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THE BACK HORNという希望

生まれて初めての感情

私がTHE BACK HORNに出会ったのは高校2年生の時。高校生という時期は一番人生で楽しい、まさに青春。と言う人は結構いると思う。
しかし、私はそうとは思えなかった。毎日が退屈で仕方なかった。毎日を生きたいとは思わなかったが、死にたいとも思わなかった。
私は変わっている人間の一種だった。
陰口を叩かれることはほぼ毎日だった。
でもそれが私の人生なんだな、これからも一生。陰口を叩かれても、何とも思わず、のらりくらりと生きて、いずれ死ぬ。

ずっとそう思ってきた。

この頃から音楽を聴くことが好きだった私は、Twitterというインターネットツールで、私と同じジャンルの音楽が好きな人達とその音楽を共有していた。唯一、私が生きている中で一番楽しみに生きていた瞬間だ。
そんな時に、私と同じ歳の女の子がTHE BACK HORNについて語っていた。それを見て少し興味を持った私は彼等の楽曲を動画サイトで投稿されている分だけじっくりと見て、聴いた。率直に感想を述べれば「普通にカッコイイ」。その時はただそれだけの感情でしかなかった。

それから後日のことだった。その日は天候が大雨で酷かった。その日の学校の帰りは家族に車で迎えに来て貰い、家まで帰っていた。車の中で呆けていた時に、ふとあるフレーズが脳裏をよぎり、焼き付いて離れなくなっていた。
「何処までも行けよ 顔をあげて ありのまま何もかも輝くだろう 今はまだ闇に震えていても 笑いあえる日がくる」

戦う君よ/THE BACK HORN
気付くと、私は家族に勉強の参考書を買いたいから、なんて適当にも程があるウソをついて本屋に寄ってもらい、駆け込んで彼等のアルバムを買っていた。この時の私にはきっと何か凄い感情が宿っていたのかもしれない。
私は、今まで音楽を聴いていても、あまり歌詞に共感するようなことがなかった。歌詞に意味が無いバンドの曲を好んで聴いていたこともあったから、恐らくそれもあったのだろう。
しかし、彼等の音楽は違った。力強く歌を歌い、感情を訴えるボーカル、雄叫びのように弾き叫ぶようなギター、畳み掛けるように弾きながらもその中に感情が芽生えているようなベース、シンプルながらも確実にリスナーに伝わるドラム。
彼等の音楽はリアリティに富んでおり、それかつ様々な感情が飛び交っている。
喜び、疑問、苛立ち、葛藤、悲壮、鬱屈……
その一曲一曲どれもが違うのだ。違うからこそ、いい意味で酷いくらいに心に刺さってしまう。私はとんでもない人達に出会ってしまった、と心が震えた。

私達は日々を生きている。普通、人間は生きていて毎日幸せに溢れているということはまず無いだろう。時には自分に苦悩して病み、時には理不尽な出来事に腹を立てる。毎日を生きていて、何が起こるかなんて誰も分からないのだ。疑問だらけなのだ。
それは彼等も同じなのだろう。自分達が生きている日々に対して疑問を抱き、怒りを覚え、悲しんで。彼等はそれを歌にして叫び続けてきたのだと。

高校を卒業して、私は特に将来への目標がなく、就職の道に進んだ。働いて、お金を貰って、自分だけの人生を歩んで行こう。そう考えていた。
最初に就いた職業では、大変だが楽しさもあり、頑張っていけそうだと思っていた。しかし、仕事にも慣れて数ヶ月が経とうとしていた時、仕事の人に何気無く言われた言葉に私は深く傷ついて、自分を見出せなくなってしまった。自分なりに頑張っていたのに、それを全て否定されたような感じだった。「自分は何の為に生きているのだろう?」…そんなことばかり考え、夜中に何度も涙を零した。
結局その職場は辞めてしまった。辞めてしまった後でも私は押し潰されそうになりながら辛うじて生きていた。しかし、致命的なことが起きた。

「私って、何が好きだったんだっけ?」

頭の中が空っぽになっていた。真っ白で空白。何も無い。
自分が今まで何の音楽を聴いていたかすらも分からなくなっていた。それは一時的なものだと自分に言い聞かせて、無理に色々な音楽を聴いてしまうこともあったが、返って吐きそうになって、死ぬんじゃないかと思った。今思えば、軽くうつ病になりかけていたのかもしれない。

音楽に触れずに生きて数週間経った頃、何気無く自分の車の中で音楽を聴いた。
赤信号。青になるのを待っていた時に流れたのは、あの時、衝撃的な出会いをした彼等の曲だった。
「線路の冷たさに触れて初めて 自分の「体温」を感じた 必死で燃えている赤い命が 「生きていたい」と確かに告げた」

生命線/THE BACK HORN
この曲は彼等の名盤中の名盤と言っても過言ではない「イキルサイノウ」というアルバムに収録されている曲の一つ、そして私の好きなフレーズの一つである。
何も無かった、抜け殻の様だった自分の中に一筋の光が見えた気がした。
私は今まで何をやってたんだろうか。馬鹿じゃないのか。のらりくらり生きていければ。なんて思っていた自分にだんだん腹が立った。涙した。

この時、私は初めてこう思った。

「死にたくない、生きたい。」

生まれて初めての感情だった。自分の感じたことの無いエネルギーが産声を上げた。

それから私は少しだけ生まれ変われた気がした。私は戦った。昔の自分とさよならをする為に。
もう一度社会に降り立つ為、新たなスタートを切った。死に物狂いで毎日動き回った。
当然、一筋縄では行かなかったが、私はめげずに進んだ。
そして三度目の正直、私は再び社会を動かす一人になれたのだ。
もう二度と、諦めたりはしない。途中で悔やんだり、死にたくなったり思うこともあるだろうけれど、それでも生きていくのみだと。私はそう心に決めた。
そして現在。
新しい環境に少しずつ慣れていきながら、なんとか二つの足で立って生きている。時には折れそうになるけれど、私には強い味方がいる。

THE BACK HORNという存在。あの時出会っていなければ、彼等の音楽に触れていなかったら、私という人間は存在していなかっただろう。

彼等が生きることを、戦っていくことを、教えてくれた。

夜を越えて。
朝を越えて。
闇を抱いて。
日々を越えて。

私は生きていく。彼等の音楽と共に。これからもずっと。

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