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2017年3月2日

SASA-SAN (35歳)
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ロックヒロインLiSAが更新する日本ロックシーンの未来

「Brave Freak Out」が示した時代を牽引するロック

「期待しかしないでよ!」
LiSAがファン(通称LiSAッ子)によく向ける言葉だ。
こんな台詞を言うことができるアーティストはなかなかいない。自分のハードルを常に高いところに設定し、ファンの期待を裏切ることなく自分自身を更新していく。

筆者はLiSAのファンになってから、まだ一年程度である。「Rising Hope」で彼女の虜になって以来、LiSAの楽曲、LIVE映像、パーソナルな部分をくまなく調べていった。そして、彼女がこれからの日本のロックシーンを塗り替えていくアイコンになるだろうという思いが確信に変わった。

「劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」の主題歌である「Catch the Moment」も日本のみならず海外でも大ヒットを記録し、今後の彼女の活動を語る上で欠かせない作品になることは間違いないだろう。
しかし、筆者はあえて前作「Brave Freak Out」がロックシーンに叩き付けた衝撃について語りたい。

2016年8月24日に発売された「Brave Freak Out」は一言で表すと、モンスターのような作品である。筆者のように90年代後半のヴィジュアル系をはじめとしたバンドブームを経験した世代にとっては、これ以上ない珠玉の一曲であると断言したい。なぜなら、日本のハードロックが積み上げてきた最高の要素を高濃度で凝縮した作品になっているからだ。

少々個人的な話になるが、筆者が音楽に夢中になるきっかけをくれたのはX JAPANである。ちょうど全盛期に彼らが作り上げたムーブメントの真っ只中で青春をすごし、その流れからヴィジュアル系のブームを経験してきた世代としては、LiSAの楽曲の製作陣の中に、その遺伝子が備わっていることを感じずにはいられない。誤解をおそれずに書くのなら、この曲はX(JAPAN)の名曲「Sadistic desire」へのリスペクトが込められていると筆者は考える。

イントロのドラムのフレーズ、二番の後に展開されるピアノの旋律をバックに歌い上げる耽美なメロディ。そして、惜しげもなく叩き付ける2バスの連打。どこを切り取っても90年代のあの勢いが鮮烈に蘇ってくるのだ。もちろん、製作陣が意図したかどうかは分からない。しかし、あの時代からの潮流が脈々と受け継がれ、それをLiSAという類い稀な歌唱力を手にした戦うロックヒロインが2017年の日本で拳を振り上げて最前線で戦っている事実。こんな素晴らしいことがあるだろうか。

もちろんサウンド面に関しては当時とは異なる。2000年代以降のパンク・ハードコア、ヘヴィ・ロック、エモなどの「ラウド」「ニューメタル」「エクストリームミュージック」などと呼ばれたハードロックの新しいアプローチの数々を、黄金比とも言えるバランスでミックスしてくるさじ加減は素晴らしいの一言に尽きる。

筆者が知る限り、ボーカルがメインのアニソンなどは、過激なバンドサウンドの音量を多少下げ、ボーカルを際立たせる作り方が多いと感じている。しかし、LiSAは全くの真逆を行く。
彼女の硬質で伸びのある歌声を活かすには、バンドサウンドの音圧も上げ、それに埋もれないようにボーカルを全力で突き抜けさせているのだ。正直、この十数年の間にこの過激なバンドサウンドに負けずに聴く者を圧倒する女性シンガーを聴いた記憶がない。

さらに新鮮さを感じさせるのは、歌詞の大半が日本語であるということである。
最近の日本には全編英詩で歌い上げるハードコア、エモのバンドが多くみられる。それは単純に、このジャンルの音楽のメロディには日本語の詩がのりにくいという点がある。しかし、LiSAとその製作陣はその壁をもいとも簡単に超えていく。随所に英詩も挟まるが、基本的には日本語の詩で完成されている。これはメロディに対しての言葉が、ハイセンスかつ耳馴染みの良いチョイスをしていることがうかがえる。
この点においても、他の日本の同系統のバンドと一線を画している。

メロディや展開がとてもキャッチーで馴染みやすいために見過ごしそうになるが、どこをとっても規格外なクオリティでこの楽曲が制作されたことがわかる。王道を進んでいるように見せかけ、実はオルタナティブ街道をバッサバサと切り拓いていく野心が垣間見えるのである。もし、まだLiSAを体験していないのであれば、まずは「Brave Freak Out」を手に取ってほしい。最高にぶっ飛ばされること間違いなしだ。

LiSAというアーティストは、シンガーソングライターではない。
彼女自身をロックアイコンとして捉え、交流のあるミュージシャン、敬愛するバンドとともに作品を作り上げていく。着たい服をオーダーメイドするように、チームで練られたハイクオリティの楽曲を身にまとい、抜群の歌唱力と魅惑的なパフォーマンスを武器にして楽曲の世界観を構築していく。

筆者もバンドでプロを目指していた経験があるのでよくわかる話なのだが、作詞・作曲・編曲の全てをできるアーティストが強いわけでない。一人のシンガーソングライター、一つのバンドが持つポテンシャルというのは実は限られている。そのポテンシャルを枯渇させずに維持するというのは極めて難しい。維持できずに長い間モチベーションを保ったまま活動できるアーティストはほんの一握りの存在である。

しかし、彼女のスタンスはここでもその真逆を行く。
表現したい言葉が、自分以上に上手く表現できる製作陣がいれば、彼らに任せる。自分自身ではわかっていないことを、側にいる理解者がよりよく表現できれば、その道を選ぶ。主観と客観を絶妙なバランスで維持しながら楽曲の制作を行っているのである。そのスタンスを取ることで、彼女は楽曲の一つ一つを最高の形に仕上げる術を身につけてきたのだ。多くのアーティストが自分自身との葛藤で潰れていくのとは対照的に、彼女は他者の意見や感性を、自身の感性と擦り合わせ、目標を確実に成し遂げるのである。

デビューから6年を迎える今年、彼女はこのフィールドで無邪気に遊びながら我々に驚きを仕掛けてくる。そのスタイルは既存のロックの在り方を全く違うアプローチで切り崩しにかかっているように見えるのだ。LIVEを「デート」、音源を「ラブレター」と称しファンを何よりも愛する彼女が次はどんなサプライズを用意してくるのか。

今、LiSAを見逃したら絶対に後悔するということだけは断言したい。
90年代のバンドブームを経験した世代も、これからロックに触れていこうと思っている若い世代もすべてをLiSAのパワーにぶっ飛ばされてしまうはずだ。

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