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[Alexandros] と私

「Waitress, Waitress!」から「EXIST!」まで

私が[Alexandros]というバンドと出会ったのは、2013年の夏だった。まだ、彼らが[Alexandros]になる前のことだ。

長年続けてきたクラシックバレエから離れ、暇を持て余していた高校生の私は、動画サイト巡りにハマっていた。
CMで聴いて気に入った、NICO Touches the Wallsの「夏の大三角形」のMVを動画サイトで見ていたのだが。
その関連動画に、当時はまだ[Champagne]名義だった、[Alexandros]の「Waitress, Waitress!」という楽曲のMVを見つけた。なんとなく再生を押した私は、そこで運命の出会いを果たしたのである。

楽曲を初めて聴いた瞬間に確信した。
テンポ、メロディー、詰め込まれた歌詞のリズム…好みのど真ん中だ。歌詞の意味はさっぱりわからないし、今まであまり聴くことがなかったジャンルの音楽だから、細かいことはわからない。
ただ、理屈抜きに、直感で好きだと思った。

ひたすらにバレエだけに打ち込んでいたため、それまで、私の中にある音楽といえば、クラシックと宝塚歌劇団とミュージカルのみだった。そんな私にとって、彼らの作る音楽はひどく新鮮で、衝撃的なものだったのだ。

キーボードが紡ぎ出すクラシカルな美しい旋律があったかと思えば、激しいギターが頭の中を掻き回す。
ベースの低音が全身に響き、ドラムのリズムに身体が勝手に弾む。
そして、突き抜ける高音と染み渡る低音の両方を合わせ持った、特徴的な歌声が、耳に残って離れない。
まるで麻薬のようだと思った。

とにかく「Waitress, Waitress!」を聴いたときの衝撃が忘れられなくて、私はその衝撃を超えるものを求めて、彷徨った。

それからしばらく、浮気性な私は、フラフラといろいろなバンドを渡り歩くこととなる。
フェスに行ってみたり、友人のおすすめバンドを聴いてみたり。
その友人に連れられ、別のバンドのライブに行ってみたり。

もちろんドロスの楽曲も聴いていたし、新譜が出ればチェックしていた。
「ワタリドリ」の大ヒットで、ドロスはさらに勢いを増して、どんどん知名度を高めていたし、それは素直に嬉しかった。

やはり彼らの音楽はいつも新鮮で、スタイリッシュなのに泥臭くて、とにかく格好いい。
好きだ。
でも、何か足りない。
もっと刺激が欲しい。
初めてドロスに出会った時のような、くらくらするような衝撃が欲しい。
そんな贅沢なことを思いながら、私は日々を過ごしていた。
2016年、[Alexandros]の6枚目のアルバム、「EXIST!」が発売され、私はここで、完全に彼らに堕ちた。

私が求めていたのは、これだ。
こんな、心臓を突き刺すようなアルバムを待っていたんだ。そう思った。
1曲目の「ムーンソング」は、まさにタイトル通り、月夜のドライブにぴったりな楽曲である。
軽快で美しいキーボードのメロディーが流れ、サビでは川上洋平(Gt.Vo)にしか出せない絶妙な高音が踊る。
しかもファルセットの使い方が憎いほど良い。
男性のファルセットはズルいと思う。
早口で捲し立てるような英語詞は、メロディーに似合わず尖っていて、ハッとさせられる。

《君がいないならいないで 自ら月に成り上がろう》

このワンフレーズが、まさしく[Alexandros]というバンドのスタンスを表している。
「成り上がる」という真っ直ぐな言葉が印象的だ。

フェスで、LaLaLa…の部分をみんなでシンガロングしたのだが、なんだか感動してぞわぞわした。
2曲目はイントロからして個性的な楽曲、「Kaiju」。
琴が使われており、和のテイストが強いメロディーなのにも関わらず、全編英語詞という異質さに惹き付けられる。
曲全体はラップを交えた洋楽の雰囲気を醸し出しているのに、琴の音が違和感なくハマっているのが恐ろしい。
フェスの定番曲であり、オーディエンスが手を掲げて一緒に盛り上がれる楽曲だ。
3曲目はドラマのタイアップでも話題となった「Girl A」。
電子音を巧みに使ったアップテンポな楽曲で、とにかく激しい。
あっという間にサビまで駆け上がって、そのままの勢いが曲のラストまで続くため、聴く側のテンションも一気に引き上げられる。
白井眞輝(Gt.)のギターソロが響く後半の盛り上がりも良い。
全体を通して、タイアップでありながら攻めている印象の強い楽曲だ。
4曲目の「Claw」、5曲目の「O2」は如何にもアルバム曲といった雰囲気を持つ。
特に「O2」は、アルバム全体を通して聴くと、切り替えの楽曲となっていることがわかる。
ここまでの激しい楽曲の流れを一旦ここで緩めて、ここからまたアルバムの雰囲気がガラッと変わるのである。
ドロスの新境地を垣間見せる、アルバム全体にとって重要な役割を果たす楽曲となっている。
そして、雰囲気を変えたアルバムの6曲目は「Feel like」だ。
CMでも聴き馴染みのある楽曲だが、この楽曲は個人的にも好きなので、アルバムの流れで聴いたときはグッときた。
透明感あるポップなメロディーで、英語がわからなくても口ずさみたくなる。そして踊りたくなる。

《I feel like flying high above, above the sky (空高く飛んで行きたい気分) 》

まさに歌詞の通り、ふわふわと心地の良い浮遊感を味わいながら、身体を揺らしたくなるナンバーだ。
7曲目の「Aoyama」は、個人的に最もスルメのような味のある楽曲だと感じた。
聴き込めば聴き込むほどクセになる。
ミドルテンポで、おしゃれな雰囲気を持つこの楽曲は、メロディーはもちろんのこと歌詞が良い。

《Life is not as good as you think it is
If you won’t try
(人生はそんな全部が全部楽しいわけじゃない
君が努力しなければね) 》

決して優しく甘く、慰めるようなことは言わないけれど、自分自身で前を向く力をくれる、そんな歌詞だ。
ポップなメロディーの中で、歪んで響くギターの音が歌詞とリンクしているようで、聴いたあと胸がすっとする。
「Feel like」と同じく、軽快なメロディーに思わず身体が揺れるような、アルバムの中で私が最も好きな楽曲である。
8曲目の「Nawe,Nawe」は洋画の日本語版主題歌となった楽曲だ。
正直、この楽曲を初めて聴いた時は、本当にドロスの楽曲なのか、と一瞬戸惑った。
歌い出しの川上洋平の声が、普段と違うように思えて、映画の世界に迷い込んでしまったかのような錯覚を覚える。
ストリングスによる壮大なメロディー、サビの高音が耳に残る楽曲だ。
9曲目は前アルバム「ALXD」の中に収録されていた曲の完成版、「Buzz off!」。
CMにも使用されている。
早口な英語詞に捲し立てられるようで、ゴリゴリのギターが良い。
そして、歌詞のほとんどは英語詞だが、とにかく尖っていて、格好いい。
そんなこと言っちゃっていいの?!と心配になるくらいだが、スカッとするからいいか、と思ってしまう。
全体が針を刺すような尖った歌詞なので、和訳が気になる方はぜひ歌詞カードを見てほしい。
10曲目の「クソッタレな貴様らへ」はコアなファンに向けた、ハチャメチャに遊んでいる楽曲だ。
この楽曲は、[Champagne]時代から[Alexandros]になるまで、そしてこれからのバンドのことを物凄くリアルに、直接的に歌詞にしている。
なので、この曲の歌詞の和訳を読めば、ドロスの歴史が、歩みがわかるのだ。
過去の楽曲のタイトルが歌詞に組み込まれていたり、過去のフレーズが登場したり、ファンにとっては堪らない一曲となっている。

《I’m gonna write many songs
Even the grammar is wrong and nothing is better than being
on the stage and shout out loud
(たくさん曲を書いてやる
文法的に間違っていても知るか
ステージでがなり倒す以上に最高なものはない) 》

英語詞の楽曲を持つバンドが必ずぶち当たる、”こいつらの英語詞はクソだ“ という批判に真っ向から言い返すこのフレーズが、個人的にはかなりスカッとした。
彼らはこういうバンドだ。
楽曲も生き様もロックで格好いい。
11曲目は、こちらもドラマのタイアップ曲である「Swan」。
こちらは一般的なドロスのイメージに近い、ポップな曲だ。
「クソッタレ…」のような楽曲で、ライトなドロスのリスナーの度肝を抜いておきながら、「Swan」でポップな落ち着いたメロディーを作り上げる。
彼らのジャンルに拘らない幅広さと、曲を作る川上洋平の多才さを表していて、驚かされた。
12曲目は「I want u to love me」。
この楽曲は、他の楽曲に比べると少し目劣りしてしまうが、アルバムの中で、終盤への流れを作る役割を担っている。
他が個性が強すぎるので、目立つことはないが、アルバム通して聴くと、ラストに向けて盛り上がるような構成になっていることがよくわかる。
13曲目の「今まで君が泣いた分取り戻そう」は、映画の主題歌となった楽曲である。
個人的な印象としては、柔らかなラブソングといったところだろうか。
刺激的な歌詞が多いドロスだが、ガラッと雰囲気を変えたラブソングに、胸がぎゅっと締め付けられた。

アルバムを締めくくる14曲目は、「NEW WALL」。
ドロスらしい表現が溢れる応援歌だ。
優しく励ますのではなく、壁に立ち向かう勇気をくれる楽曲。
この楽曲はゲームのタイアップにもなっている。
ライブで、みんなでシンガロングするのにぴったりな曲で、会場の一体感に心が震える。
一気に聴いて、最後に心に残ったのは圧倒的満足感と、浮遊感。
音が心地良いという感覚を久々に味わった。
心臓を貫かれるような刺激的な楽曲たちを、この順番で並べてアルバムとして完成させた彼らに完敗だった。
楽曲ひとつひとつの好みはあれど、アルバムとしては最高の出来だ。

衝撃的な出会いから、ここまでドロスの音楽に惹かれるまでに長い月日が流れていた。
あの時彼らに、彼らの楽曲に出会えたことに、心から感謝している。
そんな彼らの新曲、「明日、また」を聴いた。
心が晴れやかになる、ドロスらしい応援歌だ。
爽やかなメロディーに、すとんと胸に落ちてくる歌詞が心に残る。

《明日、また
泣きじゃくる時が来たとして
怯まず笑えば
あなたは今まで以上に
強く在れる
鎧を持たずとして》

鎧を持たずとして、という表現が、個人的には印象的だった。
ありのままでいい、そう言われている気がして、前に進もうという気持ちになれる。
尖っていて、真っ直ぐで。
スタイリッシュで、泥臭くて。
最高に格好いい。

そんな音を奏で続ける彼らが、

《じいちゃんになっても歌おう
オムツ履いてもForever Young
(“クソッタレな貴様らへ”より) 》

と歌う限り、私はその音楽を追いかけ続けていきたい。

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