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2017年2月28日

たけお (24歳)

進化、だけれど退化

plenty『life』を聴いて

 plenty『life』を買いました。正直、少しでも良くない部分があったらボロクソに言ってやろうと思ってました。確かにplentyの音楽は好きだし手放しで聴きたい気持ちもありました。だけど、盲目的に聴くのは嫌だなと思っていて。十年近くやっているバンドだけど、全てを「良いよ良いよ」とは言いたくなくて。これはわたしがあまのじゃくなだけなのかもしれませんけど。昔とは違って発売日にもフラゲ日にも買ってないし。十日くらい遅れての購入でした。でも四曲目の『誰も知らない』を聴いた瞬間に、「誰も癒せない/わたしだけが知ってること」のファルセットを聴いた瞬間に、「時々それらしい言葉にしてはみるけど」のファルセットから地声に戻る部分を聴いた瞬間に、「誰もがひとりで」の声を張り上げる部分を聴いた瞬間に、こりゃすごいと思ってしまったわけです。もうお手上げ、降伏とでも言いたい。江沼のファルセットが曲を出すごとに綺麗になっていて感動しました。年々声が高くなってるって本人も雑誌か何かで言ってたもんな。

 『よろこびの吟』の辺りから思っていること。まあ、前から江沼郁弥が孤独じゃなくなった(”ぼく、わたし”の他に”あなた、きみ”っていう存在が曲に頻繁に登場するようになってきた)なっていうのは曲を聴いていて感じていましたが。曲には明確には出てこないけど、なんかもう一人…いる…? はっきり言えば”赤ちゃん”的な。最近のplentyの曲を聴くと、羊水の中にぽちゃんと沈んでいくような感覚(そのときのことなんてもう覚えてないけど)を覚えるんですよね。あったかいような、でも暗くて、このままでいたいような。ああ、こんなこと言ったら江沼に「勝手に思っとけ」とか思われるんだろうな!勝手に思っときますけど!わたしの勝手な解釈です、すみません!
 赤ちゃん返りじゃないけど、進化してるけど退化してるなと。大人の思考はちゃんと持ってるんだけど、身体だけは子供に戻ってる。家族の愛情を感覚で感じてる。言葉で言われる愛情じゃなくて、態度で背中で示されるような愛情。性的なことを歌うバンドはいくらもあるけど、学生時代のことを歌うバンドはいくらもあるけど、plentyみたいな、曲を聴くと羊水の中にいる錯覚を起こすようなバンドはわたしの知る限りいないと思いました。すごい、すごいよ。ぐうの音も出ない。plentyのファン(わたしも仲間に入れてください)はファンであることを誇って良い。こんなバンドもう多分現れないと思うから。

 あと、前までは”孤独”っていう闇が曲全体に滲んでたんですけど、今は”死の恐怖”っていう闇が曲に少し滲んでる。歌詞を見る限り「命は限りがあるから、限りある中で精一杯生きたい」ってことなのかな。江沼郁弥は『high & low』で「失うものなんか/なんにもないのに」って歌ってるけど、きっと失いたくないものはたくさんあるはず。これから守るものも出来るでしょう。どっかで「自分は変わらない、変わってない」と話してたみたいですけど、あなた変わりましたよ。別人みたい。三途の川を泳いできて、生まれ変わったんだな。

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