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2017年3月2日

ユリ (13歳)

若き日のあのドキドキを

KANA-BOONは私の希望

自分にとって、人生で一番ドキドキした瞬間っていつだろう。
きっと私にはそんなの決められない。KANA-BOONがくれるすべてにドキドキするから。

車の中ではビートルズとクイーン。部屋の隅の大きい棚にはぎゅうぎゅうのCDたち。ゴスペルとコーラスを習っていた母親。自称ギター弾ける父親。赤ちゃんの時、日本語を喋るより先に歌を歌っていたらしい兄。こんな一家に生まれたら、そりゃあ音楽好きになるのも納得だ。もちろん私も小さい頃から音楽が大好きだった。でも、バンドは全然好きじゃない。金髪の人が汗だくで、頭を振ってるイメージしかなかった。そんな自分の偏見を一瞬でぶち壊してくれた一曲が「結晶星」だった。その瞬間は3年たった今でも鮮明に覚えている。10歳の冬の日、いつも通りに音楽チャンネルを見ていた時、偶然流れた一曲が今後の人生を秒速で変えた。鮪さんの歌声が印象的だった。よく分からないけど、とにかく強く引き込まれる。言葉には言い表せないゾクゾクに襲われる。それまでの自分がどこかへ消えて、全く違う自分になった、そんな瞬間だった。

それからはもうバンドの虜になった。何時間も動画サイトで、知らないバンドの曲を聴き漁る日々。誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントもお年玉もCDに消えていく。そんな私が初めて買ってもらったCDはもちろんKANA-BOON。誕生日プレゼントで「DOPPEL」と「僕がCDを出したら」を2枚同時に買ってもらった。レジで会計を済ますともう嬉しくてたまらなくて、CDの入った袋をぶんぶん回しながら帰って、持ち手が引きちぎれたことをよく覚えている。家に帰ってからCDのフィルムを丁寧に取り、ごくりと息をのみながらCDのケースを開けた。CDが家の照明の光を反射して、キラキラと輝いている。もうこのCDは、この音楽は私のもの。そんな優越感もあいまって、CDが宝石みたいに見えた。キラキラと輝いている、自分だけの宝石。イヤホンを耳に突っ込み、宝石を震えかけの指先で手に取り、オーディオに入れて再生ボタンを押した。ハイハットが聞こえた。体にビリっと衝撃が走る。ギターが。ベースが。ドラムが。自分をあっという間に飲み込んでいく。なにこれ、凄い。そして歌声が響いた。ドキン。心をつかまれた。次の瞬間なる音にいちいちワクワクしてしまう。夢中でCDを聞き進めた。最高。これめっちゃかっこいい。大好き。ただただ夢中になった。気付けばプツンとCDの回転が止まっていた。全曲を聞き終えてイヤホンを外すと夢から覚めた瞬間のようにぼんやりとしていた。溜息が漏れて、でも心臓はずっと強く脈を刻み続けていて。CDは宝石。ケースは宝箱。誕生日プレゼントとその記憶は一生の宝物になった。

小5(11歳)の冬。生きていればそれなりに苦しみもある。家庭環境が悪化し、兄とうまくいかなくって絶賛病み期中だった。浴びせられる暴言のせいで自己嫌悪に陥ってしまい、カッターナイフに力を込めて、全てのストレスを自分で発散する日々。死ぬ以外に逃げる方法はないと思った。そんな時期に発売されたアルバム「TIME」。その中の一曲「愛にまみれて」。その歌詞のすべてが自分に突き刺さった。

『失くしてきたもの取り戻すような日々の中恐れているのはまた一人になること』

思わず号泣した。私は一人だと思い込んでいたから。でも違った。この音が聞こえる限り、私はきっと一人じゃない。どれだけ泣いても苦しんでも大丈夫な気がした。この人の声はきっと私を裏切らない。離さないでいてくれるんだ。もっと涙が溢れた。左腕に染みて痛かったのを覚えている。こんなに素敵なものがあるのに、死ねないよ。自分がアホらしく思えた。

小6(12歳)の冬。家庭環境は改善し、楽しい日々を送っていた。その中の1日にすごく思い出深い一日がある。2016年2月16日火曜日。アルバム「Origin」のフラゲ日であり、小学校最後の授業参観の日。自分の将来についてのプレゼンテーションの授業。緊張しながらも胸を張ってプレゼンテーションをした。「私の将来の夢はKANA-BOONのように、人に希望を与えられるバンドマンになることです!」その宣言を皮切りに、私はKANA-BOONとの出会いや凄さを手短に語った。KANA-BOONの画像をバーンと出して「これがKANA-BOONです!KANA-BOONです!!!今日アルバム出るので買ってください!」とKANA-BOONじゃないのに宣伝までしたっけ。私はいつしかKANA-BOONに強く憧れるようになっていた。生きる事に絶望しても、いつもKANA-BOONに支えられて生きてこれた。紛れもない自分の生きる希望。だから自分も誰かに希望を与えたい。だからバンドマンになりたい。その思いを一生懸命伝えた。帰宅し、ランドセルを床に投げつけて、お金をもらって走って「Origin」を買いに行った。2年前と変わらず袋を振り回しながら走って帰った。そして家に帰ってすぐOriginを聞いた。「オープンワールド」のギターの音。ドクン。あのドキドキは二度と忘れられない。とにかく夢中で聞き進めていく。そして「スタンドバイミー」。切なくて爽やかで苦しそうで愛おしくて。もう訳が分からなくなるほどの良曲。

『何もかも綺麗に見えていたあの頃の僕はもうここにはいない』

始まりから切なすぎる。前から雑誌のインタビューを読み漁ったからKANA-BOONの苦しみは分かっていた。思わずこちらも苦しくなるほど音楽にまっすぐなことが伝わってくる。

『目の前に君がいれば見えぬ明日だって怖くないさ』

本当だよ。KANA-BOONがいれば私、何にも怖くないよ。

『もう一度一緒に歌おう/僕はやれる君はやれる』

魔法みたい。何でもやれる気がする。

『飛び出せ世界スタンドバイミー/飛び出せ世界もう一度』

声が響いてる。このバンド、凄いよ。音は見えないのにこんなに私を泣かしてる。こんなに私を私にしてくれる。まっすぐな思いが私の心に伝わってくる。大好き。頑張れ。

そしてラストの曲「Origin」。明るくまっすぐにアルバムを〆る。

『君の姿に僕ら何度救われたか/だから次は僕の番だ』

KANA-BOONの姿に私は何度救われただろうか。私もKANA-BOONみたいになりたい。希望を与えたい。改めて強くそう思った。ギターが歪んで、バンッと曲は終わった。余韻に浸りこむ。最高傑作だなこれ。凄いよ。歌詞カードを読み直しているときに母親に呼ばれた。何かと思ったらライブの当選メールが来た。言葉にならない声で叫んで、ボロボロに泣いて喜んだ。これまでことごとく日程が合わず諦めてきたライブ。やっと叶うんだ。死んでもいいくらい幸せ。でも死んだらライブいけないな、それは嫌だ。翌日は先生や同級生に自慢しまくり、たくさん祝ってもらった。毎日KANA-BOONのことを考えて生きた。MVを見て軽く失神したこともあった。ライブ当日はうまく呼吸できなかった。開場はすごく広くてもはや非現実的空間。人混みの中開演を待っていた時にはもう幸せでたまらなかった。照明が落ちた瞬間湧き上がる悲鳴に近い歓声。ドキドキは最高潮。少しアニメーションがありそれを楽しんでいたら、音が。ギターの高らかな音が。思わず叫んだ。ドキドキはバクバクとビリビリに変わった。「オープンワールド」のイントロが聞こえるともう飛び跳ねていた、心も体も。CDでしか聞けなかった音が生で聞こえる。ベースとドラムが自分の骨まで響いてくる。KANA-BOONだ。KANA-BOONだ!!!もう、記憶はあまりない。MCとスタンドバイミーでボロ泣きしたことは覚えている。むさぼるように楽しんだ。限りある時間の中で最大に自分を爆発させた。ラストのOriginで飛んできたテープをキャッチして彼らが去っていくとき精一杯「ありがとう」と叫んだ。一生忘れられない最高の2時間。今でも思いだすだけでドキドキする。

私はたくさんのドキドキを体験してきた。感動、興奮、衝動。そのすべてが自分の記憶に強く刻み込まれると思う。そのドキドキは大人になっても色褪せず、永遠の思い出になる。音楽は目に見えないけどこんなにも人々を熱くさせる。あの日のドキドキを信じて、夢に向かって一生懸命生きていきたい。

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