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2017年11月20日

西山ちか (34歳)
829
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愛を振りまき、音を奏でる

Love-tune Live 2017 @Zepp DiverCity

Love-tuneと聞いてピンとくるのはジャニーズファン、中でも一部の層に限られるだろう。彼らはジャニーズ事務所に所属する7人組である。CDデビューはしておらず、事務所の公式サイトでも単独のページを持たない、ジャニーズJr.の一員だ。
そんな彼らが10月、Zepp DiverCityで3日間の単独ライブを行った。

今、東京のジャニーズJr.はかつてないグループ乱立時代を迎えている。活動は先輩グループのバックダンサーにとどまらない。Jr.自身が主役を務める公演がひっきりなしに行われ、彼らの人気と共にチケットの争奪戦も過熱している。
一方で、特定のグループ名を冠した単独ライブは久しく行われてこなかった。しかも、今回の会場はライブハウスだ。初めて足を踏み入れたジャニーズファンも多かったことだろう。

Love-tuneは現在、ジャニーズJr.のグループの中で唯一、バンドの形態をとっているグループである。
かつてのジャニーズJr.にはFiVeやQuestion?といったバンドが存在し、バックバンドから単独公演までをこなしてきた。またジャニーズ事務所全体では、80-90年代まで遡れば男闘呼組、そして近年フェス出演などを通じてロックファンから評価を得たTOKIOや関ジャニ∞のような先達もいる。他にも各グループのコンサートにおける演出のひとつとして、たとえばHey! Say! JUMPが9人の大所帯で演奏を披露したり、舞祭組が初心者ながらにバンドを組み、Kis-My-Ft2のドーム公演で高校の文化祭のごとき盛り上がりを生んだりしたこともある。
しかし、Love-tuneというグループのありかたは、そんな先輩たちのどれとも少しずつ異なっている。
バンドとの向き合いかたはグループによってさまざまだ。例を挙げれば、関ジャニ∞の今年のドームツアーは、前半はバンドセットのみで硬派に攻め、後半は打って変わってムービングステージをはじめとした「アイドルのコンサート」らしい仕掛けを詰め込むという、大胆な二部構成だった。
Love-tuneは、いわばその「二部構成」を1曲の中に設けるスタイルを特徴としている。正直、忙しない。だけど、新しい。「二兎を追う者は二兎とも得る」を合言葉に、彼らは楽器を抱えてステージ狭しと動き回る。いかにもアイドルらしい歌やダンスと、バンドによる楽器演奏の融合。一見すると中途半端なそのスタイルこそが、彼らのアイデンティティなのだ。

Zeppでは初日から、結成1年半とは思えない彼らのライブ巧者ぶりをまざまざと見せつけられた。馴染みの持ち曲でフロアをあたためておいて、思いがけない曲を思いがけない演出で突っ込んでくる。たとえば、バンドスタイルで披露した少年隊の名曲『君だけに』はその最たるもので、メンバーの中では遅れて楽器を手にした諸星の見事なサックスソロから始まる構成も嬉しいサプライズだった。
バンドばかりでもダンスばかりでもない、時にコミカルなパートも挟んだ緩急のあるセットリストは、老獪とすら言えるほど。加えてアドリブで飛び出す煽りや、ポロリとこぼれてしまう素直なコメントまで含めて、ライブを愛しライブに愛されたグループだと感じた。
初の単独公演、ステージ上から見る初めての景色に、感極まったメンバーが語彙を失い、奇妙な沈黙が訪れる場面も度々あった。言葉の代わりに溢れ出す笑顔、そして涙。ありのままの、文字通り「ライブ」な彼らがそこにいた。

昨年、Love-tuneという名を与えられた初期メンバー4人が最初に立ったのは、シアタークリエのステージだった。グループの、そしてジャニーズJr.のMC担当と言ってもよいだろう、最年長メンバーの安井はあの日、まるで沈黙を恐れるように喋り続けていた。しかし今年、7人で迎えたZepp初日の彼は違った。「こんなに言葉が見つからないのは初めて」と幸せそうに笑い、アンコールの頃には「ここ(Zeppのステージ)落ち着く」とまで言ってのけた。昨年のような気負いよりも、純粋な興奮と歓喜のほうが勝って見えた。他のメンバーも同様だ。新たに得た仲間と、その7人で戦ってきた1年半の経験がそうさせたのだろう。ライブハウスというロケーションも一因だったかもしれない。
中日の公演直後に行われたテレビ番組の取材では、追加メンバーの1人である阿部が、前述の「中途半端に見える両立スタイルこそがグループの個性である」旨を、カメラに向かって力強く語っていた。その口ぶりと、彼を見守る他のメンバーの様子からも、もちろんライブにおける各々のふるまいからも、ひとりひとりがそのコンセプトに納得し、自信と覚悟を持って体現していることが窺えた。

ライブ本編の最後に披露されたのは、この3日間のために新しく用意されたオリジナル曲だった。応援してくれるファン、そしてこのライブを実現へ導いてくれた関係者への感謝を込めた「初めてのラブソング」。タイトルも直球の『This is Love Song』という、バンドスタイルのスローバラードとして始まったその曲は、中盤で一気にテンポを上げる。ドラムやキーボードを含む全ての楽器を手放し、全員が横一列に並んで、キラキラのアイドルスマイルで踊ってみせる。――音を奏で、愛を振りまく。これこそがLove-tuneだというメッセージ、7人からのラブソングを、フロアにいた誰もが受け取ったはずだ。

ジャニーズJr.に明日の保証はない。グループを組もうと、そのグループに名が付こうと、解散も脱退もいつだって突然で、公式に報じられることすらない。わたしはずっと、彼らの未来を夢見ることに躊躇していた。ああなりたい、こうなってほしいという願望を、いつ消えるかわからないJr.に託すのが怖かったのだ。
だけど、次の景色が見たいと初めて願ってしまった。Zeppで彼らが見せてくれた景色の輪郭が、思いがけず鮮明だったから。何より、あまりにも美しかったから。
最終日、「次があるかわからない」と安井が神妙に告げたそばから「課題も見つかったよね!」と次に向けた反省会を始めようとする萩谷にメンバーからツッコミが飛んでいたけれど、これが彼らジャニーズJr.の日常なのだろう。目の前の、ほんの少しだけ先の未来に向かって、全力で挑み続ける日々。

名は体を表す。Love-tune――2つの単語をハイフンで繋ぎ、tuneを小文字で始めるグループ名の表記は、「愛」と「旋律」が不可分であることを示している。オリジナル曲の構成に象徴される、彼らのパフォーマンススタイルそのものだ。
そしてもうひとつの解釈を、ZeppのMCで彼らは教えてくれた。いわく、「みんなの『愛』と、俺たちの『音』で『Love-tune』」。
Love-tuneが「ラブソング」を届けた相手、スタッフやわたしたちファンは、彼らの活動に評価を下す審判であると同時に、共に進む伴走者でもある。わたしはファンのひとりとして、この先に待つ新しい景色を、7人と一緒に眺めてみたい。彼らの振りまく愛を受け止め、彼らの奏でる音に愛を返すべく、未来を夢見る勇気を持って、もう少しだけ共に進んでみようと思う。

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