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2017年10月11日

結 (16歳)
245
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彼らがロックバンドだ

UNISON SQUARE GARDENとあの日の記憶

2017年9月23日。
緊張と興奮と期待を同時に抱えていて、胸が痛いほどだった。張り裂けそうな胸に当てた右手は震えてしまっていた。今日は地元福井の音楽イベント、ビートフェニックスの日。正真正銘当日なのだ。満席の会場を見渡して、手元のリーフレットに目を落とす。タイムテーブルが書かれたそこには、UNISON SQUARE GARDENの名前があった。彼らのライブを観るのは、今回が初めてだ。

この日、総勢7組のバンドのうちUNISON SQUARE GARDENは5番手だった。客席の照明が落とされ、入場SEとして流れ出したイズミカワソラの「絵の具」。ステージを彩る青の光と相まって、五感の全てが研ぎ澄まされていくような感覚に陥る。ライブDVDで観たことのある映像。ステージを歩く影が見え、拍手が起こって、3人がギターを、ベースを、ドラムスティックを手にしている。画面の中だったはずの景色が眼前に広がっている事実に、脳が焦げ付きそうだった。持ち時間は35分、スタートの合図は「アトラクションがはじまる」によって鳴らされた。カラフルなメロディ、しかし歌詞から垣間見えるのは彼ら自身が曲げまいとしてきた強い思いと揺るがない軸である。

<もちろん共犯関係とはいえ きっと絆なんか無い/期待なんかしないでよ>
<世界が終わったって来世で存分にかき回そう/気が向いたらおいでよ>

彼らは私たちに強要しない。全てにおいてである。ライブに来て楽しむのも良し、音楽から離れるのも良し、「自分だけのやり方で」人生を好きにやれよと言うのだ。それと同じく、ファンとの間の距離も決して縮めようとしない。田淵の言葉を借りるとするなら「ちょうどいい温度感」であろうとする。そこにあるのは自分たちの音楽とライブパフォーマンスへの自信なのだろう。

「何を期待してもらっても我々は応えない、ただただ自由にロックバンドをやっているだけである。(中略)うまく飲み込んでくれたら、いつもの様にふらっと会場まで来てくれたらと思う。ライブは楽しい。」

田淵は以前ブログでこんなふうに語ってみせた。ここまで抱いてきた信念と自信をリズミカルでキラキラした音に乗せてサラリと歌ってしまうのだから、なんて罪深いことをしてくれるんだと言いたくなる。そして、彼らが魅せる「アトラクション」と言う名のパフォーマンスから、目を逸らすことなんてできやしない。そう思ったのだ。

次に演奏されたのは「10% roll, 10% romance」だった。楽曲のリズミカルな部分と煌びやかさが増し、流れ出す言葉の数々がオーディエンスを幸福の渦へ誘い込む。
私たちの昂揚感に対して、お返しだと言わんばかりに提示されたのは「天国と地獄」。複数のバンドが出演するイベントである以上、UNISON SQUARE GARDENを知らないオーディエンスもいたことだろう。そういう人たちのことも思いきり巻き込んで、楽しいと感じさせてしまうようなパワーを持った曲、それが「天国と地獄」だ。攻撃的なサウンドでガツンと殴られたような衝撃。オーディエンスの心に確かな痕を残した1曲だった。

「天国と地獄」が終わると、一瞬の静寂が訪れる。それまでの勢いはそこで途切れたかのように思われたのだが、それは次の瞬間に全く違う解釈へと変わる。「マジョリティ・リポート」が始まったのだ。曲間の静寂は決して収束なんかではなくて、次へのエネルギーが凝縮したものだったのだ。うねるような色気のあるベースに、囁きも遊びもする自由奔放なギター、そしてスマートなドラム。してやられた、と思った。予想を飛び越えて、思いもしなかったところをまんまと突いてくる選曲に唸るばかりである。橙と紫のライトが彩り、なんだか彼らのワンマンライブを観に来たような、そんな気持ちになった。

その先に待っていたのは「マスターボリューム」である。UNISON SQUARE GARDENが絶妙すぎるほどのバランス感覚で併せ持つロックとポップの側面の、ロックの部分を最大限に引き出したこの曲。

<でも最新の物差しは僕には関係ない>

ロックバンドが楽しいから、ロックバンドをやる。彼らがライブをし続ける根底にあるものを一番良く、正確に表している言葉なのではないだろうか。自分たちのやりたいことをこなす。求められるものより、求めたいものを。そのスタンスを保っているバンドは、私が見てきた中では少ないと思う。きっと彼らのようなバンドは少数派になってしまった。それでも変わらないのは、自分たちの思い描くロックバンドであり続けたいという思いのもとに彼らが音楽を鳴らしているからなのだ。気付いたら流れていた涙をぬぐって、私は拳を上げた。

強さを増していくロックに負けじと爆発するポップを感じた「桜のあと (all quartets lead to the?)」では、楽曲とその歌詞が放つ生命力に感動せざるを得なかった。

<何回も何千回も お望み通り鳴らすよ>
<愛が世界救うだなんて僕は信じてないけどね>

音楽は私たちの生活必需品ではない。どうしようもなく欲しいときも、少し離れたいときもあるものだろう。音楽が聴きたいと思ったときに鳴っているのがUNISON SQUARE GARDENだったら良い。私がそう言えば、彼らは「自分たちはずっと鳴らしているから、好き勝手に聴くといい」とでも返してくれそうだ。これからもUNISON SQUARE GARDENを聴いて、たまにで充分だから、今日のようにライブに足を運んで、毎日を生きたいと思った。生きる理由は人それぞれだが、自分たちはこうなのだ、という渾身の意思表示だと私が解釈した曲「シュガーソングとビターステップ」。体感では一瞬の35分間、最後の曲はこれだった。

<鳴らし続けることだけが/僕たちを僕たちたらしめる証明になる>
<生きてく理由をそこに映し出せ>

世界中を、驚かせ続けよう。そう鳴らす3人は1番輝いていたし、ひたすらに真っ直ぐなサウンドに胸を打たれるばかりだった。自分が抱いてきた「好き」が肯定されていくのをひしひしと感じた。
まっとうなロックバンドであること。
その姿勢と確固たる自信のもとに鳴らされた音楽は限りなくストレートで魅力的だと思い知った。ロックもポップもオーディエンスにぶん投げていく。UNISON SQUARE GARDENを観たあの日、彼らの音楽を信じていたいと思っていた気持ちは信じていくという意思に変わった。自信を持って信じていくのだ。そして、度々ライブに行ったりして、また生きていく。それで良い、それが良い。誰に伝えるでもなく、ただ叫びたくなった。私はUNISON SQUARE GARDENを信じている。愛しているんだと。

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