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ナナイロに染まった日。

ELLEGARDENとの再会と、ナナイロの向こう側。

待ちに待ったその小包が届いたとき、ドキドキしながら封を開けた。

『NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019』の文字。
これを見るにはある程度の心構えが必要だ。
決して流し見は許されない。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりとその音楽に浸れる日が来るまで、数日寝かせることにした。

NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019とはASIAN KUNG-FU GENERATION、
ストレイテナー、ELLEGARDENの3バンドの対バンツアーである。
2004年の開催以降、この3バンドが同じステージに揃うことはなかった。
2008年にELLEGARDENが活動休止を発表し、アジカンとストレイテナーはそれぞれで音楽活動を続けていた。

あれから15年。
2018年にエルレガーデンが活動再開したことで、この伝説のツアーが蘇ることになる。
この奇跡のステージを、日本中のどれだけの人が待ち望んだことだろう。

その小包が届いた数日後の夜、私のコンディションは万全とは言えなかった。
体調というよりメンタルの面でと言った方が正しい。
このところ仕事やプライベートでの心労が重なり、気分は落ち込み気味である。
このディスクを見るときは気合いを入れて、テンションの高まりをMAXにして挑むのだ!と思っていたのに…
などと考えながらも、今日観たいという衝動には勝てなかった。
おもむろに再生ボタンを押す。

画面にそれが映し出されるまでは、いろんな雑念がまだ私の頭の中をぐるぐると巡っていた。
しかし、画面中央に浮かんだ文字を捕らえた瞬間、それは一瞬で吹き飛んだ。

『ELLEGARDEN』

ああ、やっと会える。
10年間の沈黙を破って、彼らがステージに帰ってきた。

「…おかえりなさい。」
無意識につぶやいていた。

15年前の記憶が鮮やかに蘇ってくる。
当時、地方に住んでいた私は車で1時間程かけて会社へ通勤していた。
そのことを周りは「大変だね…」などと気遣ってくれていたが、個人的にそれを苦痛に感じたことはほとんどない。
音楽が大好きな私は、道中でゆっくりとその世界観に浸ることができたし、さらに車内ではそれなりの声量で歌うことだってできる。
毎日一人ライブを開催している気分でハンドルを握っていた。

加えて、当時仕事で落ち込むことも多かった私にとって、ロックを聴く時間は何物にも代えがたいものだった。

それは端的に言ってしまえば、「ひとりじゃない」というのを教えてくれるから。
手を伸ばせば、掴んでくれそうな優しさと力強さを感じていたから。

その当時、特にハマって聴いていたのが『ELLEGARDEN』である。

ロックが好きになったのはアジカンが最初だった。
彼らの1stアルバムに心をぶち抜かれた私は、以降のアルバムやDVDを一通り揃えた。
当時の音楽雑誌やラジオを通して、彼らと仲の良いバンドがいることを知った私は、すぐにその音楽も聴き始めた。そしてすぐに虜になった。

それがストレイテナーとELLEGARDEN。
彼らの音楽に触れたとき、アジカンの存在を忘れてしまうほど、その世界観に吸い込まれるが如く没入してしまった。
そのくらい、どちらのバンドも魅力にあふれていた。

ストレイテナーは、キャッチーで印象的なメロディーと曲の繊細さに心を奪われた。
しかしロックらしい疾走感や激しさも持ち合わせている。
出会った当時は3ピースバンドだったが、そう思わせないほど幅のあるサウンドで、アルバムの『TITLE』は本当に擦り切れるほど聴いた。
 

そして、ELLEGARDEN。
『ELEVEN FIRE CRACKERS』を買って初めて聴いたときには衝撃が走った。
間違えて洋楽バンドのCDを購入してしまったのかと思うほど流暢な英語歌詞。
そして、かき鳴らすサウンドの中にも、胸に残る柔らかな歌声。
激しいビートから、ふっと繊細なメロディーラインへの切り替わり。
力強さもありながら、でもどこか儚げで、私の心の叫びを受け取ってくれているような、そんな感覚もあった。
言うなれば、『剛』と『柔』を変幻自在に操り、こちらの胸に迫って訴えかけてくる。
彼らの織り成すサウンドを体感するたびに、私は魅了された。
 

ELLEGARDENが活動を休止してから、私はしばらく彼らの音楽と距離を置いていた。
曲自体はもちろん好きだったし、ときに力をもらえたりもした。
でも、あの時のような高揚感と興奮、そして共鳴している感覚が、自分の中で薄れてしまっている気がしていた。

なぜか。
彼らの居なくなった穴を、心のどこかで感じていたのだ。
手を伸ばしても、もう掴んでくれないのかと、ちょっとした絶望を感じてしまうのだ。
それは、どうしても埋められなかった。

彼らが10年ぶりに復活すると聞いて、やっぱり嬉しかった。
でも、その音楽たちから離れていたこともあって、理解して実感するまでに少し時間を要した気がする。
「歓喜」というより、切なさと嬉しさとありがとうと、そんないろんな感情がごちゃ混ぜになった。

去年開催されたNANA-IRO ELECTRIC TOURへの参加が叶わなかった私にとって、絶対にDVDは手に入れる!と胸に誓っていた。
そして、ディスクを通してではあるものの、10年越しにようやく彼らとの対面を果たしたのである。
 

会場は横浜アリーナ。
ツアー最終日であるそのステージが映し出される。
 

『Fire Cracker』から始まったエルレガーデンのステージ。
冒頭の一小節を聴き終わる前に、体全体が一気に熱で覆われた。思わず前のめりになる。

会場のオーディエンスが掲げるこぶしからも、そのステージの迫力や熱量が伝わってくる。
そう、私だけじゃない。
みんなが待っていた。この瞬間を。
みんなが溜め込んでいた、そしてそっと胸にしまった思い出とその楽曲たち。
 

特筆するまでもなく、トップバッターを務めた彼らのパフォーマンスは最高だった。
ほとばしる疾走感と、こみ上げる切実さと、あふれだす胸の高鳴りと。
それらを一瞬で蘇らせてくれた。

≪いつだって君の声がこの暗闇を切り裂いてくれてる
 いつかそんな言葉が僕のものになりますように そうなりますように≫
『ジターバグ』
 

≪積み重ねた 思い出とか 音を立てて崩れたって
 僕らはまた 今日を記憶に変えていける≫
『虹』
 

≪こんな星の夜は 全てを投げ出したって 
 どうしても 君に会いたいと思った
 こんな星の夜は 君がいてくれたなら 何を話そうとか≫
『スターフィッシュ』
 
 

歌詞にある『君』や『僕』から読み取れる切実さみたいなもの。
それは、彼ら自身であり、私自身でもある。

紡ぎ出された言葉なら、10年経った今の方がきっと理解できる。
歌詞の中にいる『僕』はもがきながらも、でもどこかで『君』という一筋の光を暗示させる。
それはエルレ自身や、音楽や、仲間や、私たちファンであったりするのだろう。
これまでの歴史があったからこそ、この歌詞にまた新たな命が宿るような感覚さえある。

そう、空白の時間があったから、今この瞬間を、あふれだす感情を、噛みしめながら全身で受け止めることができる。

ステージが終盤に近付くほど、3バンドが集結したこのツアーの奇跡を目の当たりにしている実感と共に、こみ上げてくるものを抑えられなかった。

今まで感じていたどこかぽっかりと空いた穴。
モノクロやセピアとも形容しがたい、色彩をわずかに失った私の思い出。

15年ぶりに集まった彼らのパフォーマンスで、私の歩んできた音楽の道のりがまさしく
『ナナイロ』に変わったようだった。

本当にありがとう。そしておかえりなさい。

と…、ここまでは自分の思い出や再会に対しての喜びを綴ってきたが、本当はもっと深い想いもある。

ひとつ挙げるとすれば、ファンはアーティストの音楽に不変を求めたりするけど、私は変わっていいと思う。
人はみんな進化するべきだ。

周りからのニーズに応えるとか、評価や共感をさらに追及していくのもひとつの方法だと思うけど、これまでとは違う景色を見に行こうとする人たちに、私はロマンさえ感じるよ。

それはときに勇気がいることなのだろうけど、自分の可能性を信じてる姿って、やっぱりカッコイイ。

だから、エルレが活動を休止したことも、きっと必要だったんだと、進化するための通過点だったんだと思ってる。

バンド自体の活動は止まっても、時間が止まったわけじゃない。
それぞれの想いはとどまることなく巡って進化していたはずだし、そこでいろんな出会いや発見があったのだと思う。

エルレの音楽は本当に大好き。
でも、そんな“大好き”を生み出してくれた人たちだからこそ、のびのびと自分たちの音楽への探究を続けてほしいと思う。
そんな生き様こそロックだ。
 

世界の隅っこにいるこんなちっぽけな私でも、密かにそんな大人でありたいと思っている。
それはいつもロッカーたちが教えてくれることで、人生を振り返ると私はそんな彼らの背中を追いかけている。

アジカンやテナーだって、この十数年の間で本当にいろんな進化を遂げてきた。
めちゃくちゃカッコイイ。大好きだ。

だから、この『ナナイロ』が最高だった!という余韻に浸りながらも、3バンドの行く先をしっかりと見届けたい。
これからはナナイロにとどまらず、もっと色彩豊かなグラデーションとして、私たちファンをヒリつかせてくれるのだろうと、ワクワクがとまらない。
 

だから、これまでの思い出も大切にしつつ、
まだ見ぬ知らない景色を、ナナイロの向こう側を、

また一緒に旅させてほしいと思うんだ。

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