、BUMP OF CHICKEN「Gravity」より)

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