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2017年10月19日

顔無 (17歳)
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ピンクに少女と大森靖子

MUTEKI

「あたしの有名は 君の孤独のためにだけ光るよ」

暗闇で彷徨していた頃の唯一の光は漠然とした音楽だった。
生きているのだが、死んでいるも同然と言える怠惰な日常に突然殴りかかってきて、覚悟を教えてくれたのが大森靖子。

衝撃でしかなかった。

ストレート過ぎる歌詞とアコギを掻き鳴らす姿は狂気じみていて、当時の私は生き甲斐をぶつけてただひたすらに縋っていた。
ある日、検索画面に[大森靖子]と打つと、関連で批評が溢れていたことがあった。私は好きなものを嫌いにはならない。しかし、それは同時に弱さでもある気がしてそっと画面を閉じた。

朝、6時に目覚める毎日。うろ覚えの昨夜の夢を思い出すところから一日が始まる。
「ドグマ・マグマ」を再生しながら変身のために化粧をする。

「目が覚めたら 私はジャパニーズ 神様なのに化粧をしないと 外にも出れない 不便なからだ 革命途中よ どーしてくれるの」 ほぼ毎回と言っていいだろう。このフレーズで手が止まる。無意識的に、だ。
まだ17歳、されど17歳の私にとって言葉に刺される瞬間だ。私は少女なのか大人なのか、線引きが曖昧でよくわからないなと思いつつ
化けるために顔を塗って自分を隠して外出する。素ではもう何処へも行けないのだと改めて実感した。

赤を白で薄めたピンク色のリップを塗る時にはスマホの中で彼女が「マジックミラー」を爆音で叫ぶ。

「モテたいモテたい女子力ピンクに ゆめゆめかわいいピンク色が どうして一緒じゃないのよ あーあ」
ピンク色は難しい。光や濃淡で見え方、印象、捉え方など全てが極端に変化する色。ピンクに染まれば、少女にも大人にも変幻自在になることが出来そうだ。ただ、「汚されるための青春じゃないわ ピンチは見せられない」
内に秘めたピンク色をいつか、誰か大切な人に見せることがわたしの人生の通過点。

朝食を食べるまで時間がかかる面倒臭い毎朝、私しかいない私だけの特別な時間は牛乳と共に飲み干す。
協調性が主張された制服を纏い
今日も家に帰るために行ってきます。
耳にはまだ彼女の言葉がこびりついたままだ。
「死にたくないだけ」

私の人生は汚点だらけでどうしようもなく自暴自棄になってしまう。
しかし、周りを見渡せば悩みがない人なんていないだろうし不幸自慢に巻き込まれると私の人生なんてノーマルモード。現に、いくつになっても嘘か真実か判別のつかない噂はついて回る。誰も幸せにならない話なのに。

だが 幸せ が日常ならば 不幸 に犯された時、きっと生きてはいけないだろう。普通の幸せくらいがちょうどいい。だって、「ディズニーランドに行ったって 幸せなんてただの非日常」なのだから。

大人に近づくにつれてふと、少女になりたいと思うときがある。
だが、大人にはなっていく。
それに生きるのに忙しく、呼吸すら精一杯でピンク色は薄れていくのだろう。その時に大森靖子を聴くと、今と違った感じ方ができるのだろうか。
その時を楽しみに私は少女から卒業する。
永遠じゃないものは儚いが MUTEKI だ。

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