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2017年3月6日

おとぎ (23歳)
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吉澤嘉代子が紡ぐ音楽という名の魔法

魔女に出逢える現代、捨てたもんじゃない。

《恋がしたい/恋がしたい/美少女になれたなら》

 2014年4月。私は、一人の魔女に出逢った。音楽を紡ぎ、聴き手の心に魔法をかける魔女に。彼女の名は吉澤嘉代子。“ただいま魔女修行中。”というキャッチコピーで活動するシンガーソングライターらしい。私には『魔女の宅急便』を見て、魔女に対して憧れや変身願望を抱いた幼少期の記憶がある。それゆえ、惹かれざるを得なかった。『美少女』には、ベースにチャットモンチーの福岡晃子が参加していた。学生時代の思い出=チャットモンチー、好きなベーシスト=福岡晃子だった私にとって、最高の組み合わせだった。ポップでキャッチーなメロディーと、レトロでキュートなPVの世界観。そして、歌謡曲歌手のようなその歌声。「恋がしたい」と願う平凡な少女と、そんな彼女の理想である“美少女”。一人二役を演じる吉澤嘉代子の姿もまた可愛らしく、全てが魅力的だった。

《鏡よ鏡/うつくしいって何ですか/うつりゆく価値観/だれが決めているの》

 ステレオタイプな考え方に対し、生まれる疑問。キャッチーなメロディーの中に放り込まれたそのフレーズは、良い意味で私にとって衝撃だった。また、《恋がしたい/恋がしたい/キスだけで生まれ変われるような》という少女の願いが、《恋がしたい/恋がしたい/人の道外れてしまうような》というドロドロとした願いに形を変える。そして最終的には《恋がしたい/恋がしたい/これまでの過去を許せるような》という切実な願いに辿り着く。純粋な少女が持つ、ほんの少し歪んだ感情。それはとてもリアルで、ボディブローを食らった気分であった。男性諸君、女子は“可愛い”だけではないのだ。

 彼女を知るきっかけとなった記事を読んだ4日後、私は渋谷のタワーレコードへと足を運んだ。ミニアルバム『変身少女』の予約イベントに参加するためであった。イベントの内容は、ミニライブとサイン会。朝早く出向いた私は、ステージの最前から二列目をキープ。二列目と言っても、ステージまで1メートルもない。近い。近過ぎる。ミニライブが始まる時間になり、魔女っ子アニメのBGMをバックに姿を見せた彼女。人混みをかき分け、ステージの上へ。作り込まれた世界観に、私は脱帽した。『美少女』のPVと同じ赤いワンピースに、白のアコギがよく映えていた。眩しかった。ステージの上で跳んだり跳ねたり、客席に乱入して歌ったりと、自由奔放なパフォーマンス。一方で、MCで見せた姿は“大勢の親戚を前に恥ずかしがる小さな女の子”のようだった。話を聞くと、幼い頃からおしゃべりが苦手らしい。また、学校に行けなかった時代があったことを知った。そして、実家の屋上にあった掘っ立て小屋で本を読んだり、箒にまたがってみたり、飼い犬に話しかけたりしていたという。そんな時代を、彼女は“魔女修行”と表現していた。“ただいま魔女修行。”というキャッチコピーの裏に隠れたエピソードを知り、ずぶりずぶりと彼女に惹かれていった。ミニライブ後のサイン会では、ゆっくりとお話ができた。地元が近いこと、誕生日が同じこと、たくさん話した。心なしか、自信のない小さな声に耳を傾けながら。堂々としたパフォーマンスも魅力的だが、おしゃべりの時間がきた時の彼女も一層魅力的だ。「自分の気持ちを、今、目の前にいる人々に伝えよう。」そんな心情が、度々訪れる沈黙や震える声、表情や仕草に表れている。彼女のMCを聞いている時は、思わず合わせた両手を口元に当てている。まるで親のような気分である。

 彼女に出逢ったあの日から、今年で3年が経つ。時の流れは恐ろしい。私はこの3年で大人になった。中身はまだまだ子供だけれど、学生時代を経て、社会人に。様々な経験をし、辛い別れもあった。それでも、沢山の出逢いがあったこの3年間は、私にとってかけがえのない時間だった。今日までの時間を、吉澤嘉代子の音楽と共に過ごせたことが何より幸せだ。私は、彼女が紡ぐ(かける)音楽(魔法)に生かされている。それはきっと、この先も変わらない。吉澤嘉代子という名の魔女の成長を、私は見守り続けて行くつもりだ。

 魔女に出逢えた現代に、心からの拍手と感謝を。

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