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また会うために歌い続ける -cinema staffの野音-

-two strike to(2) night 〜万感の日比谷編〜を観て

 

一瞬も見逃せない景色がそこにはあった。

都心の無機質なビルと鮮やかな緑のコントラストが印象的な日比谷野外大音楽堂。多くのアーティストにとって現実と憧れの狭間。「野音」の呼び名として親しまれるその地にはたくさんの歴史が刻まれてきた。

10年以上のキャリアを歩み、幾多の場所でライブをしてきたcinema staffの4人でさえ初めてのワンマンを行うという野音。これまで積み重ねてきた経験、今彼らの持っている最大限の熱量、そしてこれからの決意が、あの時・あの場所には詰め込まれていた。

夕闇に包まれる野音に始まりを告げた”into the green”は喧騒を静寂へと変え、ここから始まる特別な時に誘うかのごとく、彼らの世界観へ一気に引き込んだ。”熱源”までの4曲は、全て音源の1曲目で構成されていて、まさに始まりにふさわしいセットリスト。

「ようこそ日比谷へ」
飯田瑞規(Vo&G)の放ったその言葉で、ハッと現実に引き戻された。ずっと待ち焦がれていたシネマの野音に、自分は今まさに立っているんだという実感を色濃くした。

野音は多くの邦ロックアーティスト、ファンにとって重要な場だ。時には晴れ渡る空の下、喜びを噛みしめる場所となり、時には轟々と降る雨と共に悔しさを滲ませる場所でもあった。長い歴史の中で、様々な表情で来るものを出迎え、たくさんの人の行く末を見届けてきた。
そんな野音がcinema staffのために用意した2017年10月14日は『雨の野音』だった。

降り注ぐ小雨が、まるで彼らの鳴らす音楽を視覚化しているかのように、4人が織りなす幻想的な世界を包んでいた。プロジェクションマッピングで彩られたステージ。会場にいた誰もが、光と、雨と、音楽の共演に心を奪われ、時が経つのを忘れてしまうような、いや、ずっとこの時が続いて欲しいと願わずにはいられない幸せを享受していた。自分の頬を伝う〈何か〉を感じた時、それが降り注ぐ雨なのか、感動からくる涙なのかわからなかった。
”希望の残骸”に差し掛かると、まさにその歌を待っていたかのように『雨上がりの野音』が顔を出しはじめた。はっきりと見えたステージの上に、学生時代からずっと演奏することを夢を見ていたという憧れの地で、胸を張って音楽を奏でる4人の姿があった。
「混ざっていけよ」と飯田瑞規が声をあげると、野音を埋め尽くす観衆の熱気が、日比谷の夜闇へと溶け込み、会場のボルテージが一気に増した。「まだまだ俺たちはやれる」という三島想平(Ba)の言葉を体現するような怒涛のセットリスト。エモーショナルでダイナミックに掻き鳴らす辻友貴(Gt)。久野洋平(Dr)の太くて重い打音が、静寂を躍動へと変えていく。これからの彼らの未来を暗示するかのような大きな流れを感じた。
アンコールの”GATE”。野音に響く4人と観衆との大合唱に胸が熱くなった。メンバー、スタッフ、そして観衆はもちろん、同じ空間に居らずともこれまで彼らと共に歩んできた人々の想いが生んだあの時の大きなグルーヴは、本当にたくさんの人々に支えられ、愛されているバンドであることを証明していた。言葉では到底言い尽くすことのできない様々な想いが胸を交錯し、こみ上げるものを堪えることができなかった。
音を鳴らすだけが音楽じゃない。空白の刹那でさえも感動に変える彼らのライブ。きっとこれからもたくさんの感動を、これまで出会った自分達にも、これから出会う多くの人達にも与えてくれるのだろう。
「僕たちの音は4人だけのものじゃないってわかっているから」
そう言った飯田瑞規の言葉が胸に響き、今も心に残っている。
cinema staffのことが大好きだ。野音で彼らの音楽を聴いて、ますますその想いは強くなった。心にちゃんと届く音楽を鳴らすバンド。心から尊敬してるし、これだけかっこいい同世代がいることは自分にとっても励みになる。
まさにタイトル通りの万感胸にせまるライブだった。大事な舞台で雨が降るのも、あと少し、もう少しだけというところでソールドができないのも、どこかシネマらしい。
つい最近、同じ野音を終の住処として選んだ、とあるバンドのことをふと思い出した。あの時も雨。対照的に、彼らはここをターニングポイントとして、これからも「また出会うために」歌い続けて行くのだろう。
決して順風満帆な旅路とは言えないのかもしれない。旅の途中で出会った人も、別れた人もいて、望み全てが叶う訳じゃなかったのかもしれない。それでも自分自身を肯定する歌を歌うcinema staffを素直にかっこいいと思う。

『ハロー、グッバイ。僕のフューチャー、いま雨が振って固まった』

再び野音に立つときは、夕焼けを背にして歌う彼らが見たいと強く思った。だから、それまで、彼らのこれから続く長い旅路にもずっとついていきたい。ついていこうと決意した。
「「それが何年後、何十年後のことになったとしても、ずっと4人が、4人で同じ道を歩んでいけるように。変わらずにcinema staffの音楽が続いていますように」」
そんな願いを、日本のミュージックシーンに数多くの歴史を刻み、これからも見届けていくであろう聖地に置いてきた。

・・・だっていつか飯田瑞規は言っていたんだ。

「今日しか来れない人の為に、全力で歌うという人もいる。だけど、おれは違う。また出会う為に歌うんだ。」

「また会おう」と言った彼の言葉を信じ、いつかまたこの地にその忘れ物を取りに戻る日が来ることを待ち望んでいる。

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