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2017年3月2日

今の私 (19歳)

「 歌詞がない 」ということ

SAKEROCKが私にくれたもの

小学校の高学年くらいからか、音楽がクラスの話題になることが増えた気がする。

「 ノリがいい 」「 歌って楽しい 」
そして、「 歌詞が良い 共感できる 」

ドラマや映画の感想の延長に音楽が現れだした頃から、私は一人世界に取り残された気分になった。

私の家族は壊れていた。
父親の借金が膨れ上がり両親は離婚し、私は母に引き取られたが生活はいつも苦しかった。
幼かった私は何もできない自分に劣等感を覚え、言葉で表すことのできない恐怖に押しつぶされる感覚を深夜のラジオから聞こえる笑い声と一緒に流れていくのをひたすらに耐える。そんな日々だった。

私は周りの人とは違う。同じにはなれない。
みんなが共感ができるという曲を聴いてみても、その世界は明るくて眩しくて。聴いているのが辛かった。

そんな泥沼のような生活を救ってくれたのが、父親が置いていったラジカセの中に入っていた1枚のCDだった。

何気なく聴いているうちに、ふと違和感を覚えた。

その曲には歌詞がなかった。

何曲聴いても聴こえてくるのは楽器の音と、たまに誰かの声やカウントだけだった。

全部聴き終わった私の胸は高揚感でいっぱいだった。気がついたら泣いていた。
今考えるとそれは感動だったのか悲しみだったのかわからないが、その時には分厚い黒い雲に覆われていた私の心に一筋の光が差し込んだ。それくらい衝撃だった。

CDのジャケットには「 SAKEROCK 」という字があり、あとはひたすら同じ名前が書かれたCDやDVDを見聴きし続けた。

その後もSAKEROCKを聴き続け、中学生になると一人でもライブを見に行くようになりますますインストの虜になったが、何より嬉しかったのは共通の趣味を持つ友達に出会えた事だった。心から、私は一人ではないと気づく事ができた。

メンバーの脱退やギタリストの急病による活動休止などがあり、SAKEROCKは2015年に解散をした。
悲しかったけど、それよりも感謝が上回った。

「 歌詞がないのはつまらない 」
こんな事を言われた事もあるが、私は「 歌詞がない 」からこそ聴く人の数だけ曲の解釈があり、その人に寄り添ってくれるのではないかと思っている。
 

" 手足のない人や、目と耳が動かない人は、
どんな風に踊ればいいの? ”
 

SAKEROCKはインストバンドだが、歌詞がついている曲が少しだけある。
 

" 声のない人や、目と耳が聞こえない人は
どんな風に歌えばいいの? ”
 

どうしても早く答えを知ろうとしてしまう、周りが正解で自分は不正解なんだと決めつけてしまうことがこの先もきっとあるのだろうとも思う。
 

" わからない、ごめん。
僕らはインストバンドさ。
どんな風に歌えばいいの? ”
 

わからないこともそれでいい。
みんなと同じじゃなくてもそれでもいい。
SAKEROCKの創る歌詞のない音楽たちは、私にこれからも生きていく人生で大切な事を教えてくれた。

「 言葉 」ではなく「 音 」で。

私の恩人、SAKEROCKに最大の感謝を。
 

          ARIGATO!!!

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