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2017年12月1日

暮らしのなな (30歳)
30
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あなたがいるなら、この世はまだ。

CORNELIUS「Mellow Waves Tour 2017」

​​-2017.10.25 新木場STUDIO COAST-
海の音がする…

ステージを覆う白い幕に投影された”円状の粒子”を見つめながら、SEの波の音がどんどんこちらに迫ってくる。油断を許さない。もう始まるんだ。
辺りは緊張感に包まれ波の音がピタッと止んだ時、力強く踏みしめるバスドラムの音が数発響いた。幕の向こうにメンバーが居るー

ドラムの音はいつしか規則正しくなり、重なり出す音と共に「あなたがいるなら」のイントロにつながる優しい音の波形が迫ってくる。いきなり切なくなる中で、幕は文字通り切って落とされメンバーの登場と共に演奏が「いつか / どこか」に変わり、飛んでいった意識が現実に引き戻される。

(歌ってる!小山田さんが歌っている!)

今回のツアーでは照明量の強い連なったライトがステージ上に何台も用意されており、演奏と映像の綿密なリンクにさらに”光”が加わる。それはほぼ最後列のここからでも目を細めるほどで、視覚を越えて触覚が動かされるような感覚すら覚える。
音は光と共に速く、強く、ここまで届く。そして何よりカッコイイのだ。
「いつか / どこか」ではテクニカルな演奏が入り乱れるサビ部分で、白過ぎる照明が強く点滅し、音と共に炸裂した。
ボイスチェンジした声でタイトル名「Helix/Spiral」を繰り返し歌う無機質なテクノ楽曲では、リリースパーティー時にはなかったグルーヴ感が生まれていた。
まだ2曲。どれだけ痺れさせれば…

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そこからは、音の魔術集『POINT』からの傑作「Drop」「Point Of View Point」を繋げるように放ち、声も楽器も映像すらも音の粒のように操るコーネリアスに魅入り、一息付く間も与えずにギタリスト小山田のカッコいいをカッコいいで固めた「Count Five Or Six」からの「I Hate Hate」でギターをギュイーンギュイーン鳴らしては私達の脳天をぶん殴りまくり、「Wataridori」で冷静になって鳥の羽ばたきを見つめ続けた。
この4曲だけでも今までのコーネリアスとしてなら最高と言えた。
しかし彼は『Mellow Waves』をリリースしている。
私達はまだまだ目撃しなければいけない。
『Mellow Waves』からの「The Spell of a Vanishing Loveliness」は、ゆったりとした時間が過ぎるような女性ボーカルとのデュエットで(音源では小山田さんの親類であるLushミキ・ベレーニと、今回は大野由美子で再現され)、粘土でできた”白い女の子”が実写の手や指の上を浮遊する映像が流された。
たしかこの英詞の訳は…理想の子だけれど思ってる事を口にしない娘と、同じく理想である夫にさようならを告げる曲。粘土の女の子、手や指の上で一人で浮かぶように遊ぶ女の子。

その後『POINT』から「Tone Twilight Zone」へ続く。ゆったりとした時間の続きのように、同じく指が人のように二足歩行してゆくモノクロの世界の映像。
淡々と続く次の「Smoke」の ”今どこ?” ”そこどこ?”という煙の中から居場所を手探りで訊く歌詞に泣きそうになって、続く『Mellow Waves』からの「未来の人へ」で、長く続き構成された切なさは ついに決壊した。
”今ここから 未来の人へ その部屋には 私はいない”

スクリーンにはモノクロの影絵のような世界の中、一匹の猫が部屋を歩く。この曲は死後の世界を歌い、映像では視点が猫になった世界が、何者でもない自分の姿のようで、心細い感情移入と優しく淡々とした小山田さんの歌声が胸を苦しくさせた。

”まだそこには 誰かいますか?”

そのまま猫は外へ出る。黒いコンバースのスニーカーを履いた飼い主の自転車のカゴに飛び乗って街を追い越す。加速する。そのまま彼らは夜空を飛び、月に影を映す。”遥か”未来の人へ。
最後のETのような演出や、部屋の机に置かれたmellow yellowのジュースなど遊び心も充分にあるMVだったのに、泣きたかった。
同じく『Mellow Waves』「Surfing on Mind Wave pt 2」へ流れ、まだ心の中で泣いて放心した目で、スクリーンに映る古い映画のようなモノクロのサーフィンの波に乗った視点を、海が太陽に向かい進み続ける。太陽の周りを渦のように波が円を描く映像を吸い込まれるように見つめた。弦楽器が連なり揺れる音に包まれて、走馬灯を見ているような。あるいは生まれる前に転生を待つような感覚だった。

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一連の世界観は『Mellow Waves』「夢の中で」で、淡々と歌う現実の小山田さんに戻り、ポップなメロディに安心して歌を聴いた。
演奏のエンドにのって、ビルや車が次々に浮遊していくシーンが美しかった。
その後は「Beep It」「Fit Song」「Gum」と立て続けにグルーヴィーで綿密なTHEコーネリアスサウンドをバンバン放ち、演奏と遊びにしびれながら、発光し続ける照明に目をやられつつ、踊りまくった。

そうしたら「Star Fruits Surf Rider」のイントロが流れー
会場内はまた息を呑むんです。切なさと思い出と思い入れを交差させながら代表曲とも言えるこの曲を聴きながら、酔いしれた。

その瞬間に夢を見た。

間奏を聴いたかと思った瞬間、客席上部の大きなミラーボールに赤・青・黄・ピンクの照明が当てられ、ミラーボールはゆっくり回転して反射した色とりどりの光の粒が私達を撫でるように煌めき、会場中をドリーミーに包み込んだ。
目を奪われ、鳥肌を立てる、その中心では小山田さんの奏でるテルミンの音が鳴り響いていた。あの瞬間、私達全員が見た一生忘れない夢だと思う。

言葉で言い表せない感覚の中、立ち尽くしていると、開演直後に聴いたバスドラムの響きと共にあのトレモロが迫ってくる。終わってしまうー

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この一貫されたステージは「あなたがいるなら」で始まり「あなたがいるなら」で終わる。彼が歌う一字一句を逃さないように歌を聴いた。

いつも音と映像の完璧さに痺れていたコーネリアスのステージに、今回私は ”歌” に泣いていた。初めて歌詞が歌詞ではなく詩として意味が伴ったように「あなたがいるなら」では今まで声を楽器として使ってきた彼が、歌を歌う為の歌い方を”小山田圭吾がしている”というただひとつの意味があった。
彼の歌声は”あなた”を浮き彫りにしていた。

そんなん泣いちゃうよ。
皆、きみを好きなんだ。
今回のツアーはコーネリアス史上最高のアクトだった。
なぜならば『Mellow Waves』からの曲達が加わったからだった。

私達をどこかへ連れて行く、夢のようだった。
私達にも言わせて欲しい、

”あなたが いるなら この世は まだましだな”って。

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