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2017年12月7日

川鍋良章 (36歳)
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サンボマスターが示した希望が照らす僕らの居場所

“伝説”の初武道館に感動し今日も僕らは日常を歩んでいく

文字通り“伝説”のライヴだった。この三人が今日まで武道館でライヴをやっていなかった事実が意外過ぎて驚いた。同時に、初めてそのステージに立つと聞いて、どんな光景が広がるのか、どんなライヴになるのか見ない訳にはいかないと思って、義務感に近い強い意志をもって九段下に向かった。サンボマスター2003年リリースのメジャー・ファースト・アルバム「新しき日本語ロックの道と光」発売日という記念すべき日(12月3日)に行われた武道館公演である。
なぜ義務感まで持つかって? そりゃ、このバンドに、どれだけ救われて来たかって、気持ちを強く持とうと励まされたり、居場所はここ(ライヴ会場)だと信じさせてくれたことだって、ロックが好きな自分に存在価値があると確信させてくれたからで、その恩返しをしなくてはいけないという衝動に駆られたからだ。僕だけではないはずだ。サンボはずっと、いつ見ても、どこで見ても、全力で僕らを肯定し続けてくれた。そんなに人生ずっとうまく進むなんてことは誰しも有り得ない。思わぬ苦難が待ち構えていることだってあった。けど、何も無い僕が、何を糧に、その苦難を乗り越えようとしたかって、音楽しか、ロックしかなかった。そんな不器用で、居場所の少ない人間に光を見出したのがサンボだった。だから、御礼のひと言でも言いに行くなんて、人としてロックを愛する者として至極当然なことだと思ったからだ。

武道館公演をするタイミングとしては遅すぎたと言ってもいいだろう。十数年前の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」が、地上波のドラマ主題歌に抜擢され、ブレークした時には既に武道館のキャパを優に満員にするほどの人気はあっただろうし、現にそれから今までの全国各フェス会場での彼らの動員力を鑑みても、やはり“今更”としか言いようがない。名実ともに、彼らは既に数十回は武道館をやっていても誰もが納得するバンドであるからだ。

山口隆(Vo,G)はライヴが始まると同時に、いつものように、こう叫んだ「ここ武道館で伝説起こせる人~!」「武道館始まって以来の最強のライブできる人!」。当たり前じゃないか、それを見に来たのだから、やりに来たのだから。全力で叫んで応える。武道館中が叫んで応える。その熱量たるや半端ない。一曲目は先で述べたメジャー・ファースト作の一曲目「愛しき日々」を、続けて二曲目「そのぬくもりに用がある」を立て続けて熱唱。「伝説!」コールを織り交ぜ、武道館がライヴ・ハウスさながらの興奮の坩堝と化した。「できっこないを やらなくちゃ」「ロックンロール イズ ノットデッド」「青春狂騒曲」「世界をかえさせておくれよ」とロック・シーンの垣根を越えて、一般大衆にも耳馴染みのある大ヒット曲を連投する。

山口隆も「俺達がなんでここに来たかって? おめえの不安を無くすため、おめえの孤独をなくすために来た」と叫び、「踊れ~!」と煽る。こっちも無我夢中だ。心がポジティブな想いで満ち溢れていながら、汗だくになりながら踊る。師走とは思えない熱気だった。当然、それは僕だけではなかった。気付けば、武道館中が狂ったように踊りまくっている。皆が皆、まるで日常を忘れたかのように、いわば自分達の“ホーム”で、同じように熱い気持ちを持って踊りまくっている。
サンボの初武道館は特効や演出面で特別なことはしなかった。最低限の照明と、楽器と、マイクがあるだけ。なのに、これだけの盛り上がりを見せる。山口隆の煽りだけ、言わずもがな“日本一うまい煽りだ”。それだけで、ここまで一体感が生まれる。特別な空気感が生まれる。彼は、僕たちをロックン・ロールだと言ってくれたけど、その言葉こちらからも返したい。山口さん、あなたこそがロックン・ロールで、救いなんだって。

そして邦楽ロック史に燦然と輝く名曲「ラブソング」が歌われた。2011年の震災以降、この曲を歌うことを躊躇っていたと言う。けど、武道館でライブをやるって話になった時に、自分達の中ではこの曲を武道館でやる幸せはあるなと思ったと語った。間奏時に演奏が止む。長い沈黙が続く。この間、メンバーは何を想ったのだろう。僕たちは何を想えば良かったんだろう。人それぞれに事情があって、色んな想いが渦巻いてる気がした。被災された方も中にはいたかもしれないし、当たり前のように健康でぬくぬくと過ごして会場に立ってる訳では無い人もいるだろう。ただ、その時に、愛しい存在とか、時間とか、それは他人でも、自分でも、何でもいいから、とにかく今生きてる事への「愛しさ」を、音楽に触れている瞬間の「尊さ」を感じられた自分に安堵する。何も感じなくなったら本当に悲しいことだ。これも、サンボが教えてくれたこと。

途中、山口隆は言った。「今日の主役はおめえ達なんだ」って。通常、ロック・バンドとして武道館というひとつの到達点に達したら、次の大きな野望を抱くものだ。現に、何組もの初武道館を見てきたが、次はどこぞのアリーナだ、ドームだと口を揃えて言う。決して、それが悪いこととは思わない。しかし、山口隆が最後に口にしたように「ライヴ・ハウスでもいい、武道館でもいい、また生きて会おう! おめえらの居場所はここだ!」と、サンボのスタンスはそれらとは明らかに異なった。バンドの成長以上に、純粋にサンボを求めている人間に、自分達のロックを伝えるだけ。その純真さに心救われる。このバンドが好きでよかった、ロックが好きで良かったと改めて思わせてくれる。
心地良い疲労感と共に明日を生きる希望が胸の奥に芽生えた実感を抱き帰路に着く。武道館終焉してから数日経った今、この日の伝説の武道館公演は、まさしく奇跡の公演だったと思い起こす度に、じわじわ感じる。

サンボマスターは日本ロックの希望であり未来である。これからも、そうあり続けるだろう。だから、僕達も歩みを止めない。希望を捨てない。この奇跡のバンドがいてくれて、本当に良かった。

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