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2017年10月16日

明太 (18歳)
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揺らしておくれよ、その真っ直ぐな言葉で

日本の銀杏好きの集まりに行けなかった銀杏好きから銀杏BOYZへ

 生きていると「何で私だけがこんな目に遭うんだろう…」って思ってしまうことが多々ありますよね。私にとってそんな状況がまさに今日。
何で銀杏BOYZが大好きな私が今日日本武道館に行かないでバイト先に向かっているのか。
 何でってチケットが取れなかったからヤケクソになって今日バイトのシフトを入れたのはお前だろうがとすかさず私が私に突っ込む。
行きたいライブに行けなかった時の無駄にムシャクシャするこの感じ。気が重いしバイトに行く足も重いし、もうどうしようも無いから今日はバイト先のこじんまりとした古着屋で銀杏に対する想いを膨らませ、彼らのライブのごとく荒々しい文章を書いてやるんだからと企んでみる。

 彼らと出会ったのは中学生の時だった。
99年生まれの私が中学生の頃にドンピシャだったバンドと言えば、80年代前半~後半生まれの人達が組んでいるバンドだ。あの頃私が目にしてきたバンドシーンはRADWIMPSやONE OK ROCKが圧倒的な人気を誇っていたし、私はクリープハイプが大好きだったし、とにかく80年代組がバンドシーンの先頭に立って引っ張り出していた頃だった。
 その世代の彼らが影響を受けたバンドとしてよく名前が上げていたのが銀杏BOYZだった。大好きなバンドの生い立ちから音楽ルーツまで探るべく、必死に音楽雑誌を読み漁っていた私にとって、このよく目にするバンド名が気になってしょうがなかった。そうなったらTSUTAYAへ直行。インターネットを開けば無料で音楽が聴けちゃう時代を生き抜ける世代だけれど、あの狭い通路の陳列からお目当てのCDを探すワクワク感くらいは今でも共通。田舎のTSUTAYAにも置いてあった銀杏BOYZのアルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』。ジャケットのグラマラスなお姉さんのイラストと、裏に書いてある曲名の強烈さに「これ大丈夫かな…」と思わず心配になったけれど、ドキドキしながら早速聴いてみる。最初はギターとドラムが妙にうるさくてびっくりした。「な、なんかすげぇ…」と力のない声が漏れるほど、銀杏の音楽は私にとって斬新だった。どこがどうカッコ良くて好きなのか分からなかったし上手く説明できなかったけれど、漠然と「何か良いなコレ」と思った。
 最初はこんなもんだった。じわじわと身体と魂が揺れる感じ。地震で言うと初期微動だな。理科の授業で習った小さく細かく一定に揺れる波の図。あれが私の中で起こっていた。

 それから暫くして、このアルバムのある収録曲を聴いて、私の心が大きく揺らぐのだ。初期微動の後に来る大きな波の名前覚えているだろうか。主要動っていう名前らしい。まさに主要動のごとく振り幅が大きく激しい揺れが私の中で起こるのだ。銀杏BOYZは冗談抜きで大変なことをしてくれた。
 

死にてえ奴は茜色の空をみなよ
おんなじ誰かもおんなじ空を見てる

若者たち/銀杏BOYZ
 

 学校の帰り道にウォークマンからふいに流れたこの一節にドキドキさせられた。死にたいと思ったことはないけれど、満足に生きている心地はしていなかったから。
 あの頃学校ほど退屈な場所は無いと思っていた。早くこの狭い世界から抜け出したかったし、私はこの世界には似合わない抜け出すべき人材なんじゃないかと思ったこともあった。しかし、抜け出す勇気も無く、この狭い世界ですら上手くやっていけないくらい不器用でただ周りから取り残されているだけなのが事実だった。限られた人としか仲良くできないし、その友達ですら私と比べものにならないくらい輝いて見えてたし、こんなにもがき苦しみながら生きてる私は変だろうか、友達と別れて一人になった帰り道でそんなことをよく考えていた。
 そんな時に流れた「若者たち」のあの一節。君とおんなじように生き苦しい誰かが居るよって、僕だってそんな時があるよ、と峯田さんが耳元で言ってくれてるような気がした。あんな力強い声でこんなにも優しい言葉を歌うなんてズルいなと思った。ギターのうるささが気持ち良い。峯田さんが引っ掻き回すのはリッケンバッカーだけではない。聴き手の心の琴線にも簡単に触れてぐしゃぐしゃに掻き回してしまう。あのわずかな心の揺れがどんどん大きくなる。これか、銀杏BOYZがあれほど大きな支持を得ている理由は。
 この頃は大好きなバンドの曲を聴くことすらしんどさを覚える時もあった。憧れのバンドマン達は私が何回曲を聴いても何回ライブに足を運んでも手が届かない存在で、私を置いて毎日楽しそうにしてるクラスメイトと同じだったし、そんな彼らの音楽は別世界の出来事のように思えてしまう。でも、銀杏BOYZだけは明らかに違う。絶対的ロックスターの峯田和伸はちゃんと私の世界の音楽を歌ってくれるのだ。初めての感覚だった、誰かの曲の中に自分を見つけるということは。

僕はストーカーなんかじゃないよ
その辺の奴等と一緒にしないでくれよ
僕は君が本気で好きなだけ
ソフトクリームを一緒に食べたいだけ

SKOOL KILL/銀杏BOYZ

あの娘を愛するためだけに僕は生まれてきたの
あの娘を幸せにするためだけに僕は生まれてきたの

援助交際/銀杏BOYZ

 この”僕”に自分が重なる。同世代が夢中になって聴いていた流行りのラヴソングは共感できなくて好きになれなかった。恋したってどう頑張っても可愛く生きられない私は、銀杏の真っ直ぐ過ぎて気持ち悪い”僕”の気持ちになら共感できた。感情に素直で居て良いんだよっていう事が嬉しかったし、こんな醜い私が銀杏の”僕”になって登場すると滅茶苦茶可愛く思えてきちゃうのが不思議だった。彼らがこの曲を発表した時、まだ恋もロックも知らない子供だった私が何年か経ってこんなにも救われて、たまに夜聴いて泣いて、何かとても凄いことな気がする。それでも、銀杏BOYZはまさしく私の青春だった。

 銀杏BOYZに揺さぶられ青春を過ごした根暗な女子中学生は、気づけば根暗な女子大生になった。そして、今年の8月にSWEET LOVE SHOWER2017にて初めて銀杏BOYZのライブを観ることになった。
 あの日ライブを観て、銀杏に対して抱いていたある印象がゴロっと変わった。どうしても私は銀杏BOYZを”過去の人”という認識しかできなかった。私が銀杏に出会ったときは峯田和伸以外のメンバーが脱退していたし、バンドとして活動している彼らを目の前で観たことがなかったからだ。俳優峯田和伸として映画に出ていたり、今年は朝ドラなんかにも出ていたし、失礼かもしれないが、「文化人としての峯田和伸じゃなくてロックスターの峯田和伸が戻ってきてほしい」なんて事を思っていた。だが、そう思っていたことが恥ずかしくなる程の姿を彼は見せてくれたのだ。
 当日、ステージに立った彼の格好は上裸にサスペンダー姿。それだけで急に胸が高鳴る。あのバンドとしてハチャメチャなライブをしていた頃と変わらない姿。すぐさま演奏が始まり、一発目の曲は「若者たち」。もう泣きそうだった。ステージの上で訳分からないくらい叫び続け、自分のおでこをマイクで殴る峯田さん、夢にまで見たロックスターだった。自分の身体も魂も揺れているのが分かる。揺れ、というよりもはや震えだった。歓喜から来るものなのか、恐怖から来るものなのか分からないが、震えも鳥肌も止まらない。食い縛った歯も気づいたらガタガタ鳴らしてしまう。まだ私を揺らすか、この音楽は。
 傷つきながらも全力で感情をブチ込みながら私達に近づいてくる峯田さんは美しかった。無理をしてでも何かを犠牲にしながらでも何十年も峯田和伸でい続けてくれるなんてどこまでも格好悪くて最高だ。誰が文化人だなんて言った、一生かけて謝れ。
 来年で成人するのに子供みたいに泣きじゃくってステージを観ていたが、ふいに周りを見渡すと私より遥かに大人が私より目を赤くして涙を流していて、”おんなじ誰か”ってこういうことか、とこの日初めて答えに辿り着けた。思い出すだけで息が苦しくなるくらい恥ずかしいあの時もきっと全部間違いじゃなかったんだ。それを証明してくれた銀杏BOYZ。ずっと信じ続けて本当に良かった。
 
 

あの日から冷めない熱。バイト帰り、この季節急に冷える夜は身体を冷ましても胸の奥の方はまだ熱い。イヤホンから流れるのは先月リリースされたシングル「恋は永遠」。峯田さんがあの日去り際に言った言葉が頭によぎる。

「俺はいつだって一番になれっこないよ。どうせ二番の男だよ。でもいいよ。二番でいいからまた銀杏BOYZに会いに来てね。」

どんな手を使ってでも今日は武道館に行くべきだったな。今日は何を歌ったのかな、何を語ったのかな。二番の銀杏BOYZがいつだって私の一番だった。お願いだからまた揺らして欲しい、そしてそのまま壊して欲しい。
 こんなおセンチ真っ最中な夜は「恋は永遠」の最後の「セブンティーンアイス うんめー」という歌詞に泣ける程ときめいちゃうなあ。帰りにアイス買って帰ろう。

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