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2017年12月4日

とりどりテネンバウム (29歳)
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チャットモンチーを「完結」できない

デビュー前からなんとなく知っていたニワカファンの私と、チャットモンチーの2000字

チャットモンチーが解散するらしい。「完結」するらしい。どうやら本当らしい。

思えば、私が高校生の頃から地元では結構な知名度を誇った。彼女ら3人(当時)がバンドのコンテストに出場したときも「どうせチャットモンチーが優勝するんでしょ」と、バンドをやっていた子は口を揃えて言っていた。チャットモンチーの曲を聞いたことのない子でさえもそう言っていた。へそまがりな態度で同じように「どうせ」とつぶやいていた友達のひとりは、そのコンテストを最前列で観賞し、態度を180度ひっくり返しファンの仲間入りを果たした。その後まもなくして世に出た自主制作ミニアルバム「チャットモンチーになりたい」を入手した彼女は、布教活動の一貫としてそのCDを私に貸してくれた。収録曲の「サラバ青春」を聞いてみてほしい、と言われた私は、家に帰ってMDコンポにCDを入れた。それがチャットモンチーとの出会いだった。
ボーカルの甘くて、たくましい歌声が強烈だった。しかしBUMP OF CHICKENの信者で、かつ、友達に負けず劣らずのへそ曲がりだった当時の私は、素直に「良かったよ」と言うことができず「バンプの方がいい!」と言いはった。学生特有の浅い思慮を発揮したのだ。その後私は、頑なにチャットモンチーを拒絶した。BUMP OF CHICKEN以外のミュージシャンに惹かれる自分が許せなかった。
高校の3年間はあっという間に過ぎた。卒業式が終わり、学校を出てクラスの打ち上げ会場のカラオケへ行こうと自転車に乗ったとき、私は封印していたチャットモンチーを少しだけ解放してやった。春の昼下がり。柔らかくて清潔な空気を自転車で掻き分けながら「サラバ、青春」を脳内でぐるぐると流した。卒業式の曲にしては少し未練ったらしく、そこが私の身に染みた。高校3年間に後悔はないか。いや、あるわ。そんなことをぼんやり考えた。

県外の大学に入り、楽器店でアルバイトを始めた。店長がチャットモンチーの大ファンで「ボーカルのえっちゃんが使ってるギターはフェンダーのテレキャスターでね」とか「あっこちゃんのベースはね」とか、チャットモンチーのことを教えてくれた。高校の頃に比べて少しだけ大人になった私は、彼女たちのアルバムを借りてみることにした。ハナノユメ。恋愛スピリッツ。どなる、でんわ、どしゃぶり。めちゃくちゃかっこよかった。
大学生の私の日常にチャットモンチーはしばしば現れた。初めて行ったフェスにも出ていたし、当時好きだった蒼井優がチャットモンチーをお薦めしていたし、いちばん好きな映画の主題歌も担当していた。
大学生活が終わりに差し掛かった頃、チャットモンチーからひとりいなくなった。高校を卒業してから疎遠になってしまった友達と、既に辞めてしまったバイト先の店長の顔が浮かんだ。

社会人になった。1年が過ぎ、最も仲良くしていた同期が結婚のため退職した。婚約者はチャットモンチーが好きだそうで、「じゃあ結婚式は私がバスロマンス歌うよ!」という話で盛り上がった。実際は受付係だったからバスロマンスは歌えなかったけれど、本当のことを言うと、結婚が決まった時から、私はバスロマンスをちょっぴり練習していた。
それ以来、なぜかチャットモンチーとは少し疎遠になった。BUMP OF CHICKENとも疎遠になっていた。理由はなかった。
そんなチャットモンチーが解散するらしい。「完結」するらしい。どうやら本当らしい。
私は彼女たちの熱心なファンではないけれど、こうやって振り返ると思い出の中にはいつのまにか、彼女たちがちゃんといた。集合写真に写ってる親戚のお姉ちゃんみたいに。

チャットモンチーの新しい曲は、来年7月以降は発表されなくなる。あわてて最新曲までをすべて聞いた。アルバム「変身」に収録されている「きらきらひかれ」は、仕事で大きな失敗をしたとき、相手先に謝りに行った帰り道の車内のラジオでかかっていた曲。「隣の女」の歌詞にある「必死な時だけ協力要請する女」は、たしか発売されてすぐにCDショップでそのフレーズを聞いて、「あぁ、いるよね」と思ったもんだ。そしてその後、仕事で参っていた私の頭にそのフレーズが浮かび、「私のことだ」と落ち込んだんだっけ。そうか、あれはチャットモンチーだったのか。気づけなかったことが悲しかった。

やっぱりチャットモンチーは解散するらしい。「完結」するらしい。どうやら本当らしい。何度呟いてみても、実感がわかない。
チャットモンチーが完結しても、ふとしたきっかけで彼女たちは私の前に姿を現すだろう。いつかはわからない。自転車に乗っているとき。結婚式をしているカップルを見かけたとき。大きな失敗をしたとき。必ずチャットモンチーの曲が脳をよぎるだろう。そして思い出す。そういえば解散していたんだっけ、と。
「さようなら」は当分、言えそうにない。

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