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MAN WITH A MISSIONが世界と己に向けて撃つ響き

ある日の午後、森の中で狼に出逢ってしまった

人生において出逢える人や出来事には必ず限りがあるのは明白である。人ひとりがいくら精力的に活動したところで、その数はたかが知れているし、そもそも数や量を争うために私達は生きているわけではない。
わたしのことに関して言うと、高校生の頃には既にU2の音楽に出会い、その後来日公演にも何度か行くことができた。そしてボノの今よりももっと艶のある歌声と心が躍るようなLiveを目撃できたこと。嗚呼、ほんとうに同じ時代に生まれてきてなんてわたしはラッキーだろうと思っていた。(余談ではあるけれど当時、来日した際には感動のあまりロッキング・オンに寄稿しさらに有難いことに掲載していただきました笑)
他のバンドの音、THE SMITHSやR.E.M.なども大好きなアーティストだが、やはり私のベース=還る場所はU2しかねーよな、なんて新譜が出される度に再確認しながら、ずっとボノ達と歳月を重ねてきたしこのまま余生を静かに大好きな音楽とともに過ごして行くんだろうなあ、上等じゃね?と思っていた。
そう、あの瞬間まで…

約二年前。母親が癌を患ったのち呆気なく旅立って行ったあと、わたしは自分でもびっくりするくらいの虚無感に襲われ、それでも毎日の日常は果てしなく続けなくちゃいけないし、しかしふと独りになった時に心の中での自分自身の声は「虚しい虚しい虚しい」という言葉で埋め尽くされいた。いや、それほど仲の良い親子関係でもなかった自分がこんなにダメージを受けていること自体が信じられないほどだったし、例えて言うならまるで『爆撃に遭った』ような気分だった(実際、親友にもそう打ち明けている)。
そんな空爆後の荒涼とした景色にいるような日々の中、何となくスマホをいじりながらYouTubeをテキトーに見るともなく見ていた時。あるバンドの▶マークをタップしたあとに流れてきた、美しい旋律。とビジュアルのギャップに目と耳が釘付けになってしまった。

それが私と狼達の出逢い。
流れてきた曲は「Seven Deadly Sins」。

それ以来、もう何が何だか訳がわからない謎の熱病に罹ったかのように彼等の音楽が聴きたくて聴きたくてたまらない衝動に駆られてしまったのだ。いくら聴いても飽きることも満腹になることもなく、カラカラの砂地に水が染み込んでいくようにもっともっとその音に浸りたい、という原始的な欲求だけだったように思う。当然、彼等の生の音楽にもっと近づいて聴きたくなり色々調べるとどうもTwitterに色んな告知が出るらしいことも解り、それまでSNSなんか別に必要ないし、超アナログ派でめんどくさがりな自分には合わないって避けていたはずが、自力で(何となく誰にも聞けなかった…)Twitterアカウントを作りFWAM(ファンクラブデスネ)にも登録し、さらにLiveチケット先行予約をするに至るまでの行動力といったら。どうしちゃったんだ、自分。
人間って何歳になっても、それまで知らずに出来なかったことでもその気にさえなればまだまだ出来るようになる伸び代があるんだね、と妙なところで感心してしまったほど。

…経緯はこのくらいにしておこう。
マンウィズの鳴らす音楽。一言では何系と言い表せないほど、様々な要素が混じり合い素晴らしく美しいメロディー、覚えやすいサビの「Memories」などはほんとうに万人ウケする音を出すかと思えば、代表曲の一つでもある「Emotions」はどこまでも激しく、拳を振り上げない訳にはいかないくらいのまさに衝動。そして前作の「The World’s On Fire」…きっと名曲の一つとしてずっとずっと歌い継がれるような壮大なアンセム。
そして辛うじて入手できた、今回のさいたまスーパーアリーナでの「Dog Days Tour 2017」。個人的には3回目のLive参戦となった訳だが、ハコの大小など全く関係ないほどのエネルギー量に一曲目からアッチ側へ持っていかれてしまった。おそらくその夜、わたし達はマンウィズがまた一つステップを上がり、新しいステージに立ったという記念碑的な事件を目の当たりにしたのだ。素晴らしいLiveの詳細なレポートはそのうち各方面から上がってくるだろうから、ここでは控えさせていただく。…というよりも、わたしにとってはまるで熱に浮かされたかのような波動の中でのあの濃密な時間、感覚をまだ完全には文字変換することができないのだ。

しかし何故、そこまで狼の音楽に惹かれてしまうのか。トーキョー・タナカの野太く、しかしどこまでもしなやかで切ないボーカルはもちろんだが、私が最も心を揺さぶられるのは5匹の中でも唯一言葉を獲得し広報部長のようなジャン・ケン・ジョニー氏の書く詩。底無しのヘヴィさと闇、一方でわたし達が忘れてしまいそうな光を纏った詞であると思うのだ。その世界観をさらに再構築したカミカゼの楽曲が同時に鳴り響く瞬間、音楽だけでまるで4Dのプロジェクションマッピングのような映像が立ち上ってくるような、そんな幻覚すら見えてくるのだ。
ジョニ氏は自らを青臭いと自嘲気味に言うが、その実、本気でそう思っているのを臆面もなく言葉に載せる。結局は自分の中にしか源はないし、そこから掬ってきた本物でないと自分もオーディエンスも魂が共鳴しないことをたぶん解っている。
しかも彼は一緒に夢を追い続けようとは決して言ってはない。我々狼にはmissionがある、あなた方にもそれぞれmissionがあるはずだと。大音響で外に向かって鳴らす音に相反しあくまで内省を促すようなメッセージ。それなのにわたしのようないい歳した中年女にどストライクに当てはまることなんて、想像できなかったよね(おそらくは彼等自身も想定外だったハズ)。
ジョニ氏の描く世界は絶望的なくらいに孤独だ。ある意味、聴く手を突き放すくらい冷ややかだ。君は僕ではない。勝手にやってくれ。人はどこまでも孤独でそれは宿命であると。そして安直な夢や愛や希望を歌ってオーディエンスを幻惑したりしない。

そう、どこまでも己に誠実であるしそれしか出来ないのだ。そしてそれが彼等の最大の強みだとわたしは思う。でも、だから、そんな奴らの音楽を信じたくなるのは仕方ないじゃないか。勇気を与えるとか貰うとか、言葉だけのそんな薄っぺらい目的でロックを鳴らしている訳ではないのだ。自分に天から与えられた使命を全うするためにだけ、ロックというツールで実践しているだけなのだ。その揺るがない姿勢から発せられる音楽にわたしの魂が完全に共振してしまったのだ。
彼らの誠実さの一片はトーキョー・タナカの様々な復興支援活動などを見ても伺い知れるが、これを語り始めると長くなりそうなので、次回に持ち越したい。

最後に。彼等のバンド名にもあるmission、目指すべき場所はまだまだこんな世界じゃない。やっと準備が整ったところだ。
ゆるりと余生を生暖かく過ごすはずだった私の前に現れやがった狼達。忘れていたあの頃の熱狂をもう一度夢見させてくれる狼達。ギリ同時代に間に合って良かった。

こんな狼達に出逢えたこと。人生のうちにまだこんな出逢いが残されていたこと。
わたしの余生とやらはまだまだ先送りになってしまったようだ。

オマエラ、最&高ジャネーカ!

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