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読ませる音楽・back number

清水依与吏の書く詞の魅力とは

back numberの楽曲に初めて触れたのは、昨年10月のことだった。
きっかけは所属する大学のサークルでの月例ライブ、何とは無しにback numberのコピーバンドを組んだことだった。
その時の私と言えば「back numberって、『高嶺の花子さん』とか、『花束』とか、キラキラしたJKが聴くバンドでしょ?」としか思っていなかった。
今の私がこの時まで遡って過去の私に会えるならば、こう言ってやりたい。
そんな偏見はさっさと捨てて、いいから早くback numberを聴け、と。
決めつけて敬遠していた時間でさえも惜しいと思うほどに、惚れ込んでしまったのだ。back numberの作り出す音楽に。

back numberへのイメージがぐるりとひっくり返ったのは、『助演女優症2』を聴いた瞬間だった。
コピーをする曲を聴いておこうと、CDショップで手に取ったのはインディーズ時代から数えて5枚目のアルバム、『シャンデリア』だった。
あったのだ、私とback numberとを結びつける赤い糸が、赤い糸となる曲が、そのアルバムの中に。
『助演女優症2』を聴いた私はまず、back numberってこんな重くてドロっとした曲も書くんだ、と驚いた。
そして私がこんなにも彼らの楽曲にずぶずぶと浸かってしまったのは、この曲の歌詞のせいである。

“頭の中で浴びせた本音は キスひとつで溶ける脆さで”
頭の中では分かっている。あなたとさよならしなくては、と。でもそんな考えは、あなたと会えば一回のキスでかき消される。

“私のものにならないのに どうしてまたお気に入りの服で あなたを出迎えているの?”
帰る場所のある人、私のものには絶対にならない。なのになぜ心が踊るのか、お気に入りの服など選んでしまうのか分からない。自分でも分からないのだ。
さらに、私は出迎えるしかない立場なのだ。私からは会いに行けない、会いたいと言えない。会えるのはあなたが会いに来てくれる時だけ、あなたが会いたいと言う時だけ。身勝手な男。
…と、1番だけでも大変味わい深い歌詞なのだ。この曲に対して味わい深いなどと言ってしまうのは安っぽくもあるが、それほどにこの1曲だけにたくさんの楽しみ方があるのだ。

そしてもう一つ言っておきたいのは、この分かっているけどやめられない、頭の中で考えていることと心の動きとがちぐはぐな女心の絶妙さを、その輪郭を、なぜ清水依与吏という男はこんなにも正確になぞって、言葉で、音楽で表現できるのか。

会いたいという気持ちや誰かを大好きな気持ちを、そのま会いたい!大好き!とストレートに表現してしまうのも悪くはない。
しかし私が見てみたいのは、いかに直接的な表現を使わず、聴き手に想像させて楽しませる歌詞のあり方なのだ。
それをこのバンドは、私の理想通りに叶えてしまった。
惚れるなという方が無理。

上に述べた歌詞への解釈は完全に私自身の独断によるものだが、他の人が聴けばまた違った読み方になるのかもしれない。
ある気持ちをあえて遠回りで表現した楽曲のいい所は、そこだ。
聴き手に解釈が委ねられているのだ。
聴いてもらうことによって完成する芸術作品なのだ。

私のback numberへの愛はまだまだ語り尽くせていない。
バンドミュージックを通じた芸術鑑賞、やってみたい人は是非back numberの曲をなるべくたくさん聞いてほしい。

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