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この先、何度でも魅了されよう

『Night Diver』 に見る三浦春馬の優しさと凛とした強さ

 三浦春馬がこの世から旅立ち2ヶ月以上が経つ。彼の不在を受け入れるには、まだまだ時間がかかりそうだ。しかし彼の姿は目に見えなくても、生きた証は確かにこの世界に存在する。8月にリリースされたセカンドシングル『Night Diver』もその一つだ。同じひとりの人間が歌っているとは思えないほど、収録されている楽曲はガラリと印象が異なる。

 少年らしさが見え隠れする優しいウィスパーボイスに惹きつけられる表題曲の「Night Diver」。つい歌詞の内容に彼の姿を重ね合わせてしまいそうになるが、ここでは作品と実際の彼自身とは切り離して考えたい。

 作品の中で彼は、現実から目を逸らし、大切なものを失った代償の大きさを悔い、ため息をつき、自問自答を繰り返している。前に進もうと思いながらも立ち止まり、つい後ろを振り返る。

 しかし、もがきながらも、明るい方へと向かって泳いでいるのではないだろうか。出口の見えない闇の中をただ彷徨い続けるのではなく、差し込む一筋の光に向かって、この先苦しくても、葛藤を抱えながらも、もがいて浮上していくんだという力強さや決意を感じる。彼は、深淵に立ちつくし暗闇でもがき続ける者の手を優しくとり、「大丈夫、一緒に頑張っていこうよ」と、引っ張ってくれているように思える。

 ミュージックビデオでは、彼の指の先まで神経の行き届いた美しくキレのあるダンス、全身から迸る躍動感、溢れる透明感に目を見張る。この作品は歌とダンスとが相まって完成型といえるのではないだろうか。

 2曲目の「ONE」では、男くささと色気に溢れる歌声で、狂おしいほどの愛を訴えかけてくる。「Night Diver」がどこか少年ぽさを感じるのに比べ、「ONE」では大人の男の強引さのようなものが前面に押し出されている。

 驚くべきは彼の歌唱力だ。《Cuz I know I’ll be the one》のフレーズが艶っぽいファルセットで繰り返され、彼がそもそもは俳優であるということを忘れてしまう。

 三浦自身が作詞・作曲を手掛けた「You & I」は、どこか懐かしさを感じさせる言葉遣いとメロディ。役者という鎧を脱ぎ捨て、素の彼が優しく語りかけてくれているようだ。男女の往復書簡のような構成で、男性目線、女性目線の双方から人を深く愛することを美しい日本語で綴っている。優しくすべてを受け入れる大きく広い愛……これはもう完全に愛の讃歌だ。

《頬骨の香りに あなたの寝顔に
そっと日々の甘美が滲み出すの
大きな背筋に顔を埋めながら
脈打つ音に目蓋を閉じる》

なぜ彼はこんなにも女性の目線で歌えるのか? なぜ女性の気持ちがわかるのだろうか? 彼の巧みな言葉選びに驚くばかりだ。

 ミュージカルで魅せた伸びやかで力強い歌声を存分に発揮し、見事に愛を歌った作品だ。彼がステージ上でスポットライトを浴びながら高らかに謳い上げる姿をつい想像してしまう。

 彼が役者として「爽やかな好青年」という枠組を突き破り、多種多様な役柄を自分のものとしてきたように、この『Night Diver』でも全く異なる表情を見せつけている。その多才ぶりには、ただただ感嘆するしかない。彼はやはり、俳優や歌手という括りでは収まりきらず、「表現者」という呼び方が似合う。「表現者」三浦春馬に、これから先、何度だって魅了されるだろう。
 

※《 》内は『Night Diver』「ONE」「You & I」よりそれぞれ引用

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