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2017年2月28日

やまさきさくら (21歳)

未来の自分から現在の自分へ

~KEYTALK「ASTRO」に寄せて~

大学3回生のもうすぐ冬になろうかというころ。大学生活も残りわずかになってきた今、周りの友達は自分の進路に向けて動き始めている。私は幼いころから教師を目指していた。そして、教師になるためには避けて通れない道、教育実習に臨んだ。期間は4週間。準備も万端で、頑張ろうと意気込んでいた。しかし、私は4週間という日程を無事に終えることができなかった。2週目から突然行けなくなってしまった。嫌なことがあるわけでも、担当の先生が特別厳しいわけでもない、原因がわからなかった。頑張ろうという気持ちはあるのに、朝どうしてもからだが動かず、起きることができない。家族に自分の思いを伝えようとすると、涙が止まらず言葉にならなかった。つらかった。友達はしんどいと思いながらもみんな頑張れているのに、頑張れない自分が情けなかった。どうしてこうも逃げることしかできないのか、どうしてこんなに自分は弱いのか、実習に行けなくなってから数週間、自分を責め続けた。実習は来年改めて行くことになったが、来年また同じようなことにならないという保証はどこにもない。こんな自分で来年また実習をやりきることができるのか、また、将来自分は教師としてやっていけるのか、本当に不安だった。もともと、将来やりたいことなどなかった。唯一見つけた夢も、このことがきっかけで自分がこの職に就いてはいけないのではないか、と、自信をなくしてしまった。苦しんでは涙を流し、精神的に不安定な日が続いた。しばらくすると、落ち着いてはきたが、何かきっかけがあると不安になり、自分の弱さを責めた。「ASTRO」を聴いたのはそんなときだった。

KEYTALKの10枚目のシングル「ASTRO」。私はこれを楽しみにしていた。初めて聴いたのはラジオだった。初めての曲を耳にするときはいつでも緊張する。好きなバンドの曲ならなおさらだ。今回もどんな曲なのかわくわくしながらラジオに耳を傾けた。
私はいつもそうなのだが、初めて聴く曲は歌詞がほとんど入ってこない。どうしても音に集中してしまう。「疾走感のあるかっこいい曲だな。」なんて思いながら聴いていた。

《君は強いってわかってるから》

この言葉を聴くまでは。
はっきりと聴こえたこの言葉に私は震えていた。この言葉がずっと残って耳から離れなかった。
いつのまにか、この「君」に自分に重ねていた。自分に向けて言われているような気がしていた。背中を押されたような感覚だった。そして、そんな不思議な感覚の中で、今までずっと信じたかった、どこかにある自分の強さの存在を確かめていた。弱いとばかり思っていたこんな自分にも強さはあるのか、自問自答を繰り返していた。

KEYTALKを好きになったのはちょうど「MONSTER DANCE」がでたあたり。動画サイトでこの曲を知り、芋づる式にKEYTALKの曲を知っていった。ツインボーカルというのは当時の私にとって新鮮で、歌詞よりも音から入る私をあっという間に虜にしていった。
もちろん、音を聴いた後は歌詞を見る。歌詞を見て情景を思い浮かべたりすることもあるが、考えてもわからないときは、細かく考えるのはやめにして、語感や言葉のはまり具合など、ふわっとした感じで楽しんでいた。「ASTRO」を聴いた時は少し驚いた。今までのKEYTALKに比べて、とりわけ義勝の書く歌詞の中ではかなりストレートだと感じたからだ。歌詞カードを見てもそれは同じだった。「現在の自分から過去の自分を鼓舞するメッセージソング」であるこの曲は、自分の心の状態とも相まって言葉がメロディと一緒にからだに一気に流れ込んできた。歌詞の中のひとつひとつの言葉を噛みしめるように何度も何度も聴いた。

《形のないものばかり追い続けて
 姿見えない“不安”ってやつに追い込まれて
 希望なんて見失うこともあるだろう
 未来は見てほら 裏切らないから》

「今の自分だ」と思った。不安にさいなまれ、希望なんて見えない。それでも、未来の自分はそうじゃないよ、と。バンドを結成してからひとつひとつステップを踏み、武道館でのライブを成功させた義勝だからこその説得力があった。
 私は「この曲から元気や勇気をもらった」という経験があまりない。音楽は好きだ。小さいころからいろんな曲を聴いてきた。これまで幾度となくつらいことや苦しいことを経験してきた。このまま消えてしまいたいと思う日も何度もあった。そのたびにいろんな音楽を聴きながら布団の中でこっそり泣いていた。でもそれはただのBGMでしかなくて、音楽に助けられたという感覚は持てなかった。正直、「音楽の力」というものをどこかで疑っていた。そんなものあるのか、と。音楽を聴いたからといって何の解決にもならないし、無力なものだと思っていた。この曲に出会うまでは。「ASTRO」は違った。初めて心の底から「この曲で私は救われたんだ」と思えた。

「ASTRO」を聴くと、強く生きようと思える。歌詞がそうさせているのか、メロディや音がそうさせているのか、はたまた両方なのかはわからない。大げさかもしれないが、生きるエネルギーがわいてくる。
ライブでこの曲を聴いた時は涙が止まらなかった。どのアーティストでも、今まで、ライブを見て涙を流すことなんてほとんどないに等しかった。ライブで心が震えるほど感動することはあっても、涙が流れることはなかった。だがこの曲だけは抑えられないほどこみあげるものがあった。今はまだ弱い自分、不安だらけの自分を未来の自分が「大丈夫」と言ってくれているようだった。未来を信じ進み続けるしかない、そう思った。
きっとそれはKEYTALKも同じなのではないだろうか。義勝は、現在の自分から過去の自分を鼓舞し続けていると思う。不安でも自分を信じ、差し込む光へ、その光すらさえも超えようと進み続ける。

《光呼ぶほうへ進めよDreamer
 誰も追いつけないほど遠くへ
 高く舞い散る衝動
 幾千の誓いを今つらぬけShooter
 明日はこんなに輝くから
 光を越えて 遠くへ》

KEYTALKは強いなと思う。成し遂げたものがあるからかもしれないが、その後もなお進み続けている彼らはとても強い。だからこそ、今の彼らが作ったこの曲が私の心に響いたのだろう。私はまだまだ弱いし、自信も持てない。不安定な日もあるし、未来だって怖い。でも彼らが進み続けると宣言したのだから、私もいつまでも立ち止っているわけにはいかない。私は彼らについていくと決めたから。彼らについていけば自分は変われるとこの曲と出会って確信したから。光を信じ、未来の自分を信じ、今彼らとともに走り出す。いつか、現在の自分を鼓舞できるように。

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