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2017年11月22日

サブリナ (27歳)
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彼らの声にたどりついた私の心

Sky's The Limitとの出逢い

昨日、私は最寄り駅たまプラーザの改札あたりにいた。
予約したのに1時間も待たされた病院終わりの帰り道だ。
なんだかあまりさえない、停滞期とでも言っていいだろうか、そんな1週間だった。

その日目が覚めると、なぜか急に仕事を変えようと考え始めたのだ。
今の仕事になんの不満もない。とても恵まれている環境だと思う。でも今、このときをもっと生きている感覚がほしいのなら、今しかできないことをやるべきだと思い始めたこと。やりたい時がやり時だと感じはじめたこと。すべてに理由をつけて、3年半付き合った彼との終わりから目をそむけようとしている。そんなところだったのかもしれない。

そんな生ぬるい、混沌とした気持ちと向き合えず、どうも気分がはれない、自分の感情がわからない、歯がゆい気持ちをかかえて歩いていた土曜日の昼下がりだった。

眉毛だけはしっかりかかれた顔とけだるい体で、20分ほど離れた駅前にある病院にいった帰り道だ。100円ショップによって帰ろうと思い、どうにか足をうごかして、体をお店まで運んでいくところだった。
背中のほうから、歌が聞こえてきた。なんだろう、ただ上手い歌だ。週末、よく駅前では駆け出しのアイドルがミニライブを行っていたりする。行ったことはほとんどなかった。
私は立ち止まった。悩んでいる。100均によって家に早く帰りたい気持ちと、この歌をうたっているのはどんな人なのだろうと気になる気持ちで足が動かない。
重い風をきるように振り返り、来た道をたどり、改札をこえて、小さなステージにむかった。

2つのテントがステージの前にあり、20人くらいが、その人たちの歌をきいていた。4人組のグループだ。
申し訳ないが、顔もグループ名も、歌も何もしらない。
Sky’s The Limit というらしい。
ただ小さな人だかりの一部になって5秒後、私の目はうるんでいた。
涙もろいほうであるのはよく知っている。だがこんなに涙もろいとは自分でもびっくりだ。
まったく誰かもわからない、何のことを歌っているかもわからない、そんな人たちの声だけで、私の心はふるえていた。
どうやら、リハーサルだったらしく彼らは一旦いなくなり、またすぐステージにもどってきた。
「なんて楽しそうに歌うのだろう」それが彼らのステージを目の当たりにした第一印象だった。
私は特に<You Don’t Stop!!>
という曲がすきになった。アップテンポなナンバーだ。私はこの手のファンキーで自然とからだが動き出す音楽が大好きだ。
彼らについて知っていることがないのに、こんなに楽しい。
途中で自己紹介があった。全然頭にはいらない。今までお金をだして、行きたくて予定を組んで行ってきたライブでは、自己紹介に気を留めることなんてあまりなかった。だが、今回は必至で一人だけでもいいから後で検索できるようにと頭のなかで名前をくりかえしなぞった。
彼らは30分くらいのライブを終えると2部が2時間半後にあると言いステージを去っていった。私は20分の道を自宅に帰り、化粧をして、コンタクトレンズをつけて、髪をとかし、ラーメンをすすりながら時間がゆるす限り彼らが何者なのかを調べた。そしてまた20分の道を歩き駅にむかった。

さっきよりも見やすい場所を確保した。改めて聞くとなんて皆歌がうまいのだと驚く。一人一人毛色がちがうが、それぞれ違う色に光っている声だ。その中でも山本卓司の声には驚かされた。低音がいい。かすれっぷりがたまらない。スモーキーなAdeleを彷彿させるような声だ。AIや久保田利伸のような洋楽テイストも兼ね備えている。高温もいい。力強い。「でるか、でるのか、そこまでもっていけるのか」とソウルフルな声にやられそうになった。2部では1部で歌った曲もあれば歌っていない曲もあった。
カバー曲もあった。カバー曲はそれぞれわたしも好きな曲ばかりだ。とくに<楽園>。平井堅のなかでも大好きな1曲だ。欲をいえば彼らのつくった音楽が聞きたい、でもそんな本音をのみこむくらい、彼らはカバー曲を彼らのものにしていた。あまいピアノの音が流れ出し、彼らのとけあうハーモニーだけが私の体をつつんだ。

信じがたいことに、私の土曜日の予定はくるいにくるった。
病院に行き、家でご飯をつくり、片づけをして、ゆっくり仕事探しでもしようかと思っていたのだ。
私の土曜日は、流れるままに立ち止まり、なにもわからない音楽をきき涙する、そんなはずではなかった。

ひとつわかったことがある。
常にミュージシャンはいい音楽を世におくりだしてくれていると思う。
いろんなジャンルがあり、好き嫌いも10人10色だ。
私もいろんな音楽をきくし、偏っていないほうだと思う。
そして、時々奇跡はおこる。素晴らしい音楽がこんなに世の中にはあふれているが、自分のコンディションとマッチしたときほどひどく化学反応をおこすことはないということだ。聴く側のアンテナがたっていると、こんなにも簡単に共鳴する。自分の心が音楽をみつける、たどりつくという感覚だ。きっとそこにその音楽はあった。今までも耳にしていたこともあったかもしれない。でも今日ほど深く自分にひびいていただろうか。
それが歌詞からくる化学反応なのか、つくりだされる音なのか、昨日の私でいうと、それは声だった。理由や知識をならべても説明できないようなことだったのだと思う。
私の心は自分の気づかないところで、おそらくいつもより弱っていた。もしかしたえら音楽でなくてもよかった、何かの力をかりて、ふんばっていようとしていた。

そんな私の心と出会うべくして出会ってくれた彼らの声だ。私の目がしらが熱くなるのにそう時間はかからなかった。

ファンであろうとファンでなかろうと、大きなステージだろうと小さなステージだろうと生のライブほど心にひびくものはない。
27歳。ここ3,4年少しライブ離れしてしまっていた。でもたまプラーザで吸い込まれるように辿り着いた彼らの音楽のおかげでわたしはライブのすばらしさを思い出した。決して彼らの才能に見合った大きさのステージではなかっただろう。しかしすごく純粋に音を届けることを楽しんでいた彼ら。気が付いたら私の体は跳ねていた。30分前まで何も知らなかった彼らにむけて、文字通り心も体も踊っていたのだ。落ちそうになっていた心がふんばっていたのが分かった。

今後彼らの歌が、声がもっともっとテレビや街から聞こえてくるのをたのしみにしてやまない。

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