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2017年10月11日

メゾン727 (30歳)
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探求者は未来に過去の景色を見た

BUMP OF CHICKENの音楽に内包された時間と五感

「やっぱり、戻ってくるのはここなんだって思った」

タクシーの後部座席、隣の友人が会話の初っ端から本日の、あまりに的確かつ判然たる結論を宣った。
私はというと、運転手のハンドル捌きに胃が持ち上がりそうになるのを飲み込みながら、と同時に激しく同意したい気持ちと高揚感が湧き上がり、それらすべてがない交ぜになった「うん」の一言を発するに留まった。
約1年ぶりのBUMP OF CHICKENのライブ、幕張メッセからの帰り道。
千葉は私と友人の地元でもあるので、お互いの母校だとか昔働いていたショッピングモールだとかが窓枠の中を流れていき、そのたびに当時の思い出話に花が咲く。
ふたりだけのスライドショーを観ているようだった。

彼らの音楽と出会って15年余り。
思春期には音楽が人生のすべてであるとでも言わんばかりに傾倒し、体育の時間には体操着と見せかけて白のツアーTシャツを着て平然とバレーボールをやったり、平日のライブに行くため昼休みに学校を抜け出したりした。
今こうして文字にして読んでいるだけで恥ずかしい。うめき声が出そうだ。
しかしながら10代というのはそういうものだし、自分も御多分に漏れず通過することができた青春の1ページというアレなので全く後悔はしていない。
20代になって、こんどは好きなもの(音楽に限らず)を安易にアピールして知識や経験を語ったりするのが嫌になった。
社会に出て多種多様な人と環境に触れ、自分なんてまだまだ何も知らないのだという『無知の知』に起因するのが半分、残りは単に、隠しておいて時々ちょっと出すキャラだとかっこいいだろうというセルフプロデュース半分。

そんなこんなで30代に突入した私だが現在でもバンプが大好きで、それこそ15年ものの革製品が汚れや穴や傷みごと価値になるように、曲の中に自分だけの足跡と記憶をたくさんしまいこんで大切に持っている。
ところが近年バンプのライブに行くと、ある謎の感情がこみあげてくるようになった。

『置いてけぼり』に似た感覚。

会場を見渡すと7割くらいが年下の子かと思うほど客層が若いことへの驚き。
古参のファン特有の「初期のあの曲は知らない人もいるだろうし、もうやらないのかな」という少しの寂しさとノスタルジックな気持ち。
その昔なにかのインタビューで、ライブは「処刑台に立たされている気分」と藤原くんが表現していた気がするが、最近はそんな死ぬほど鬼気迫る雰囲気は感じられないどころか、お客さんを煽ったり歌声を聴かせてほしいと嬉しそうに言う、そのすべてには素直にレスポンスできない自分。

置いていかれている気がする。
過去の素敵な記憶や若い頃のキラキラした自分に腕を掴まれ、引き込まれそうになっている。
でもバンプは先へ進む。当たり前だ。
なんにでも臆病だからこそたくさん考えて選んで、少しずつ歩いて、ここまで来れた勇敢な人たちなんだ。
その気高さや決意の温度に、ついていけてないんじゃないか?
というか、こんな私はもう彼らの音楽の中にいない方がいいんじゃないか?

だが、悶々とした想いのなか足を運んだ今回のツアーは違った。
ここ数年ほとんどライブで聴いていなかった過去の曲をいくつも織り交ぜた編成で、イントロが演奏されるといつもと違う感嘆の声が会場のそこかしこから上がった。
私と友人も顔を見合わせて喜び、自然と腕を振ったり歌ったりしていた。
やがてMCの時にチャマが「昔の曲を知らない人もいると思うけど、あとでYouTubeで検索してみて!」とおどけて言ったとき、心臓がドキリとした。
普段は、初めてライブに来た人たちも楽しめるようにと選曲しているはずだ。
初期の曲も聴きたいとか若い子ばっかりだとか、ザ・懐古厨と言わんばかりにセンチメンタルになっていた自分の気持ちがばれてしまったようで、恥ずかしいやら嬉しいやらをごまかすように笑ってしまった。

“想像じゃない未来に立って 僕だけの昨日が積み重なっても
その昨日の下の 変わらない景色の中から ここまで繋がっている”(『記念撮影』)

今日という時間は終わっても、消えてなくなるわけではない。
聴こえてくる懐かしいメロディの中に、ことばとことばの空白に、リズムの波の上に、『たくさんの昨日の自分』が確かに存在していて、その日の匂いや音や感情を連れていた。
昨日を繰り返した分厚い『今』はその人だけのもので、ほかの誰にも見せられないもので。
それが抱えきれないほどある私は、もしかしなくてもすごく幸せ者なんじゃないだろうか。
年を重ねるのも悪くない、そう思った一日だった。

次のライブでは何が聴けるんだろう。
未来で、どんな過去の自分と、景色と、出会えるんだろう。
また探しに、見つけに行かないと。
だから、戻ってくるのはここなんだ。

バンプの音楽があるところ、『探求者』と名づけられたこのツアーに寄せて。

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