563 件掲載中 月間賞発表 毎月10日

2017年11月15日

B (28歳)
382
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

「エレカシ、いいじゃん」

エレファントカシマシに出会ってからのこと

2017年2月10日。
スッキリでエレファントカシマシを見た。
 
 《 さあ がんばろうぜ!
   オマエは今日もどこかで不器用に
   この日々ときっと戦っていることだろう 》[俺たちの明日]

「エレカシ、いいじゃん」と思った。

3月、ストリーミングサービスでは我慢出来ず、仕事終わりにTSUTAYAに走り、CDを借りた。
音楽をあまり聴かず、CDも滅多に手に取らなかったので、最初は勝手がわからず、ベストアルバムだけを3枚借りてしまった。
その後数日間でもっと曲を聴きたいと思いTSUTAYAをハシゴして、聴けるCDは全て聴いた。
すぐにAll Time Best Album THE FIGHTING MANを予約した。
3月WOWOWのお試しを利用して大阪城ホールのコンサートを見て、
全都道府県ツアーで札幌でコンサートがあることを知りすぐにチケットをとった。
CDを買ったのも、音楽に関するチケットを取ったのも10年以上ぶりだった。

その後、あとどれだけこの人たちを見ることが出来るのか、この人たちが47都道府県走り続けたらどうなるのかどうしてもみたいと思い、
その時点ではツアー最後であった富山のチケットも取った。
正直、その時点で富山がどこにあるかも、どうやって行くかもわからなかった。
音楽のために遠征をしようとするのは、生まれて初めてのことだった。

「エレカシ、いいじゃん」と思ったとき、
魂の温度がわかるようだと感じた。
なんでエレカシ好きなんだろ、と思ったとき、
この人たちの音は信頼出来るからだと感じた。

なぜかいつも心の中に光に向かってマイクを持ち歌う宮本浩次と、
誰もいない青い空間で扉を前に佇んでいる宮本浩次が浮かんでいた。
現実に傍に人がいることでは解決出来ない、なんで生きるのかということ、生きることそのものの孤独と、この人は向き合っていると思った。

暫くして思い返し、私は見て見ぬふりをしていた自分を音楽を通して、
宮本浩次を通して開けて、見ていたのだと気付いた。
生まれて初めて他人の中に自分を見る、
自分の中に他人を見る経験だった。

自分で見ぬふりをしていたものに気づかされ、向き合いたいと思った。
ずっと抱えていた孤独や、己の醜い感情、外面、悲しみ。
私はこれを持っているのだと、抱えているのだと肯定した。

それから信じられないくらい、調子が良くなった。

それまで、社会に出て働けば働くほど、自分は他人と違う、人間のふりをして生きていると思っていた。
毎朝地下鉄にのり、窓に映る自分の虚ろな顔を見ていた。

 《 電車の窓にうつる 俺の顔 幸せでも不幸でもなかった 》[友達がいるのさ]

仕事のデスクにつくと、体がそれごと沈んでしまうのではないかと思うほど重かった。

 《 何をしても どこに行っても 体が重たくて
   ああ 今日もいつもと同じ》[やさしさ]

エレカシに出会った2月、思えば、限界がきていた。

 《 こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい
   神様どうかボクの上に強き光を投げてください 》[こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい]
 

それが、なくなった。
 

それからは、向き合って生きるためにどうしたらいいのか、
何をするのか、考える日が続いた。
毎日毎日、エレファントカシマシを何時間も聴いていた。

5月は初めてのコンサートだった。
ただその時は今後どうしたらいいのかという自分の悩みや迷いを、コンサートで変えてほしいという甘えを持ち込んでしまい、受け止められず、大反省をして終えた。
コンサート後眠らないまま、初めて一人でJRにのって海をみたりした。
帰り小雨が降り落ち込む中、通りがかった路地の廃線路にある桜の花が、風を受け舞い上がっていた。

 《 取り敢えず行くしかなさそうだ 上り下りの道
   ああ 信じて転がるエブリデイ 》
 《 輝く時は今 そして胸をはって生きていこう
   桜の花、舞い上がる道を》[桜の花、舞い上がる道を]

6月、出口が見えない暗い時期だった。
街を歩いても、花にも新緑にも何も感じない頃、風と共にが放送された。
5月、甘えたことをあんなに悔やんだのに、結局私はまた彼らに救われていた。

 《 あなたは笑うでしょう 私の小さな祈りを
   曇りのち晴れ 悲しみの向こう 私は今を生きていきたい》
 《 傷つくことを恐れて 立ち止まったり逡巡したり
   風よ どうか私に 相応しい光に導いてくれ 》[風と共に]

頭の中がすべてが洗い流されていくようだった。
今を生きたい。傷付くことを恐れて、立ち止まって逡巡して。
それでも。それでも。
心に灯台が据えられたようだった。
きっと一生、この曲を心に生きていくと思った。
私の光はエレファントカシマシだ。

何より、自分の心に都合良く受け取ったこととは別に、正しいと思えた。
宮本さんは正しい、やっぱり正しい。
この人がこの曲に至るまでの、全て。全ての選択が正しいと感じた。
そうして肯定したい、生きることへの信じたいという力が、風と共ににはあった。

8月、野音の当選と転職を希望した会社から面接の連絡が同日に届いた。
その日嬉しくて職場のトイレの個室で小躍りしたのを覚えている。

 《 さあ行くぜ明日へ 今日の続きの明日へ 》
 《 新しい扉を開けて いったことのないマチまで行きたいのさ 》[ベイベー明日は俺の夢]

それからすぐ面接に東京に向かった。
一人で旅をするのも、東京に行ったのもそれが初めてだった。
信じられないくらい湿度の高い、暑い日だった。

面接を通過し、二次面接をすることになった。
日程は、野音の翌日にしてもらった。
 

9月、野音。
5月のコンサートのことがあり、受け止められるのか不安があった。
どんなものも受け止めるには己の素養や教養、経験、器がなければならないと知ってから、行けるかもわからぬけれどいつか野音でここまできたと思えるようにしたいと、日々を生きていた。

台風の心配をされていた当日。
前日の雨が嘘のように、二度目の東京はまたしても暑い日だった。
熱中症になりながらも、沢山の人のご厚意でなんとか迎えたコンサートは、
言葉に出来ない、本当に本当に愛しい、大切な瞬間だった。
こんな瞬間を持ったことがないので、何という気持ちかも説明が出来ない。
思い返すだけで涙が出そうで、暖かいような、悲しいような、大切な感覚がする。

美しい反響、静寂、虫の音、ビル、飛行機、星、まれに吹く風、揺れる木々。
東京の街中に、浮かび上がる台形の空間。
あの瞬間、詩的な表現がしたいわけでもなく、
本当に東京の街はエレファントカシマシのものだった。

 《 俺達は 確かに生きている 》[武蔵野]
 

第2部開始後すぐ、友達がいるのさを聴いて涙が止まらなかった。
 《 東京中の電気を消して夜空を見上げてえな 》[友達がいるのさ]
 《 電車の窓にうつる 俺の顔 幸せでも不幸でもなかった 》

毎朝地下鉄に乗っていたあの自分も、
5月でのコンサートでの自分も、結局ここへ連れて来ていた。
そしてここまで来たところで、どこへ行くのか。

 《 歩くのはいいぜ!俺はまた出かけよう 》

歩いていきたい、やっぱりいやだ、歩いていきたい、いやだ、こわい。

 《 出かけよう 明日も あさっても 》
 《 また出かけよう 》

でも行こう。行こう!
 

歌を聴いている時だけ、酷かった体調のすべてが吹き飛んでいた。
翌日、二次面接を行い、北海道へ帰った。

すぐに、就職が決まった。

10月30日、28年生まれ育った北海道を離れた。
11月から全く知らない土地で、これまでと全く違う分野で働いている。
間もなくしてエレファントカシマシの50枚目のシングルがリリースされた。
タイトルはRESTARTと今を歌えだった。

 《 RESTART 素直に生きてみたい どうせ一度の人生なら  》[RESTART]
 《 ああ 今、輝け 今を歌え 今、飛び立て 》[今を歌え]

エレファントカシマシには今年に出会ったばかりだ。
それでも、幾度も気付きと救い、奮い立つ力、愛する心、忘れていた大切なこと、しまい込んでいたこと、沢山の光も、闇をももらった。
今まで生きたどの時よりも、密度の濃い時間だった。
 

おこがましいけれど、あの2月から私はエレファントカシマシと共に生きてきた気がしている。
あらゆるものを抱えて、とてつもなく人間くさく生きている。
エレファントカシマシのある世で生きている。
多分それは、これからもそうだと感じている。

こんな気付きがあったなら、エレファントカシマシのある世だったなら、
今何かあっても良かったんじゃないのかとすら思うほどで、
でももし明日が来るのなら、彼らの音楽を受け止められるように生きたい。
私が受けたこの力を、私が過ごしたこの日々を誰かのためになると信じていたい。

やっと生まれてから初めて、歩き出した気がしている。

エレファントカシマシ。
宮本浩次様。
歌い続けて、戦い、転がり続けて、生きていてくれて、ありがとう。

結局は本当に簡単なことで、大好きという、それだけ。
一人でも多くの人に、彼らの音楽を聴いて、
彼らが幸せに思える瞬間がひとつでも多くあって欲しい。

この世で一番大切なバンド。
この世で一番特別な人。
この世で一番好きな歌。

瞬間瞬間の、今のエレファントカシマシが一番格好よくて、
そうしてあなたたちが選んだ道は正しい。
どうか背負わずに、裾を引かれても気にせず、何だってして裏切ってほしい。

いつだって、なにがあったって、
これからもずっとこの空の下、あなたたちを待っています。

  《 自信を全て失っても 誰かがお前を待ってる oh yeah 》[ファイティングマン]

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい