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2017年10月25日

北条陸 (42歳)
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過去を置いてきたアイドル

V6 「The ONES」ツアーで彼らがみせたもの

20周年を終えて、彼らは古いものを全部脱ぎ捨てた。

彼らが8月にリリースしたニューアルバム『The ONES』を引っ提げてアニバーサリーコンサート以来二年ぶりにライヴステージに帰ってきた。
チケットの入手はより困難になっていて、全国7箇所で行われたコンサートのチケットを一枚も入手出来なかったファンも多いはずだ。
2年前の彼らのアニバーサリーコンサート(アニバコン)でのステージの質の高さと、何より楽しさと、そして衛星放送の番組でアニバコンが放送されたこともファンの拡大につながったのではないかと思う。
評価されたのならファンとしては嬉しい、ただ、おかげでプラチナチケットとなってしまった訳だが。

V6は毎回新たな試みをしてくれる。
2013年にリリースされた『Oh!My!Goodness!』と同タイトルのツアーではビンゴで選んだ客の一人をステージに上げ、その人と絡み、その人に向かって歌うという、選ばれなかった者にとっては地獄のような演出もしてしまう。
かと思えばアニバコンでは会場であった代々木体育館に入りきれなかったファンのために、せめて『音漏れ』を聴いてもらおうと会場の入り口を開け、その前の広場にファンが並んで座って聴いているという、選ばれなかった者へも幸せを分けてくれる、あの事務所では異例とも言えることまでやってのけた。
今回の『The ONES』もどんなマジックが待っているのか、期待して会場へ向かった。

そもそも今回のアルバムがまた沢山の新たな試みで出来ていた。
言わずもがな、V6のメンバーは今では多忙を極める。
アイドルに興味のない人たちや年配の方々にもその名前が知られる日本アカデミー賞俳優や、毎朝の顔になっているメンバーもいる。もちろん他のメンバーも各々別のフィールドで活躍している。
そんな状況だからこそ、オリジナルアルバムとしては4年振りになる『The ONES』は、作る側の彼らの中にもアーティストとしての意地や底力を見せたいというのがあったのではないだろうか?
メンバーがそれぞれに考えプロデュースした曲、そしてその全てのミュージックビデオを制作するという試み。
音楽だけに時間を割けない彼らが、音楽のことだけを考えて作った作品。
そして20年という区切りを過ぎて一つ上のステージに移った自分たちを表さなければならない決意。

自分たちで曲を作ることのない「アイドル」というカテゴリーの強みは、世界が固定されない色んな曲調のものを歌えるということではないかと私は思う。
その中でも「V6にしか歌えない歌」というのがあって、今の自分たちに合った、そして今の自分たちが作りたいものを彼らは選んでいっている。
6人いるという強みもある。
6人いることでの個性ある歌が既に6つ誕生する。
「かっこいい」という言葉が思わず口から漏れてしまう力強く体に響くダンスナンバー『Answer』、男目線からの切ない別れを描いた『Remember your love』、コミカルな中に彼らの歴史をちりばめた『レッツゴー6匹』など、この3つだけでも全然違う世界を見せてくれる。
アルバムも成長する。
そして名曲は名曲としてちゃんと残る、それはどのアーティストも同じだと思う。

コンサート会場は中央に円形のステージ、そこからメインステージと後方のステージを花道がつないでいる。アイドルのコンサートでは定番の作りと言ってもよい。
青いペンライトが会場を埋め尽くす中、メインステージに6人の姿。
これもV6にとって新しい試みだったファルセットを取り入れたシングル曲『Can’t Get Enough』で幕が上がる。 『The ONES』にも収録されている曲だ。
そして時計のアラームが耳に残る曲『never』で、彼らがダンスと歌を融合させられるグループなのだということを見せつけられる。アイドルグループの中でも彼らのダンスは評価が高い。個々の格好良さを持ちながらも、それが組み合わさった時の相乗効果をちゃんと計算しているように、ステージから客席へ向かう彼らの姿はシルエットですら美しい。

そうして夢中になってステージを見つめているとあっという間に本編は終わってしまった。会場に響くアンコールの声。手拍子。
それを聴きながら唐突に思った。
「ああ、彼らは過去を置いてきたんだな」
もちろん私的な感想であり、あのステージを観た人皆がそう思ったとは思わない。
ただ私には強くそう思えた。
2年振りのコンサートだった。なのにいわゆる「みんなが好きな曲」というのを歌わなかったのだ。
20周年でアンケートをした経緯があるので、ファンが好きな曲というのはだいたいわかっているはずだ。なのに久々のコンサートにも関わらず『Supernova』も『Air』も歌わなかったのだ。
『The ONES』以外の曲だと、コンサートのなかった2年の間にリリースしたシングルのカップリング曲、過去の歌であっても「ファンのみんなと一緒に振りを楽しめる曲」が中心だった。
新しい所に向かおうとしているのはアルバムという円盤だけではなく、彼らが作りあげていくステージでも同じだったのだ。
しかし物足りなさや寂しさではない、充実感だけが全身に残る。
ファンを置いてけぼりにしている訳ではない。ファンが事前に撮った自分たちの写真をステージ上のスクリーンに何百枚と映し出し、それをコラージュしていく演出。それはV6からの感謝の想いであった。
彼らは紛れもなくアーティストで、自分たちの創り出すステージに誇りを持っている。
「アイドル」という彼らの属するカテゴリーが、彼らのリリースするアルバムやシングルに手を伸ばさない人の理由になっていることは多大にあると思うが、それはとても勿体無いことなんだよと、ここで伝えたい。このステージを観ないでいるなんて勿体無いと、ここで叫んで伝わればいいのに。
音楽を聞くのが好きでいくつかのアーティストのライヴに行ったが、V6はその誰にも引けを取らない。

彼らが過去にしていくものは捨て去るのではなく宝物として仕舞われていく。
そして時々取り出して私たちに感動をくれる。
数年経って、このアルバムとライヴが宝箱に仕舞われた時、私はまた彼らが過去を置いてきたことに感動し、その時差し出された新たな宝を手に夢中になっているのだろう。
だからその時までは時々宝箱を開けて、私はそっと耳を澄ます。

ひどい雨の最終日まで完走おめでとうV6。
未来へ向けたステージをありがとう。

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