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00年代のクラフトワーク。そして311から現在。

「テクノ・ポップ」は「エレクトリック・カフェ」だった。

このたび、クラフトワークの8枚のオリジナル・アルバム、『アウトバーン』『ラジオ-アクティヴィティ』『ヨーロッパ特急』『人間解体』『コンピューター・ワールド』『テクノ・ポップ』『ザ・ミックス』『ツール・ド・フランス』のヴァイナルが再発される。音がどのくらい良くなっているかはわからないが、仮に手にいれやすい金額だったら、購入を考えるかもしれない。
私がクラフトワークを初めて聴いたのは、まだ『テクノ・ポップ』が『エレクトリック・カフェ』という題名だった時期の、輸入盤(英語版)CDだった。『エレクトリック・カフェ』だったときのクラフトワークには、カールもヴォルフガングもいたのだった。今、その中古レコード店はあるかどうかはわからない。高校時代のことだった。なんだか、奇妙な電子音が、ある種の心地よさを伴って鳴っている風のアルバム。そして札幌のタワレコで『コンピューター・ワールド』『人間解体』『ヨーロッパ特急』のCD(2009年リマスタリング以前のことである)を買って、聴いた。既にパンクやストーンズの沼にいた自分でも、彼らのある種のエレガントさには、魅力を感じた。
2003年のことだった。大学に入ったばかりのころ、『ツール・ド・フランス・サウンドトラックス』のCDが発売になった。そこには、あくまでポップであろうとしながら、シンセでクラシック音楽を奏でようとしているラルフとフローリアンがいた。それと同じくらいの時期に、カール・バルトスが『コミュニケーション』を発表している。
ポップである。カールの作品も、クラフトワークも、ポップだ。クラフトワークのほうのラルフとフローリアンは、不器用そうに聞こえる。それこそ英米のテクノ作品のように、俗や欲にまみれた作品は、つくらない。彼らのプライドを感じるのだ。絶対に英米の、ノイズや雑音にまみれたロック・ポップスにはならない。ひたすらにテクノであろうとしている。
では『アウトバーン』以前の彼らはどうだったか。『クラフトワーク』『クラフトワーク2』『ラルフ&フローリアン』の初期作品群は、純粋にロックだった。これらは、いまだに非公式である。札幌市内でこれらの音源を探そうとしたら、根性と手間と金銭がかかる。この時期の彼らは、手探りだったのだろうか。手探り状態だったとしても、ファンとしてはこの時期の音源も公式として欲しい。2020年9月現在、オリジナルメンバーで生きているのはラルフのみなのだ。ついこの間、フローリアンが死んだばかりだ。ラルフは完璧主義なのか、『アウトバーン』以前を公式としていない。こればかりは残念だ。
2009年だった。ついに8枚のアルバムがリマスタリングされた。音がアップデートされて、『エレクトリック・カフェ』も『テクノ・ポップ』となり、生まれ変わった。その時期にもヴァイナルが再発されて、聴いていた。とくに『ヨーロッパ特急』は素敵だった。「イギー・ポップとデヴィッド・ボウイに会いにいく」という歌詞もそのままだった。2009年当時、デヴィッド・ボウイはまだ『ザ・ネクスト・デイ』で蘇る前だった。音もクリアになっていて、アートワークも一新されていた。レトロなジャケットも、ポップになっていた。これはいかにも彼ららしかった。
『ラジオ-アクティビティ』は作った当時も、放射能賛美でも原発賛美でもなかった(はず)だが、3・11以後、ライブでは「いますぐやめろ」が追加された。俗にいう、「フクシマ」バージョンである。私自身は親原発でも反原発でもないが、やや違和感を覚えたことを書いておく。ラルフ(フローリアンは2012年当時、脱退済みだった)も、別に放射能を美化したくて『ラジオ-アクティヴィティ』をつくったわけではないだろう。
ここらへん、ロック・ポップスは時代によって変わり、アップデートされるものだとは思っていたが、東日本大震災という凄まじいことがおこり、さすがにクラフトワーク、ラルフといえど、自分たちがつくったものを見直さざるをえなかったのだろうと思う。私自身、2018年に北海道胆振東部地震(←北海道の人間以外に「胆振」が読めるだろうか)で停電を経験した。そのときばかりは電力のありがたみを感じた。電気がなければ、ストーブもつけられない。インフラの殆どが動かない。真冬の北海道でこれが起こっていたら、何人凍死者が出ていたかわからない。
やや話がそれたが、クラフトワークですら意図していないことで、自分たちが作ったものが曲解されてしまうことを、3・11以後、私たちは記憶した。テクノのオリジネイターで、バンド名がクラフトヴェルク(発電所)である。ロック・ポップスは、時代によって見られ方が変わってしまう。ビートルズの「ペニー・レイン」ゆかりのリバプールに「差別主義者」という落書きがされたのは、ついこの間である。別にポール・マッカートニーは奴隷商人のことを歌っていたわけではないだろう。これはさすがに極端な例だろうけど、ロック・ポップスに限らず、自分たちの作ったものは、必ずしも正しく理解されるとは限らないのだろう。ということを、ブラック・ライヴズ・マターや311以後、改めて私たちは実感した。

話があちこちに飛んで、まとまりのない文章になって申し訳ない。
00年代からのファンとして思うのは、クラシックを奏でるがごとく音楽をやっているラルフには、『アウトバーン』以前の、未熟だった時期のことも思い出して欲しいのだ。まだクラウス・ディンガーもいたころの初期クラフトワークの演奏は、かっこいい。クラフトワーク以前の前身バンドの音源は、おそらく永遠に非公式だろう。実際、非公式のままフローリアンは死んだ。『テクノ・ポップ』が『エレクトリック・カフェ』だったことも覚えている。今度再発されるヴァイナルも、財布と相談して購入を検討しよう。

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