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2017年10月23日

エキゾチックオタマジャクシ (13歳)
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寂しさの、その先に

星野源の季節がやってきた

嫌なことがあった。
なにも上手くいかず、あいまいなのに膨大な不安に駆られ、どうしようもなく叫びたくなる。
ちょっとした言葉に傷つき 我を失いそうになる。

そんなモノクロな毎日を支えてくれているのは、
他でもなく 星野源の「くせのうた」だ。

7年前に公開されたミュージックビデオ。
これを観るのが日課になっている。
粗い画質とゆったりしたイントロ。
物語が始まろうとしている。

あなたが思う「星野源」という人は、紙吹雪が舞うステージの上で歌い踊り、眩しいスターなのかも知れない。

だけど、今この瞬間、私の目に映ってる彼はあまりにも小さかった。

自信なさげに俯き、照れ笑いを浮かべる姿を見ていたら、心のうちがじんわり温まる音がした。

“ 赤い夕日が 照らすのは ビルと日々の 陰だけさ ”

「心臓に近い」
2年前だったっけ。
初めてくせのうたを聴いた時、そう思った。
この人は、耳では無くて心に歌声を届けている。
私の一番弱い部分がお見通しで、それを守るように覆うものをひとつひとつ剥がす。
誰にも見せたくないはずなのに、痛いはずなのに、心臓が疼きギター軋みに身を任せてしまう。
不思議なことに、それが本当に心地良い。
たぶんそれは、図々しく踏み込んでいないからだと思う。
「オラオラどけどけ!入らせろ!」
なんて、力尽くでも捻りこませてでも何かを届けたい信念があるのでなく、
「辛いんだ うん そうなんだね」
ってなにかを強要していない距離の取り方だからか。
今にでも転がり出そうな「不安」「我慢」で膨れ上がった喉の奥。大きすぎる気持ちでつっかえている息苦しさ。
それをぜんぶ分かってくれているような気がする。
かと言って、励ましの言葉を歌ったり、エールを送ったり、答えを出すわけでもない。
ただ、そこにいてくれるだけだ。
たまに相槌を打ちながら、静かに話を聞いてくれている。
決して話の続きは追及しない。
私の周りを取り巻く大人たちとは違って、いつでも肯定してくれる。
「泣いてもいいんだよ。落ち着いたら、ちょっと歩こうか」
ギターの音色が言う。
私にとっては、ただの「歌」ではなく、「音」ではなく、それ以上の「親友」だ。
 

心のどこかの、一番脆いところ。
ワレモノ注意と書かれた黄色いシールだらけのところ。
絡まる糸を、ゆっくり丁寧に解く。

私がくせのうたに心を許したその瞬間、
星野源の虜になったのかも知れない。
 

“ 寂しいと叫ぶには 僕はあまりにくだらない ”

初めて聴いたとき、我ながら驚くほど自然に涙がでた。
触れたらすぐにヒビが入る心。
メンタルの弱さは自負している。
でも私は、いったいなにをそんなに守りたがっているんだ?
そのすべてがちっぽけすぎる。
プライド 意地 自尊心
ひとつひとつに傷が付く度、
悲しいし、苦しいし、辛いし、
でも「なにが」と訊かれたら答えられない。
もしかしたらそれは「孤独」だったのかも知れない。

大層なものを背負ってないのになぁ、
と可笑しくなる。
くだらないなぁ、なんでだろうなぁ、
と噛みしめる。

私に限らず、不器用で不恰好で、得体の知れないものに踠き苦しむのは人間の本質なんだろうな。
くせのうたは、それを知ろうと、触れようとしている。
唯一私を正面から見つめていてくれる。
建前で生きている私に「肩の力を抜いて 飾らなくていいんだよ」と微笑んでいる。

強さも弱さも、美しさも汚さも、光も陰も、どんな私もぜんぶまるごと受け入れてくれる。

出逢えて良かったな。
 

そうこう思っているうちに、物語は終わりを迎えようとしている。
ゆったりとしたアウトロが流れる。
7年前の彼は、ふざけてコマネチなんかしている。
思わず頰が緩む。
まったく、星野源って人は
ばかだなぁ、くだらないなぁ
舌にしょっぱいものが伝う。
そんな自分にもくすりと笑う。

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