563 件掲載中 月間賞発表 毎月10日

2017年11月6日

川田誠一 (41歳)
35
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

HEY HEY MY MY

ドミコロック宣言

 快心の傑作の誕生だ。昨年の11月に1stフル・アルバム『soo coo?』をリリースした埼玉県・川越発、さかしたひかる(vo.gt)と長谷川啓太(dr)による2人組ドミコ。待望の2ndフル・アルバム『hey hey,my my?』が届いた。
 
 乾いたタイトなドラミング。ザクザクとしたギターリフ。ディストラクティブだがポップネス。いわゆるドミコらしいM1“マカロニグラタン”でアルバムは幕を開ける。心地よいメロディをちょいと捻ってドミコ色にする、さかしたのソングライティング術は今アルバムでも健在だ。

 彼らはベースレスのツーピースバンドだが、そうとは見なせない広袤のあるサウンドを2人は待っている。そう制限ではなく自由。 時にはしなやかに、時に直線的なサウンドが独特のドミコ語を溶かしてゆく。聴き手に与えるある種の脱力感は、誤解を恐れずに言えば冗長さや、義務的なものを、バッサリと彼らは手放しているからだといえるだろう。

 たとえばM3“ロースト・ビーチ・ベイベー”で囁く、けだるさに満ちたゆるやかなニュアンス。ここにあるものは音の響きに安易に身を委ねたフリーズでもなければ、何かを暴露するちっぽけな宣言なんかじゃない。現状の世界に真正面から向き合う声明そのものだろう。

今アルバムはそれだけではない。M6“バニラクリームベリーサワー”では既視感すら漂うグランジソングを歌う。だがお互いのフレーズが絶妙に交わり合い化学反応を生み出すと、日々進化するドミコの「今日」にしか出せない音になるのだ。それは彼らがサイケデリックなどの多様な音楽性を積極的に取り入れてきたからだといえるだろう。

 全体的にも今作では、よりUSインディー色の強いグランジ系へ意識的にアプローチしているようだ。さかしたの粘り気のある唱法は明らかにカート・コバーンの影響下にあるものだし「静と動」を激しく行き交うM2“こんなのおかしくない?”のノイジーなギターもそれを物語る。

今まで彼らはガレージやシュゲイザーといったワードで語られてきたことが多いと思うが、このアルバムで彼らの本来の音楽志向が露わなったと思う。前作の成功と進化の結果だろう。

さかした自身も「ニール・ヤングのツアーだと思って間違って来ないでください」とうそぶいているが、このアルバムタイトル。ニール・ヤングがジョニー・ロットンの「rock is dead」発言に対して『HEY HEY, MY MY』で痛烈な回答を示した。それを今、ドミコロックが改めて提示したのだ。決してロックは死なない。ロックの可能性を信じて、ドミコはその探求を止めやしないだろう。今作でエモーショナルな感情が爆裂した音像と、まるで子どもの全力疾走のようなポップなメロディでその可能性を僕たちに見せてくれた。 

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい