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2017年3月6日

サトC (29歳)

ハルカトミユキの夜明けの月に真の共感を得る

ひとりぼっちのあなたへ

ハルカトミユキの音楽は目まぐるしく動く時代に取り残されたひとりぼっちのためにある。

では、時代はどう変わってきたのかということであるが、ハルカトミユキがメジャーデビューをした2013年頃から今に至るまで、メッセージ性の強い曲が求められなくなってきた。それはSNSの普及により、個人が世界に向けてメッセージを手軽に発信できる時代となったからではないだろうか。その結果、音楽が社会への不満や憤りを代弁しなくても良くなってしまったのだ。歌詞よりも音そのものを楽しむ要素が以前よりも増した。歌詞についても比較的平易な言葉が増えたように感じる。

そんな時代にハルカトミユキは現れた。簡単にプロフィールを書いておく。
ギターヴォーカルの詩人ハルカと、キーボードとコーラス担当の奇人ミユキの2人組である。僕が暴言を言ってるわけではなく公式プロフィールにも載っているものである。

ひねくれている僕にとって、そう易々と流行りのノリのいい曲や「これ分かるー!」みたいな共感に安易に乗っかってたまるものか、と思って音楽を聴いていた。僕は何と戦っているのだろうか。お手軽に共感を得られる時代だからこそ、そう易々と音楽に共感したくなかったのだ。そうした日々を送っていたなかで、ハルカトミユキの音楽性と言葉に惚れ込み、メジャーデビュー後くらいから熱心に聴き続けてきた。そして、2016年、”夜明けの月”と出会う。そこで僕は真の意味での共感を得たのだ。

ハルカトミユキの音楽はひねくれている。それは歌詞を担当しているハルカの性格によるものである。本人がコメントやインタビューで言っているので書いても怒られないだろう(大丈夫だよね?)。インディーズ時代から突き刺さるような歌詞の曲が多かったが、メジャーデビュー後も様々なアプローチの曲が僕らのもとへ届けられた。 なかには初めて聴いた時に仰け反ってしまうような曲調もあったりした。

“夜明けの月”は2016年にリリースされた2ndアルバムの収録曲である。このアルバムはハルカトミユキの”今”を切り取ったもので、全て新録の曲たちが詰まっていた。そんなアルバムの最後の曲が”夜明けの月”である。

「君に今何を言える?
一晩中考えてた
色の無い部屋で」

そんな歌い出しである。
ひねくれ続けてきたハルカトミユキの中であまりにもストレートで普遍的なバラードナンバーである。君のためなら自分の犠牲もいとわないという強い想いが言葉になり、熱量がとても高い曲である。それでもミユキの意表を突くようなシンセもないし、普段は尖ってるハルカの歌詞も素直な言葉が並んでいる、これがいかに驚くべきことか。3年前に「赤や緑のハラワタ」なんて歌ってた人たちだ。

先にも書いた通りハルカトミユキはひねくれもので、多くの曲がナイフのような鋭さを持っている。しかし、あまりにもストレートなこの曲がどんな鋭さを持った今までの曲たちよりも深く僕に突き刺さったのだ。
 

僕がこの曲の中で最も胸を打たれた歌詞を引用したい。

「太陽になれないそんな僕だけど
君の足元を照らす月になろう」

少し身の上話になってしまうが、僕はとてもイケていないコンプレックスの塊みたいな高校生活を過ごした。高校時代の僕がハルカトミユキを聴いたら、涙が親友となっていただろう。そして、少なくとも年齢は大人になった僕はそのコンプレックスを解消したつもりであったが、学生時代に好きになった音楽や初恋の人を忘れられないように、完全に払拭することはできずに、たまにひょっこり心の奥底から顔を出す。
そんな時に僕は人を幸せにできるのだろうか、と考えてしまう。ダメな僕は家族にも、友達にも、彼女にも支えられてばかりである。

自分が何かを照らしてあげられるような存在にはなれない、そう思って生きてきた。しかし”夜明けの月”を聴いて、太陽になれなくても暗い夜道を照らす月になる、そう歌われた時に、僕の中で溜飲が下がったのだ。
恥ずかしいほど強烈な「共感」であった。自分自身が丸ごと肯定されたような気持ちにすらなった。
 

2016年9月24日、ハルカトミユキは自身2回目となる日比谷野外音楽堂公演を行った。

「幸せでいっぱいの時は、歌なんて忘れてください。つらくてしかたない時は思い出してください。夜明けの月みたいにずっとそこにいます」

というMCからこの”夜明けの月”は披露された。
涙を止めることは、できなかった。その瞬間を表すのに「感動」という言葉すら生易しい。おこがましいようだが「僕のために歌ってくれてる」とさえ思った。いや、間違いなく観客全員に向けて歌っていたのだが。
しかし音楽が耳に入り脳で理解する、その過程でその音楽はその人のための音楽となるのではないだろうか。仮に僕が全ての知り合いや家族から愛想を尽くされてしまったとしても、ハルカトミユキの音楽が最期まで寄り添ってくれる。僕にとってそんな存在である、そうなりたくはないが。

LIVEとは音楽を全身で味わうとともに、生の喜びを味わう場所でもある。僕は嬉しかった、こんな曲に出会えて、こんな場所で聴くことができて。同時に、とても悔しかった、こんな素敵な音楽が鳴っている空間に、空席があったことが。

彼女たちは2017年9月2日、再び野音のステージに立つ。去年より1人でも多くハルカトミユキの音楽が届きますように、響きますように。

これを読んで初めてハルカトミユキという名前を知った方、是非一度聴いてみて欲しい。できれば気になって欲しい。できれば好きになって欲しい。そして、できれば一緒に野音でハルカトミユキの音楽を味わいませんか?

ひとりぼっちのあなたへ。

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