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岡崎体育 【THE FIRST TAKE FES】を観てみたら

魂込めれば ちょっとどころか だいぶカッコ良く見えた。

「150kmの球投げられる余裕(の肩)で、投げるのがボールじゃなくて“おはぎ”」
かつてTV番組でR-指定(Creepy Nuts)氏に音楽家として高く評された岡崎体育。
言い得て妙なその言葉はファンにもすっかり浸透し、同業者にそう思われている彼を、
“誇らしく”思うキャッチフレーズになった。

とは言え、岡崎体育と聞いてもそんなに詳しくない人は、今も“色モノ”的なイメージを
持ってしまうかもしれない。そして本人もそういう扱いをされることを覚悟の上で
不真面目を大真面目に続けてもいた。しかし、彼の“目指す”のはそこじゃない。
このふざけたパフォーマンスのひとつひとつは、岡崎体育の“知名度”を上げるための
手段である。それをきっかけに“真面目曲”へと導き、ミュージシャンとしての認知度に
繋げたい・・・その願いを、彼は折に触れて正直に話している。

天然キャラなのか策士なのか、口パクなのかシンガーなのか、ミュージシャンなのか
役者なのか、そもそも人間なのか肉団子(本人が公言) なのか・・・等など、
岡崎体育の“立ち位置”を今も正しく掴みきれない人はいるとは思う。そういう人達にこそ、
この際“先入観”を捨てて、観てほしい映像がある。
今回の貴重な配信動画は、暇を持て余したり、気分が冴えなかったりする時の
リフレッシュにピッタリな、たった12分39秒2曲だけのライブ演奏。
その限られた時間内に、見事に“岡崎体育”が凝縮されているから。

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某ライブハウスのステージ上で、アーティストの“一発撮り”を鮮明に切り取るYouTube
コンテンツ【THE FIRST TAKE FES】。
無観客、演出もセットもなし。特別なルールもなし。あるのはただ、アーティストと
真っ白い空間(ステージ)だけ。レコーディングとも違うし、TVの音楽番組とも違う。
新型コロナウイルスと共存する時代の、“新しいFES”の形になり得るのかもしれない。
そんな興味深い試みの今年第1回の2ステージ目に、岡崎体育が登場。
直接その場に観に行けないもどかしさはあるものの、9月5日午後8時からのこの配信を、
どれだけ待ち望んでいたか。

多国籍音楽集団ALIがトップバッターを担当し、国内外で人気の高い
OKAMOTO’Sがラストを飾るという玄人志向の顔ぶれに挟まれ、“サンドイッチの具”
のような“おいしい”ポジションだ。ジャンルも見た目もまるで違う伊達男達に囲まれ、
岡崎体育は一体、どんな“作戦”で挑んでくるのか興味津々で待つ。

そして遂に“その時”が来た。

“BASIN TECHNO”の文字を胸に刻み新しいジャージー姿の彼が、ファミマにでも
買い物に行くような普段着の足取りで“本番”へと向かう。ステージには1本のスタンド
マイクと相棒パソコンのDTM画面。水の入ったボトルの角度を何度も気にしながら
静かに喉を潤し、ヘッドホンを丁寧に装着して間もなく1曲目の新曲『YES』(初披露)
のイントロが流れ、一気にステージの空気が引き締まる。
アップテンポのEDMに合わせ心地好く体を揺らし、リズムをとる岡崎体育。好い感じに
始まったので“真っ向勝負”するかと思いきや・・・
この男、やってくれた!! 
サラリとフェイントをかけるイニエスタ並みの軽やかさで、“唄う”と見せかけて“唄わない”
という華麗な技?を、曲中何回もやってのける。

結局、唄った(と言うより、叫んだ)のは6回目のフェイントが終わってから。
それも気を抜くと見逃してしまいそうな、ほんの“ひと吠え”という鮮やかさ。
岡崎体育のライブが“タダでは済まない”ってのを、一瞬でも忘れてた私が悪い。
そりゃ岡体体育なんだから、“何かするんだろう”とは期待もしちゃうけど、まさか
“一発撮り”の1曲目でこんな“剛速球(おはぎ)”を“世界”に向けて投げてくるとは! 
突然のことで危うく見落としそうになった。

けれども、そのパフォーマンスが実はもの凄く計算された“難易度の高い技”である
ことは、素人の私が一度観ただけでも解る完璧な出来映えだった。
1966年ロンドンの画廊でオノ・ヨーコは天井に小さな文字で“YES” と書いた作品
『Ceiling Painting』を発表した。これを観たジョン・レノンが「その言葉がNOであったら
失望したが、YESとあったので救われた」と述べたエピソードがある。
岡崎体育の『YES』を視聴した時に私は、ジョンの気持ちが解った気がした。
それくらい大袈裟に言いたいくらい芸術性の高い一発勝負の新曲。

R-指定氏が褒める岡崎体育の“音楽家としての凄さ”は、こういう“ふざけた”ように
見える楽曲の中でさえ、しっかり感じる取れる。
流れの速い音の変化を細かい芝居をしながらも、彼はきっちりキャッチしていた。
その上で、カメラに振り向くタイミングを寸分の狂いなく合わせてくる。観る側が
“コメディアンぶり”に気を取られ大笑いしてる隙に、彼は耳で“巧みな仕事”してた。
ワンチャンスをものにして決めるとこは決めるのだから、やっぱこの人、タダの“肉団子”
じゃない。これまで彼をずっと観てきて、その能力の高さに気づいていたつもりだけど、
この日の『YES』で私は、岡崎体育が他のアーティストからも認められた“正真正銘の
ミュージシャン”であると確信。
そして彼のいつもの“おふざけ”に笑わされながらも、彼のプロフェッショナルな面を
我家のリビングに居ながら“至近距離”で観れたことに感激していた。

こちらの“笑撃”と“興奮”の覚めやらぬまま、にこやかにMCスタートと・・・と思いきや
曲名言った途端、ギタリストに押し切られ「自分のタイミングで始められなかった」と
苦笑いしながら2曲目突入の『エクレア』。
去年のさいたまスーパーアリーナ初ワンマンで初披露して、今年2月の大阪初アリーナ
ワンマンでは“ポテト探検隊”名義のバンド形式で唄われた名曲を、アコースティック
ギターとハーモニカ(本人担当)の音色と共に新たなアレンジで聴かせてくれた。
さっきまでの奇想天外な発想とは真逆のアンプラグドな空気と、実直で温もりのある
歌声が溶け合って、半身浴してるみたいに心地好い。彼自身とてもリラックスしている
ように見えたが、唄いだして<ちょっぴり>歌詞を間違えてしまったのは、一発撮り
ならではのご愛敬。
 

<今でも誰かに憧れてる 敷布団の上真似してる
想像上のステージと 想像上のオーディエンス
やれるとこまでやろう>

<いい曲はいい人と共に いい曲はいい人と共に
いい曲といい歌はいい人といい場所で
いい曲はいい人と共に>
 

MCで彼は「友達、家族、応援してくれている人、頭に色んな人を想像しながら
唄ってみました」と語った。この歌を唄うシチュエーションがピッタリとハマりすぎて、
画面の前で胸熱&涙目になった人は私だけじゃないだろう。しかもこの『エクレア』は、
一度目二度目そして今回の三度目と“魂を込めて”歌を披露する度に“成長”を
遂げているように聞こえた。それくらい心に染みるパフォーマンスだった。
なのに、【THE FIRST TAKE FES】のコメント欄では、感動コメントに混じって、
「手に握られてるのがハーモニカじゃなくて実は“エクレア”」と一斉にイジられている。
私は私で、二つのクリームパン(=手)にすっぽり隠れるハーモニカを、必死で探そうと
してるし。
感動させて笑わせてファンに突っ込まれて愛されて。
やはり岡崎体育というアーティストは代えがきかない存在なのだと、この夜、たった
2曲で再認識した。

******

【THE FIRST TAKE FES vol.1】は公開されて24時間足らずで62万回再生を
突破したらしい。そんな中で、ひとつのムーブメントを起こしているYouTube動画
がある。海外のMGJDT氏が“トーク・アカザキ”(=彼の発音による。だいぶ惜しい!)
こと岡崎体育のライブ動画を観ながら感想を述べているのだが。
彼の素直すぎるリアクションが、なかなか面白い。『YES』では、子供のように愉快に
声を上げ何度も何度も大笑い。気持ちいいくらいウケまくって笑うので、観ている
こっちも幸せな笑みにつられて笑顔になる。こういう所作だけのシンプルなギャグは
万国共通なんだなぁ。MGJDT氏のあのリアクションを観ただけで、肉団子が軽々と
国境を飛び越えた姿が見えた気がした。

日本語の歌詞が解らないと思うのに『エクレア』にも、MGJDT氏は真剣な眼差しで
リズムを取りながら聴き入っていた。そして今回初視聴の岡崎体育について、
「海外でも通用する」と真顔で評価した。そして誰かがポケモンの歌を唄ってる人だと
教えると、「娘とサン&ムーンを観ていたけど、彼だとは知らなかった!」と驚いていた。
彼以外にも【THE FIRST TAKE FES vol.1】には海外からのコメントが多数寄せられて
いて、私の貧弱な語学力で読む限り、誰ひとり岡崎体育をコメディアンと勘違いした
人はいない。総じて“ミュージシャン”としてきちんと見てくれているのが、ファンとして
かなり嬉しい。

たとえ歌詞が“YES”の一声だけでも、『エクレア』が日本語詞で字幕もなしに唄われても
<魂を込めれば 魂を込めれば ちょっとくらいはカッコ良く見える>のだということ。
それを<いい場所で>世界に向けて岡崎体育自身が一発撮りで実証してみせた。
これまで幾つものライブやフェスで他目当てで来た観客を惹きつけ、念願のさいたま
スーパーアリーナ史上初の単独公演で1万8000人を前にしても、ケロッと大成功
させちゃうくらいだもの。
『THE FIRST TAKE FES』こそ、“本番に強い男”岡崎体育の醍醐味と言える。

(※<>内はすべて『エクレア』/1st.Al.『BASIN TECHNO』収録より引用)

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