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フジファブリックを最後に観たのは

ライブハウスで浴びる音楽

フジファブリックを最後に生で観たのは、ダイアモンドホールだった。今年、2020年2月22日、まだ寒さ厳しい頃のことだ。ダイアモンドホールは名古屋にある1,000人キャパのライブハウスである。

フジファブリックは2019年の秋、15周年の集大成である大阪城ホールでのライブを終えた。そして、今年に入り「I FAB U」というライブハウスツアーを行っていたのである。このツアーは15周年にファンから受けた「”恩”に対し、”恩返し”の想いを込めた」というものだった。アリーナの距離で観た彼らを、ライブハウスという空間で聴ける。セットリストもド直球フジファブリックという趣だった。まさに、今までのフジファブリックとこれからのフジファブリックを詰め込んだ愛溢れた内容だったなと思う。

しかしI FAB Uツアーは、新型コロナウイルスの影響により、北海道から大分まで十数公演を残し中止となってしまう。
その直前が名古屋だった。だから、I FAB Uツアーは、実質2月22日の名古屋公演がファイナルになってしまったと言える。

ライブへ行けない不透明な今だからこそ、あの日のことを書き残しておきたくなった。この状況になる前の、ライブハウスで音楽を聴いた記憶について綴ろうと思う。

2月の終わり頃はまだ、ちらほらとしか感染者が出ていなかった記憶がある。どこか海の向こうの、対岸の火事のような出来事で、まさかこんな状況になるなんて、あの当時は思いもしなかった。だから、フジのツアーは東京で終幕を迎えると思っていたし、6月にある対バンイベントの相手は誰かなあなんて、のんきにワクワク考えていた。

ダイアモンドホールは、ビルの5階にある会場だ。オールスタンディングで、チケットはソールドアウトしていたと思う。
会場は5階にあるため、整理番号の整列は階段で行われる。ビルによくある非常階段をイメージして貰えればいいと思う。幅は2人すれ違うのに支障ないくらいだ。

開場の10分前に着いたら、上階は人混みでぎゅうぎゅう、人の通れる余地はなかった。今じゃ考えられない状況だなと思う。壁に貼ってある目安の番号を見れば、自分たちの整理番号はもっと先だった。
焦った。せっかく早い番号なのにと歯噛みする。
開場時間になると人が中へ入っていったため空間ができ、すっと入場口まで行くことができた。そのおかげで、下手側の2列目という、ごく至近距離からステージを観られる位置を確保したのだった。
フジは押し合いへし合いが起こるときもあれば、起こらないときもある。今回は後者だった。名古屋最高だ。ステージからめちゃめちゃ近い位置で快適に聴けるというのは、得難い幸福のひとつである。

ライブはどこで聴いても良いものだけど、前のほうで聴くのはなかなかに格別だ。ただでさえ、ライブハウスは感情の伝播スピードが早く、空間内での共有がスムーズな印象がある。
全身に降り注ぐ音楽、演者の小さな動作、音楽の始まる瞬間、息を合わせる目線、マイクが拾わない音、至近距離からくる情報量の多さに夢中になる。

フジファブリックのライブは本当に楽しい。そもそも音楽が良い、楽器がうまい、歌がうまい、MCが笑えて和む、楽しそうに演奏しているのが心に刺さる。
でも、I FAB Uツアーでびっくりしたのは、え? こんな曲あったっけ? ってイントロが5曲くらいあったことだった。今まで何回も聴いたことのあるはずの曲が、ライブでどんどん進化していく。それがこれまた良いメロディで。だからフジファブリックは面白い。

ライブハウスでの歓声や拍手は、ひときわ大きく聞こえる気がする。考えてみれば当たり前のことだけど、拍手も声もアリーナのような会場みたいに拡散されなくて、感情が真っ直ぐに届き合う感覚がある。
観客の反応がタイムラグなくバンドに届き、思わぬ化学変化が起こるのも、ライブハウスの醍醐味だろう。

弾けるような拍手喝采に包まれて、夢みたいにきらきらした夜はあっという間に終わってしまった。

開演時間が早かったため、終演は7時過ぎだったと思う。その後、一緒にライブを観た友人たちと、感想を永遠と語り合う。
ここが良かった、あのアレンジ最高じゃない? セットリストがさ、前のライブでは、あの曲のとき目の前にさ。
話題は尽きることなく溢れた。
私は、ふと思っていたことを呟いた。
「完璧な夜だった、今日。なんかファイナルみたい」
友達は「わかる」と返事を寄越した。ツアーはまだまだ続くし、その後の公演にも行くはずだった。そのはずだった。

まさかこの言葉通りになってしまうなんて思ってもみなかった。呆然と信じられないような気持ちで推移を見守った。ツアーが延期になり中止になった。フェスも対バンイベントもベース加藤さんの生誕祭ライブも全部中止になった。

こんなにライブへ行っていないのいつぶりだろう。ぽっかりあいた空洞をずっと抱える羽目になった。
いつかまた、あの場所で聴ける日が来るのだろうか。
ちょっともう、簡単には想像できなくなってしまった。

そんな日々を過ごすなか、フジファブリックから嬉しいお知らせがあった。会員限定の配信ライブ内で、「I FAB U FAB ME」というライブを、あのツアーの完結編を、KT Zepp Yokohamaで行うという発表だった。キャパシティを50%以下にし、有料生配信もするという。

やっと少しずつ光が差してきた。
だからこれを書こうと思った。

ああ、どうか
目の前で演奏される音楽を
何の気兼ねもなく浴びられる世界ヘ辿り着きますように。

フジファブリックの音楽を聴きながら、その日をずっと待ちわびる。

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