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街から街へとRound A Ground

「Round A Ground 2017」を駆け抜けたSKY-HIへ

休日にも関わらず妙に早く目が覚めてしまって、寝ぼけた頭で今日のこれからを想像した。やはりこの街のライブハウスにSKY-HIが来るらしい。待ち遠しかったような、出来れば終わって欲しくないような、複雑な思いで支度を済ませいつもの駅でいつもの電車に乗り、平日なら少しだけ憂鬱な気分になっていた駅で降りる。

良くも悪くも何年も通い慣れた道を歩き、ソワソワした落ち着かない気持ちをどうにか抑えてライブハウスに到着する。いや、やっぱり実感が沸かない。柄にもなく会場限定のツアーグッズを2つ購入して、1つは保存用、とニヤけてしまうのも待ちに待ちすぎた公演だからなのかもしれない。

終わってみて思うことは、一生忘れないであろう2時間半だったということで、大袈裟だと思われようが、年間100本近くあるうちの1公演であろうが、私にとってはきっとずっと忘れられない大事な大事な時間だった。

今回の”Round A Ground 2017″というツアーは、SKY-HIとDJ Jr.の2人だけのステージで、且つ各公演対バンゲストがあるライブハウスツアー。2016年の秋から冬にかけて廻っていたこのツアーの2017年版は昨年の千秋楽公演に引き続いて”Round22″から始まり、12月12日、SKY-HIの31歳の誕生日、豊洲PITでのファイナル公演で “Round46″を迎えた。どうやらこの先2、3年かけてRound100まで続くらしい。今年は国内のライブハウスツアーに加え、ワールドツアーと学園祭ツアーも並行して行われ、一体SKY-HIはどんな時間軸を生きていたのだろうかと少し怖くなってしまうほど、日本に、そして世界に音楽を手渡してくれたのだと思う。到底想像も付かないほど綿密に作り込まれた最高のエンターテイメントショーを、メッセージを手渡してくれるホールツアーとは違い、このライブハウスツアーを、本人は
“部屋で作っている音楽をそのまま持ってきた、いわばここは俺の部屋”
だと例えていた。衣装もSKY-HIのライブでよく見かけるスーツではなく、いい意味でダラっとした自前の”部屋着”らしい。それはそれでコンセプトが徹底していて、やはりそこにもSKY-HIらしさを感じてしまった。

対バンアーティストのライブが終わり、DJ Jr.からSKY-HIの登場を告げるSEが鳴り響く。
Touch The Sky feat. Lupe Fiasco / Kanye West の中の1フレーズ”I’m,I’m sky high!”が聴こえて、ああ、SKY-HIのライブが始まるのだ、と理解する。

1曲目は今年1月にリリースされたアルバム『OLIVE』から、『リインカーネーション』。本人がステージに出るその寸前に、聴き覚えのある音が流れる。今年3月、新潟を皮切りに5月の日本武道館2days公演まで続いたホールツアー”WELIVE”でラストに歌われたこの曲から始まるというニクい演出は、ごくごく自然に、あの武道館公演の最後の最後、SKY-HIがステージセットに向かい深々と頭を下げていた光景を思い出させる。ツアーの趣旨は違えど、確かにそこからの地続きのライブなのだと感じた。

「ほら いま僕は君に会いに来たんだ 君が 泣いた世界を壊しに来たんだ ほら 涙を拭いたらこの手を掴むんだ 君が 君が 僕を呼んだんだ」/ リインカーネーション

やっと、やっと、この街にライブをしに来てくれた嬉しさはどう表現したらいいのか分からず、暫し棒立ちしてしまう瞬間すらあって、”会いに来たんだ”と歌われて、きっと同じことを思った人も少なくないであろう、”この街にも歌いに来てくれたんだ”と噛みしめる幸せな違和感は、結局ライブが終わる最後まで取れなかった。

まだフワフワと浮かんでいるような気持ちのまま始まったのはSKY-HIのメジャーデビュー曲『愛ブルーム』。初めてこの曲を聴いたのはいつだったのだろうか。そのまま『Gemstone』『Seaside Bound』へと続いて、今ツアーを説明するMCを挟み、SKY-HIはステージ下手側に置かれたピアノへ移動する。

そこで歌われたピアノでの弾き語り曲の中でも『Over the Moon』という曲は私にとって、人生観すら変えられた1曲で、様々なライブで聴くたびにその深みが更に増していく。

「見上げてみりゃ 雲間から月が笑う 僕の心の 全てを見透かす様に つい思わず 僕もつられて笑う 二年越しの今日を 迎えに行こうか」 / Over the Moon

日常レベルで腑に落ちないことや嫌になることは誰しもあって、そんな時にその気持ちに無理やり蓋をするのではない。そんな日々を、出来事を、”しょうがない”と受け入れてみる。受け入れた先に、何か道が拓けるような。本当の”ハッピー”って、きっと、そういうことらしい。そんなことを考えながらふと見上げれば天井には大きなミラーボール。照明にキラキラと照らされたミラーボールはまるで月のようで、一瞬SKY-HIがそれを指差したような気がする。

弾き語りでの曲が終わりMCを挟む。このツアーはとにかくフロアとの距離が近い。どこから来たのか、誰と来ているのか、好きな曲は何か、とにかくライブを観に来たファンと会話をする。そのユルさがこのライブハウスツアーならではの温かい空気を生み出すのだろうか。私はSKY-HIがこの土地の名前を何度呼ぶのか、気になってカウントし始めたものの、途中でその多さに嬉しくなってやめた。

“とことんラップするぜ”
その一言から始まるラップメドレーは、日本語ラップ曲とのマッシュアップも織り交ぜ、SKY-HIの魅力を存分に味わえる、堪らない瞬間の連続だった。最高潮に盛り上がりながらも、これまでの彼の軌跡を脳内で辿り、10年以上止まらずに走り続けてきた彼の生き様をまじまじと実感し、これからのSKY-HIの進む道を想像して、その熱量に応える。初めてライブを観たときと変わらない、だが変化し続けるSKY-HIのラップは溜息が出るほどにスキルフルで至高なのだ。
10分は優に超えるほどの時間だっただろうか、バチバチのラップメドレーを終え、MCを挟む。兎にも角にも珍しくMCが多いツアーだ。

SKY-HIはギターを持ち、『Double Down』『Tumbler』で会場全体を煽り、ボルテージをここへ来てこれでもかと上げ続ける。ラップ、ピアノ、ギター、と、忙しなく楽器を変えるこのミュージシャンは一体何なのだろうか、息つく暇もない。

気付けば『ナナイロホリデー』のイントロが流れ、このライブの終わりが迫っていることを察する。
“平日って、辛いことが多いイメージがある代名詞だけど、でも休日にこうやって楽しみにしていたライブは現実逃避でも何でもない、これは紛れもなく現実だ。―せっかく生きてるんだから少しでも嫌なことが減って、少しでも楽しいことが増えればいい、俺はそのきっかけになるために生きてる。”

“夢の中を超える現実を一緒に作りましょう”

そんな言葉だったような気がする。おそらく年間100本以上のライブをする彼が歌う『ナナイロホリデー』を聴きながら、ふととあるバンドのボーカルが活動休止前のライブで言っていた言葉を、思い出していた。
“良いと思ったバンドやアーティストのライブは、観たいと思った時に観なきゃね。この先いつでも観られるなんて保証は無いんだよ”
SKY-HIは年中リリースやツアーやライブを重ねているからか、いつだってこのライブを観られると思っていた。だけどそれは決して当たり前なことでは無くて、明日自分が何事もなく生活していける保証だって、好きなときに音楽を聴ける環境への保証だってない。だがそこにネガティブな思いは無くて、だからこそ今日のライブの2時間半を、その1曲の数分を、大切に大切に噛み締めたいと思った。
フロア後方の少し高くなった位置から観ていると、キラキラと色とりどりの照明に照らされる会場が、SKY-HIが、左右にヒラヒラと揺れるオーディエンスの手が、大きなミラーボールが、とてつもなく美しかった。夢見心地だと錯覚してしまいそうなこの空間は、だけどやっぱり紛れもなく現実だ。

そんな幸せな気持ちのまま『クロノグラフ』では”出会えて嬉しかったからこそ、別れを愛する曲を歌いたいと思って持ってきた”と、ピアノを弾きながら歌い、『Marble』へ続く。「We got it, black, white, yellow, red and blue…」そこから続くフレーズを少し歌ったところで、ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
“君が君と違う周りの誰かを少しでも愛せるように、自分の中にいる嫌いな自分を少しでも愛せるように、まずは俺から、君を丸ごと愛せる曲を歌います”
その言葉を聞いて、じんわりと心が温かくなった。毎日毎日、こちらに非があるとは微塵も思っていないことに頭を下げて、ゆとり世代がどうとか、最近の若者はどうだとか、耳が痛くなる話を聞かされ、けれど気付けば自分にも後輩が増えてもう新人だなんて言ってられない。愛想良く振舞っていれば大抵のことは上手く乗り切る術も身に付けた。そんな自分は、子どもの頃想像していたかっこいい大人とは掛け離れていて悔しい。でもそんな自分を少しでも愛せるように、なんて言われたら、こんな些細なことだけれど、自分の中にいる嫌いな自分、思い描いていた大人像から今は少し脱線してしまっている自分だって、たまには褒めてあげてもいいのかもしれないと思った。そこからはじめてみようと思った。
この曲を実際にライブで聴くまで、なんて優しくて壮大な曲なんだろうと感じていた。そこには儚さすらあって、上手く例えることが出来ずもどかしいが、消えてしまわないように、大切に聴いていた。ライブで聴くこの曲は、秒を追うごとに力強さを増していって、それは狂気にも感じられるほどで、何というか、圧倒されてしまった。きっとライブを重ねる度に、そして海外でこの曲を歌う度に、SKY-HIが今この歌を歌う意味が、込められた思いが、その街の人に届いていったのではないだろうか。

ライブが終わり、その余韻に浸っているとあっという間に休日が終わり、いつもと何も変わらない月曜日がやってきた。だが、憂鬱になりそうなこの駅も、通勤路も、なんだか少しだけ景色が変わって見える気がする。自分の気の持ちようなのかもしれないが、SKY-HIのライブを観たあとの現実は、彼が言っていたのは、きっとこういうことなのかもしれない。嬉しかったり落ち込んだり色々な現実を積み重ねて、その現実の中に、ヒリヒリするようなスパイスの効いた日常が存在している。

そういえば私が初めてSKY-HIを観た心斎橋のクラブではDJ Jr.と2人だけのライブで、ツアーの日程を調べて初めて行ったライブハウスツアーではダンサーと共に、その次に行ったツアーではフルバンドを率いていて、今や毎年、バンドメンバーとダンサー、総勢十数名と共にツアーを廻っている。ファンからすればSKY-HIは最高で唯一無二のフロントマンだと思うし、そんなSKY-HIがこうして毎年、小さなキャパシティのライブハウスをDJと2人で巡るツアーをして、まだ訪れたことのない街へ、ひとつひとつピースを埋めるように音楽を手渡していく。その過程を経て、また春からは全国を巡るホールツアーをする。

と、ああでもないこうでもない、文字を打っては消し、伝えたい言葉が上手く表現できずにSNSを開けば、『2018年4月21日、22日、幕張メッセ2Days公演決定!』このワクワクとした現実は、たまにキリキリと心が痛んでは、何もかも嫌になる現実は、なんて楽しいんだろう。

“街から街へとRound A Ground”

この”Round A Ground”ツアーを駆け抜けたSKY-HIへ、これからのSKY-HIへ、リスペクトと精一杯のありがとうを込めて。

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