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2017年11月20日

加奈子 (20歳)
51
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既存の「かわいい」を壊す音

CHAIが変えていく未来

――心を奪われた。

「なんだこれは!?」

声にこそ出さないが、(正確には圧倒されすぎて「声に出せなかった」のだが)
私は心の中で、その音楽に強く引き込まれていた。

初めてその曲を聴いたのはごく最近のことである。
ある時からツイッターを開くたびに、タイムライン上にそのバンドが頻繁に現れるようになった。

名前は「CHAI」。
フォローしているミュージシャンや音楽好きの友達が、
その名前を挙げては「すごい!」と口にしていた。

音楽が好きな人ならきっとわかってくれると思うが、タイムラインの中に何度も現れては
「良い!」と称えられていたバンドを、動画サイトで探し始めるまでにはそれほど時間はかからなかった。

それで、冒頭に戻るわけだ。

「なんだこれは!?」

心で叫び、体は固まっていた。
目はそのMVをみつめたまま、耳はその音楽を聴き続けたままである。

「N.E.O.」と題されたその曲は、私の心と体を完全に奪ってしまった。

私はその動画を観るまで知らなかったのだが、
どうやらCHAIというのはガールズバンドらしい。
MVのイントロ部分を観ながら、それはわかった。

わかったけども!

問題はそのイントロの後から入ってくる「音」だった。

イントロは軽快なドラムが鳴る。
そして次々に映し出されていくメンバーをみて、「あ、ガールズバンドだ」と認識する。
しかし、そこから重くて厚いベースが入ってくるのだ。
そしてリズムが複雑に動き出す。

驚きで固まった私を無視して、音の厚い音楽は進んでいく。

ガールズバンドの出す音じゃない、と思った。
洗練されすぎているのだ。
リズムの動き、ベースの厚く重い音、キーボードの荒く太い音、唸るようなギター、
軽快に正確に刻まれていくハイハット。

音が、本当に厚い。

そしてその男らしいともいえる厚みのある演奏に乗る、高音で女性らしいボーカル。
そのコントラストがその曲をより魅力的にしていた。

正直、私はいままでガールズバンドが得意ではなかった。
そのほとんどが、顔が可愛く、服はおしゃれで、
奏でる音は女性らしさの象徴であるように軽くてポップなものであった。
もちろん探せばそれに当てはまらないバンドもいるのだろうが、
私が知っている範囲ではそういうバンドが多かったように思う。

純粋にかっこいい音楽、良い音楽を聴きたい私にとっては、
可愛い要素はむしろなくてもいいものであったし、
ポップなサウンドも私にはあまり合わなかった。

「N.E.O.」のイントロでガールズバンドだと知ったときも、
安易な考えで恥ずかしい話ではあるが、
「きっと音が軽くて可愛い女の子が恋愛について歌っているのだろう」と
予想してしまった。

それを、良い意味で大きく裏切られたのである。

まず外見だ。
化粧はしているものの、それほどまでに濃くはない。
とても自然にみえるメイクだ。
服だって特別にかわいいわけではなく、彼女たちは街でみかけるような顔をしていて、
容姿が秀でているわけでもなかった。
むしろ普通である。友人に似ている子がいる、くらいの普通さ。

そして歌詞。
恋愛もの、かと思えばまったく違う。
「コンプレックスは、アートなり。」とMVの出だしに書かれているように、
彼女たちは「コンプレックス」や「本当のかわいい」について歌う。

”つまんないなんて変じゃない?
全部同じ顔なんて変じゃない?
キレイキレイしすぎ
個性はどこにある?

つまんないなんて変じゃない?
全部同じ顔なんて変じゃない?
そのままがずっと
誰よりもかわいい”

(歌詞より引用)

そしてMVでもたくさんのコンプレックスが映し出され、
それは本来のあなたが持つ可愛さだと紹介されていく。

彼女たちの外見が、この歌詞をよりリアルにしていた。
彼女たちは本当の「かわいい」を歌っていた。そこに嘘はなかった。

彼女たちのインタビューにこんな言葉がある。

”女って軽い音を出すイメージがあるじゃないですか。
しっかりやらなくても可愛くて評価される感じ。
「いやいや、私たちはそんな音楽じゃねえよ」って思うし、
女だからって舐められたくないの。
しっかりした音を、女が出すっていうのが一番かっこいいと思う。”

(OTOTOYインタビューより引用)

N.E.O.を聴いて、感じたことはまさにこの発言に要約されている。
また、彼女たちは同じインタビュー内でこうも発言している。

(「―どんなミュージシャンになりたい?」と訊かれて)

”うーん、「可愛い」を変えたいかな。
「アジアと言ったらCHAI」みたいな存在になりたい。
世界レベル的にアジア=CHAIになりたい。”

(OTOTOYインタビューより引用)

かわいいを変えたい。
そう発言した彼女たちはこれから「かわいい」の常識を覆していく存在になる。
そしてきっと既存のガールズバンドのイメージも変えていくだろう。

そう思うと、CHAIがこれから生み出していくであろう新しい楽曲に、
また心を奪われたい!と思わずにはいられなくなるのだ。

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