4024 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

GLIM SPANKYの“東京“は、私のいつか来た道。

あの頃も今も『東京は燃えてる』

九州生まれ九州育ちの私。
親の商売柄、家族旅行などで家を長期空けることができない(加えて
経済的にも余裕がない)環境で。だから、ずっと“外の世界”を知らずに
育った。県外に出た記憶と言えば、修学旅行の数回と大学受験の時
だけだ。関東や海外に親族は何組か居たけど、時々彼等から“見知らぬ
世界”の話を聞いては勝手に想像を膨らませ、「でも自分にはこの先も
関係ない話」と、どこか冷めた(と言うか諦めた)欲のない子供だった。

その狭い考えが変わったのは高校に入ってから。
ボーイフレンドと音楽の話で意気投合。彼がオススメの音楽をダビング
してくれたカセットテープを聴き、彼のバンドの練習を見学して・・・
そんな機会が増え、歌謡曲一色だった音楽との向き合い方が変わっていく。
ラジオのヒットチャートから最新情報を得て、音楽に飢える田舎娘の耳や
心は大きく刺激された。PRINCEやBilly Joel、大江千里に目覚めたのも、
まさにこの頃だ。

音楽に生き甲斐を見出した私は、彼等の音楽の力に導かれるように両親
の期待に背く行動を起こす。大学受験直前の最終三者面談で“進路
変更”を申し出た。
それまでの私は、親の期待を背負い九州の大学へ進み地元で勤め家庭
を持ち、九州で終わる人生プランだった。そんな私がダメモトで“東京”
行きをプレゼン。この時期の進路変更が容易ではないのは百も承知、
それでも“東京”に挑みたかった。

先生にも親にも心配され、東京の叔母(九州生まれ)には猛反対された。
「そんなに東京は甘くない。いくら田舎の高校で良い成績をとっても、
上には上がいる。東京にはもっとスゴい人達が全国から集まっている
んだから」と。

失敗したときのことも考えないまま、急遽変更した大学のひとつに
引っ掛かったお蔭で、私の“花の大東京”(死語)進出は、すべり込みで
叶った。
こうして何ひとつ自信も才能もないのに、ただ“音楽”に数多く触れたくて、
その先にある“音楽に携わる”仕事がしたいという漠然とした“夢”を胸に
大海原へと舵を切る。

“東京”の地を踏んでからの私は、吸収するモノの多さにビビりながらも、
それなりに馴染んでいた。たけど、湖に浮かぶ白鳥のように優雅に
浮かんでるように見えても、水中で足を絶えずバタつかせてなきゃ直ぐに
沈んでしまう。
荒波に飲み込まれないよう必死に背伸びした上で、苦しくも楽しく
暮らせていた・・・ハズ。

******

朝。いつも通り家事をしながらFMラジオを流してたら、GLIM SPANKYの
『東京は燃えてる』が紹介された。
タイトルそのまんまのサビから始まる松尾レミのソウルフルな声にいざな
われ、我家のリビングから燃えてる“東京”に体がワープした。
<東京は燃えてる 僕の心映し出す様に
絶望や希望が渦巻いてる人工砂漠で
何処へでも行けそうな 何にでもなれる街で
今日も探している どうやって旗を立てるのか>
“あの頃”の私が、人工砂漠に立っている。
<どうやって旗を立てるのか>と、まだ何も自分に自信も才能もないのに、
ただ“情熱”だけで挑もうとしていた頃の私・・・懐かしくもいじらしい。
<得意なことだって 上には上がいるよと
言われてるみたいだ 高層のビルが背比べ
人の海に行ったり来たりする波
どうしようと溺れながら悩むのは無駄だ>
あの時代はビルも今ほど密集していないが、高層タワーなど1本も
ない町で育った者には、東京が“巨大迷路”に見えた。そびえ立つオフィス
ビルの群れの下、渦巻く人の波に気圧され、己に負けそうになることが
何度もあった。
自分で決めた道ゆえ、ひたすら自分を信じるしかない。
<心臓が高鳴る景色だけは忘れないでいたい>という想い、それだけを
支えに何年も何十年も“東京”で踏ん張って生きてきた。
<東京は燃えてる 僕の心映し出す様に
絶望や希望が 渦巻いては煙立てている
何度も灰になって 何度も夢を追って
替えのない命燃やしてるんだ>
ギターの亀本寛貴とヴォーカルの松尾レミが長野で生まれ育った平成
という時代に、既に東京で“夢”を追いかけていた私。
今の彼等と同年代の頃の私が<何度も灰になって 何度も夢を追って>
<命燃やし>た東京は、彼等が思い描く東京に負けないくらい様々な
感情の炎で燃えていた。
存在感ある小気味良いギターリフと、共鳴するギターのようにブレない芯
を持った歌声。ジミヘンとジャニスが同時降臨したようなふたりの演奏に
シビれてるうち、すっかり“私の生きた東京”に舞い降りた気分になった。

“あの日”の私の進路変更は、やっぱり間違っていなかった。
“巨大迷路”は想像以上に手強かったし、<得意なことだって 上には
上がいる>と何度も思い知らされ、絶望もした。けれども希望も同じ
くらいあった。その僅かなチャンスを見失わず、<替えのない命燃やして>
“東京”を諦めずに生きてきた。
だからこそ、ちっぽけだけどこの手で<旗を立てる>ことができたんだ。

この歌を聴いて、 “夢に燃えたあの頃の私”を思い出し「自信を持って
進め!」と、今の自分に活を入れられた気がした。

(※<>内はすべて『東京は燃えてる』/5th.アルバム『Walking On Fire』より拝借)

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい