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2017年3月2日

YMSN (19歳)

「monolith」から始まった道

2月11日 04 Limited Sazabys in 日本武道館

 あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
 2014年1月末。私はラジオを聴いていた。その番組が私がよく好んで聴いていたもので、流行りのJ-POPや若手バンドの曲がよく流れる番組だった。番組もそろそろ終盤、この曲が流れ終わったらそろそろエンディングかな、と、私がラジオのスイッチを切ろうとしたその時だった。その曲が流れてきた瞬間、私の全身に稲妻が走ったような衝撃を感じた。ラジオに伸ばされていた私の手は止まっていて、曲が流れ終わった時には机の上のスマホを手にしていた。ラジオ局のホームページを開き、今さっき流れていた曲を検索する。曲名がわかった。「monolith」だ。すぐにYouTubeを開く。改めてその曲のMVを、私は食い入るように見ていた。

 それが私と、04 Limited Sazabysとの出会いだった。

 それから私はフォーリミの虜になってしまった。ドラムは2ビートでゴリゴリなのに、彼らの楽曲は今まで聴いてきたどのバンドとも違う、人懐っこいポップさをまとっていた。2ビートと英語詞という、ある種自分の中で一組になっていた固定概念のようなものを、フォーリミは「monolith」ですべてぶち壊していった。一目惚れとはこういうことをいうんだな、と感じた。何度もライブに足を運んだし、フェスに出演するときも必ず見に行くようにしていた。いつしかフォーリミは、私のメインストリームになっていた。
 あれから3年。フォーリミは、あれよあれよという間にその人気を上昇させていった。2015年4月にメジャーデビュー。1stアルバム「CAVU」を引っ提げて行われたツアーは全会場ソールドアウト。1年後には、地元・名古屋で「YON FES」を主催。京都大作戦ではメインステージに出演。大型フェスでもよく名前を見かけるようになった。
 そして、2016年8月の終わり、2ndアルバム「eureka」のリリースを控えていた彼らから、一つのニュースが飛び込んできた。

 初の武道館公演開催。

 西日本に住んでいる私は、一度も武道館に足を運んだことはなかった。これまでも大好きなアーティストがたびたびその舞台に立ってきたが、学校のこともあり、金銭面のこともあり、私は泣く泣くライブを見送ってきていた。しかし、このニュースを聞いた瞬間、私は東京に行こう、いや行かなきゃ、と不思議な使命感に駆られ、東京へ行くことを決意した。関西の外にライブを見に行く、いわゆる「遠征」は初めてだし、武道館に行くのも初めてだ。だけど、このライブは絶対に行かないと後悔する。そんな感情が私の中にあった。
 そんな強い思いが届いたのか、私は「eureka」の購入者限定先行で、武道館へのチケットを手にした。2月11日、九段下駅で降り、私は武道館のある北の丸公園へ向かった。武道館は、なんだかとても澄んだ空気を持っていて、その場にいるだけで、眺めているだけで雰囲気に圧倒されそうな、そんな佇まいをしていた。荘厳な雰囲気は会場に入っても続いていた。アリーナ公演を見に行く、というのは何度も経験していたが、これまでのどのライブとも違う、「特別感」がその場にはあったと思う。期待とも緊張とも異なった、言葉では言い表せられない雰囲気。これが武道館でライブをすることなのか。

 開演時間になり、照明が落とされる。割れんばかりの歓声が響く。私は下手側のスタンド席から、彼らの晴れ舞台を見守った。

 紗幕の中から、4人のシルエットが浮かび上がり、「monolith」が聴こえてきたその瞬間、この曲との大量の思い出が一気に浮かんできた。3年前のこの頃にリリースされた曲。当時はまだインディーズで、周りはまだ誰も聴いていなかった。当時のGENは、あまりの声の高さや髪形のせいで、どこかのインタビューで「僕」といっているのを見るまでは男か女かわからなかった。初めて彼らを生で見たのは2015年3月。あの日の1曲目も「monolith」だった。イントロが流れ出した瞬間、頭のネジが外れたような、心のタガが外されたような、明らかに自分の中に巨大な変化が起きた。一度、フェスでフォーリミを見たとき、この曲で羽目を外して暴れていたらメガネがすっ飛んでいってモッシュサークルの連中に粉々にされたこともあった。そんなたくさんの思い出が詰まった曲が、武道館で鳴らされている。スクリーンに映る映像は、私が何度も飽き足らず見たMVと同じ映像。その光景に、私は誰よりも感動していたと思う。
 晴れ舞台はまだ続く。「fiction」ではフォーリミ史上最大級のレーザーが飛び交い、「knife」では火柱が噴き上がる。「Warp」ではMVに登場した外人と水着のお姉さんがドライブし、「nem…」では当時のMVがスクリーンに流れ、現在の彼らとリンクする。「buster call」の前には彼らがこれまでに行ってきたすべてのライブの日程が羅列される。MCから間髪入れずに投下された「Grasshopper」ではバッタ視点の映像、《明日の自分はどうだ?》の言葉にハッとさせられる。
 月日を重ねるにつれて、いつしかフォーリミの歌詞は希望や夢を語る言葉が増えてきた。しかし、その歌詞にはいつだって不安がつきまとっている。《さよなら さよなら 転がって夢が崩れていく》(Terminal)、《あの日の自分が許せないな》(swim)など、ネガティブな感情も隠さずにさらけ出してくる。だが最後には、《最高な世界になったら きっと愛せるんじゃないか》(Terminal)、《信じろ 未来を》(swim)と、不安や恐れを塗り替える希望を提示してくれる。私はそんなフォーリミの歌詞が好きだ。「俺たちは俺たちにしか送れない希望をどんどん皆さんに送っていこうと思ってます」というGENの力強いMCを聞いた時、私は心の底から、あなたたちを応援し続けて本当によかった、と思った。同時に、これからもずっと応援し続けるぞ、と心の声で返しておいた。そういった信頼関係の積み重ねが、この武道館での晴れ舞台に、そして未来のさらに大きな舞台への道となっていくのだろう。

 あの日、「monolith」から始まった道は、ここ武道館で一つの集大成を見せた。だが、夢はまだ続く。私は去年の「YON FES」に参加できておらず、今年も予定が重なり行くことはできない。でもいつか、彼らが育ってきた名古屋に行ってみたい。モリコロパークで、たくさんの仲間と最高の景色を築き上げるフォーリミを見てみたい。その場所でまた、「monolith」を聴きたい。武道館よりも大きな場所で、フォーリミを見てみたい。もはや私にとってフォーリミは、生きる希望なのかもしれない。つらい時も、彼らとまた会えることを考えれば、生きる力をもらえる。
 「monolith」がラジオから流れてきた日を最初の記念日とするならば、今日の武道館公演は二度目の記念日だ。たまたまラジオから流れてきたバンドが、今では心の拠り所となっている。それはきっとかけがえのない、素晴らしいことだと思う。道はこれからも続いていく。だけど、どれだけ長い道になっても、私はあの日の衝撃と、今日の武道館のことを忘れることはないだろう。
 これからも、フォーリミの描く未来に胸が膨らむばかりだ。

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