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2017年10月23日

花畔 (25歳)
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こいつら、次になにしてくれるんだ

Fear, and Loathing in Las Vegasという多面体のきらめき

 目に眩しい色とりどりの照明をバックに、電子音、太いギターとベースにキーボード、打ち込みに負けないドラム、オートチューンの声に混ざるスクリーム、もうこれだけでとんでもないボリュームなのに、六人組の大所帯ときた。
 よくわかんねえけどこいつらすげえ!
 次になにが飛び出すかわからないスリルに「一目惚れ」して、バンド名をメモする。
 Fear, and Loathing in Las Vegas――いま思えば、なんと彼らにぴったりな、ド派手で凶暴で力強い名前だろうか。しかし当時の自分は「うわ、長い……」とぼやくだけで、それでも数ヶ月後にはファーストアルバムをちゃんと買っていた。
 それから七年経ってわたしの学生時代はとうに過ぎ去り、同じようにラスベガスも「平均年齢十九歳の新星」などではなくなっている。それでも、あのとき確かに感じた、「よくわかんねえけどこいつらすげえ!」という手放しの感情は、あのときからずっと続いている。何度ライブに行き、音源を聴いて知ったふうになろうが、いつだってラスベガスの次の一手は予想から遥か遠くにある。
 

 振りきれたテンションのライブは、根っからの凶暴さを残しつつもとんでもない方向へと変化していっている。飛んで走ってダイブして、恒例となった振り付けを会場一体でこなし、マイクをくわえて謎のポーズをきめ、ワンマンともあれば服を破って投げ捨て、側転だの肩倒立だのブリッジだのもうやりたい放題だ。
 狭いハコ、屋外、神戸ワールド記念ホール、そんなことはお構いなしに、ラスベガスは全力のパフォーマンスでまばゆいパーティーへとわたしたちを引っ張ってくれる。もみくちゃになりながらシンガロングして、ありったけの力でたけのこダンス(!)をするなんて非日常以外になにがあろうか。

 ともすればキワモノ扱いされそうな演出も、彼らがはじめのころから貫き通してきた、ずっしり重い演奏が背骨となってまるで浮わつかない。躍りながらも聴こえるのは、ぶっとい生音や、腹の下でずんずん響く尖ったスクリーム、高音の気持ちいいクリーンボーカルだ。六人それぞれの音がしっかり円陣を組んで広がっていくのが、爆音の最中ではっきりわかる。
 空間を引っかき回すようなサウンドの『Crossover』は原曲よりずっと乱暴でたくましい音だし、武道館でも披露された『Burn the Disco Floor with Your “2-step”!!』では、インディーズ時代のイントロを引っ提げるなどニクい演出を持ってきながらも、ラスベガスの「今」を感じさせるようなバランスのとれた演奏に仕上がっていた。そして個人的に彼らの一大アンセムだと思い続けている『Let Me Hear』は、曲の持つ広がりが生の演奏に載ることによって、眩しく会場を包み込んでいく。音源だけでは計れない圧倒的な力に呆然としてしまって、しばらく体が動かなくなった日のことをよく覚えている。楽しいだけじゃない、踊れるだけじゃない、バンドとしてのあまりにもタフな一面がはっきりと伝わってくる。

 たった一夜のライブで様々な顔を見せる彼らに、「こいつら、次になにしてくれるんだ!」と思わずにはいられない。未開の地を発見したときのような、感嘆符と疑問符が入り交じった言葉にならない感情に突き動かされて、笑顔が自然とこぼれていく。それこそがラスベガスの持つ最大の魅力だ。
 新曲が発表され、ミュージックビデオが公開となるたび、「なんだこれ!」と驚き、一度再生しただけじゃ吸収できない膨大な情報量にリピートの手が止まらなくなる。かっこいいのかダサいのか、激しいのか明るいのか、アッパーなのかダウナーなのか、初見じゃまず理解が及ばない。
 聴く度に印象がくるくると変わり、そしてライブで体感すればまた別の一面が出てくる……角度によって色を変える鉱石のようなこのバンドに、長い間ずっと「踊らされて」きたような感覚がある。
 そうとも、新譜のリリースを直前にして、舞い上がって文章を書いているわけだが、ライブが始まり照明が一気に落ちるあの瞬間のようなドキドキに突き動かされているだけで、それがラスベガスの持つとんでもない力だ。次に何が待っているのか、どこに舵をとるのか、想像すらできないのが、たまらなく楽しい。そして、六人は常に、楽しい音の鳴る方へと導いてくれるのだけはしっかりとわかっている。
 優しくて、眩しくて、尖ってて美しくてうるさくて、ロックでもポップでもコアでもパンクでもダンスでもエレクトロでもオルタナでもあるとびっきりの音楽に、あえて名前をつけるならそりゃあもうとんでもなく長くなるのだろう、たとえば、Fear, and Loathing in Las Vegasとか。
 

 ……さて、新譜を待ち焦がれている最中、渋谷の街には「なんちゃらラスベガス」とでかでかと書かれたポスターが出現していた。元ネタはラスベガスがゲスト出演したテレビだが、どうにも七年前の自分が、そのバンド名の長さに唖然としていたのを思い出してしまって、懐かしさと妙な誇らしさがふっと込み上げたのだった。

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