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2017年11月24日

結 (16歳)
238
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常識を捨てろ、才能を信じろ

UNISON SQUARE GARDENが描き出すポップとロックの極致

6thアルバム『Dr.Izzy』のリリースから1年以上が経つ。Ba.田淵智也は、このアルバムでUNISON SQUARE GARDENというバンドのポテンシャルを可視化し、自分たちができることの限界と自分たちが持つこれからの可能性を提示したかったという。そんな『Dr.Izzy』は、彼らにとって良い意味で肩の力が抜けたアルバムであると同時に、ひとつのケジメであったように思うのだ。それだけに、私は一ファンとしてその後のリリースや彼らの動向が気になっていた。
2017年初のリリースは配信限定のシングル『Silent Libre Mirage』だった。その数ヶ月後、3曲入りのシングル『10% roll, 10% romance』をリリース。そして11月8日に『Invisible Sensation』、11月15日には『fake town baby』が私たちの手元に届いた。どちらもまた3曲入りのシングルだ。

ここまで見ると、今年世に出された新曲の数は10曲。アルバムがひとつできてしまいそうなボリュームであることにまず驚く。これほどたくさんの曲をシングルでリリースしたことに、それぞれのリードトラックが何かしらのタイアップを背負っていたという理由があることは明白だった。今年世に出た新曲たちを聴いていると、彼らが意図したもうひとつの狙いなのか結果の産物なのかは分からないが、彼らが絶妙なバランスとコントラストで併せ持つポップとロックの側面がより研ぎ澄まされているような印象を受けた。しかし、楽曲のテイストが二極化しているわけでは決してない。彼らが得意とするポップが弾ける曲では、基盤にロックの破片がこれでもかというほど埋め込まれているし、狂気さえ孕むようなロックが掻き鳴らされる曲には、輝くポップが追いついてくるのだ。とても不思議な現象だが、これが彼らの最大の武器であり、UNISON SQUARE GARDENである証だ。そしてそれをより色濃く実感したのは、リリースされた2枚のシングルを代表するそれぞれの表題曲“Invisible Sensation”と“fake town baby”を聴いた瞬間だった。
前作“10% roll, 10% romance”に引き続きTVアニメ『ボールルームへようこそ』のOPテーマとして作品を彩る“Invisible Sensation”は、言葉数の多さとスリーピースだとは思えない音の厚みを前面に押し出している。彼らの音楽は、鳴るべき音だけが鳴る世界であることを私たちに再確認させるかのようであった。緻密に計算され尽くした音と言葉はとてつもなく洗練されていて美しい。目には見えない、本能が突き動かす衝動的な感覚を呼び起こさせる煌びやかな音にハッとする。

<願えばきっと叶うなら 苦労なんて辞書にはないだろうね/努力だけじゃ未来は保てない>
<どうしても消えないままの 残酷時計は 真実を指してるから 厳しくも見えるだろう>

物事には表と裏がある。華やかな世界と残酷な真理はいつだって背中合わせだ。「努力が報われるとは限らない」という言葉の通りに、自分の力で進むことを止める人とそれでも自分の足で進み続ける人にスッパリ別れてしまう。いつものユニゾンを思わせる、私たちを突き放す歌詞はここに表れている。

<だけどいつか 誇れるくらいには 人生はよくできてる/だから、生きてほしい!>

アニメのストーリーに寄り添った歌詞たちは、努力も苦労もたくさん積み重ねてきた、自分に素直に生きる人たちに向けたものである。そしてその生き様こそが美しいのだ、だから我を行け、圧倒的なまでに花を咲かせてみせろ、と歌うこの曲は、まさに彼らへの愛の賛歌と言えよう。
これまでユニゾンは、ダイレクトないわゆる応援ソングを歌ってこなかった。「頑張れ」よりも「君は君で好きにしろ」だったし、良い意味で少し素直じゃなくて、ちょっとだけ捻れているのが彼らの歌詞だというイメージを持っていたので、今回の歌詞は少しストレートすぎた。この部分が引っかかったのはきっと私だけじゃないと思う。ここを理由に「ユニゾンは変わった」と思ったファンもいたかもしれない。でも、聴き込んでいくうちに違和感がスパイスに変わっていくのを感じた。新たなユニゾンの切り口を見つけられた気がして、嬉しくもなったのだ。

しかし、この曲がただ明るく爽やかなままで終わらないのは、前述の通りである。ポップを奏でる上での基盤は紛れもなく彼ら自身が磨いてきたロックンロールだ。ほんの少し尖ったギターリフと嵐のようなメロディを巻き起こす躍動感ある各楽器のリズムが、それを証明している。ロックという土台の上にユニゾンが建てるポップの遊園地――“Invisible Sensation”は、ユニゾンが提示した「今ユニゾンが私たちに聴かせたいポップ」なのだ。
それでは、“fake town baby”はどうか?
冒頭の英語詞から展開される巧みな言葉と、加速していく轟音はエモーショナルの一言に尽きる。こちらはTVアニメ『血界戦線 & BEYOND』のOPテーマとなっているが、作品の世界に溶け込みつつも、アニメタイアップらしからぬ攻めっぷりである。「アニメの世界の中で鳴っていて欲しい」ものであると同時に、「ユニゾンにしかできない」ものだということを私たちに感じさせる曲だ。

<神様はいない 要らない いても要らない/ここは誰の現在地だ?>

神様という運命を支配する存在をスッパリと切り捨てた上で、運命を決めるのは誰だ?と問う――求められている答えは決して明かさず、聴き手に考えを委ねるこの歌詞。ユニゾンは私たちに答えを与えようとはしない。扇動して突き放し、聴き手の想像を凌駕するロックンロールをぶん投げていくさまはあまりに痛快で、やみつきになってしまう。

<甘いか苦いかは君が決めろよ>
<苦言雑言言ってるだけじゃ 見向きさえされないから/生命session 全部巻き込んで 楽しむのが この街のルール>

以前『血界戦線』のEDテーマであった“シュガーソングとビターステップ”を思い起こさせるフレーズが歌われていたり、曲中で何度か登場する「この街」という言葉でアニメの世界観を意識させたりと、細部までとことん抜かりがない。
大胆なギター、うねるベース、ダイナミックなドラムはユニゾンが構築してきたロックそのものだが、この曲が示すロックを突き詰めたところに待っているのは極彩色のポップである。カラフルで輝かしく、かつ尖っていて爆発的。これらを同時に奏でることができるのは間違いなく彼らがUNISON SQUARE GARDENだからだ。
ポップとロックが寸分の狂いもない美しさで描かれた“Invisible Sensation”と“fake town baby”の2曲。背中合わせのようだが、それぞれの根底にあるふたつのメッセージはきっと繋がっている。前者では、自分が持つ心――才能、もしくは本能に従えと歌う。後者では、常識はいらないと歌う。役に立たないのだと。

<叫びだすheart heart に従って 我を行け美しい人よ>
<君が持ってる常識なんか ガラクタなんだよ>

「常識を捨てろ、才能を信じろ」
そういうメッセージが、この2曲に詰まっていると思う。生きるために必要なのは自分の力であり、自分に背かないことなのだ。そしてそこにありふれた価値観は必要ない。
音楽に繊細さと豪快さを兼ね備えながらこのメッセージを描き切った彼らは、UNISON SQUARE GARDENというバンドがどんどん前進していることを私たちに示している。
2017年、怒涛と言わんばかりの勢いであったシングルのリリースやライブツアーからは、彼らがロックバンドとしての誠実さをより正確に体現していく様子が見て取れた。曲を作り、レコーディングをして、ライブをする。バンドの在り方が多様なものとなっている現在、シーンに蔓延る流行や常識に惑わされることなく、自分たちの才能を信じて進化し続けるUNISON SQUARE GARDEN。そんな彼らから目を離すことなど、私には到底できない。彼らにとっての2017年が次のリリースにどう結びつき、今度はどんな花が咲くのか、次は私たちをどんなふうに圧倒してくれるのか、今から楽しみで仕方がない。

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