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2017年3月6日

藤原 理希 (21歳)

あの日のロックンロール?

勘違いから始まった「ヒロトとマーシーと僕」

父親がよく音楽を車内でかけていた。自然と僕は音楽に興味を持っていった。車内音楽は父親の権限下だったがたまにわがままを言って流してもらっていたのは鈴木亜美と布袋寅泰。どうやってこの2アーティストを知ったのか分からない。物心ついたときには気に入っていた。

ある日の車内、父親が流していたある曲が気になった。
いつもなら何も思わず聞き流していたのに。
僕は少し勇気を出して「ちょっと戻していい?」と聞いた。
初めて父親の流している音楽に引っかかった。
了解を得て、戻してみた。

しかし気になったあの曲は見つからない。

「あれ?俺はなにを聞いてたんだ?」

そんな気持ちになりながら、トラック3に合わせた。

『シャララン…シャララン…シャララン…シャララン』

気になったあの曲ではないけどなんか楽しかった。
幼稚園児だった僕がブルーハーツに出会った瞬間だった。

『大変だ〜真実が〜イカサマと手を組んだ〜』
こんな刺激の強い歌い出しも「イカサマ」という言葉が分からなかったのでなにも思わずに口にしていた。

これを皮切りに僕はブルーハーツにのめり込む。
メッセージ性の強い歌詞。でもこのときの僕には関係ないただただ楽しい歌。

「ねぇ?ブルーハーツって知ってる?」

幼稚園で聞き込んだけど誰も知らなかった。

その頃「人にやさしく」というテレビドラマが始まった。主題歌はブルーハーツの「夢」
ドラマの中にはところどころでブルーハーツの曲が流れていた。
自分だけが知ってると思っていたブルーハーツがテレビでやっている。僕はニタニタした。
アイデンティティを初めて肌で感じた瞬間だった。

その熱は小学生になっても冷めない。
父親が当時住んでいた八王子の図書館でブルーハーツの「LIVE ALL SOLD OUT」を借りて来てくれた。
ブルーハーツを通して初めて触れるライブという空間。音だけではあるが十分に衝撃的だった。
次はハイロウズを借りてきてくれた。
ヒロトとマーシーが今現在やってるバンドなんだってことを知った。気に入って聴き込んだ。

僕はモノクロコピーをした歌詞カードを熟読した。たまに隠して学校に持って行って、授業中に読んだり、誰もいない教室の物入れに忍び込んで読んだ。

小学校の10分休みに音楽が聴けたらなぁ〜と思い、鼻歌を覚えた。
ブルーハーツやハイロウズをみんなに広めたいなぁ〜と思い、授業中にも歌うようになった。
班会議で「ミチキくんの鼻歌がうるさいです。」としょっちゅう怒られた。

歌詞を覚えるために熟読していたのだが気づいたらヒロトやマーシーの考え方が身体に染み付いていた。

ある日、大阪のおばあちゃん家に行ったとき。たまたま立ち寄った高槻駅前の百貨店のCD屋さんの入り口に「ハイロウズ解散!!」という文字が踊っていた。

「あー、解散しちゃうんだ。もうヒロトとマーシーの新しい曲、聴けないんだ。残念だなぁ〜。」
初めて好きなバンドの解散を経験した。

その後もブルーハーツとハイロウズを聴き続けた。

ある日のMステで「ヒロトとマーシーが新バンドを結成」と紹介されていた。
そこにはザ・クロマニヨンズとして同じステージに立つヒロトとマーシーがいた。

「やった!ついにヒロトとマーシーがバンドやり始める瞬間に立ち会えた!」

タリホーを聴いた。最高だった。
クロマニヨン・ストンプを聴いた。最高だった。
弾丸ロックを聴いた。最高だった。

みんなが全校集会に向かっていたとき。僕は誰もいないトイレで1人、鼻歌で踊っていた。
それが小学校4年生の話。

この年の終わり、僕は父親の転勤の都合上、八王子と別れを告げ、山梨の甲府に向かった。

時は流れて、中学校3年生。
相変わらず鼻歌のクセが抜けない。この日も教室でいつものようにブルーハーツの歌を口ずさんだ。
すると前の席のやつが振り返った。

「それ誰の歌だっけ?」

「ん?ブルーハーツってバンドの歌」

「だよな!なんで知ってんの?俺も好きなんだよ」

僕は初めて出会った。ブルーハーツが好きな人に。

『いつか会えるよ 同じ涙をこらえきれぬ友達と きっと会えるよ』

ブルーハーツの「街」が頭の中を流れた。

そこからそいつと友達になった。共通の知り合いもこの時期から僕らと一緒になって音楽にハマっていった。初めて音楽好きの仲間が2人出来た。

みんなでクロマニヨンズのライブに行こうという話になった。
どうやらクロマニヨンズは毎年のように甲府KAZOO HALLに来てるらしい。
このライブハウスは僕らの家から徒歩圏内だった。
徒歩圏内にクロマニヨンズ。徒歩圏内にヒロトとマーシー。

しかし僕は高校受験を控えていた。母親は怪我を心配して僕を止めた。
あまりに引き下がらない僕に
「じゃあ次のテストで校内20番以内とったらね!」と言った。
僕の普段の成績は60番から80番の間。無茶に等しかった。

テストの結果が配られた。初めて20番以内を取った。
僕は初めてテストの結果で喜んで、初めて友達と抱き合って喜んだ。

家に帰って結果を見せた。
しかし行かせてもらえる許可は降りなかった。初めて圧倒的な理不尽を感じた。

友達はチケット取りに挑戦したが、チケットの取り方を一般発売日に電話をするという方法しか知らなかったために取れなかった。

高校1年のとき。またクロマニヨンズが好きなやつに出会った。嬉しかった。
しかし距離を近づけたくてもクラスが違ったのであまり話す機会がなかった。

冬のスキー教室。たまたま彼と同じリフトに乗った。僕はシートベルトもないリフトに怯えながら、発売されたばかりのACE ROCKERの感想を2人で話し合った。このアルバムのツアーで甲府にまたクロマニヨンズが来ることを知っていた。
そのことをふと話題に出した。すると
「店頭販売で買ったチケットが1枚余ってるからあげるよ」と言われた。
リフトが一瞬、怖くなくなった。

こうして僕は
2012年3月30日。甲府CONVICTION。
クロマニヨンズを初めて観た。
人生初めてのライブハウスで。

お客さんの圧がかかって来た。父親から話は聞いていたがこんなにとは思っていなかった。揉みくちゃになりながらも、背が高いのが有利に働いた。

幕のかかったステージ。その中にメンバーのシルエットが見えた。
幕の中でジャンプをしたヒロトはまさに「LIVE ALL SOLD OUT」のジャケットそのままだった。

「オーライ、ロッケンロー!!」

幕が取れて現れた2人は終演まで、よく出来たマネキンにしか見えなかった。
だけどついにヒロトとマーシーに会えた。
僕が初めて彼らの音楽に触れてから述べ10年以上が経っていた。

お客さんはヒロトと一緒になって大声で歌っていた。こんなに大声で歌っても怒られない場所があるんだと思った。

僕は1番歌いにくかった「ゴー ゲバ ゴー」を口づさみながら自転車を漕いで帰った。

そこから毎年のようにクロマニヨンズをこの場所に観に行った。

高校2年のとき。中学のときの音楽好きの仲間たちと初めてバンドを組んだ。
田舎街特有の大きいイオンの中にあるスタジオに入った。学校の休み時間に走って玄関前にある公衆電話でスタジオを予約したり、たまたまクリスマスの日に行ったら、同級生の女の子たちに出くわして、恥ずかしい思いをしたりした。
初めて練習をしたのはブルーハーツの「終わらない歌」だった。
結局、その一曲すら完成せず本当に「終わらない歌」と化したのだが、どれも新鮮な体験だった。

同じく高校2年のとき。ヒロトとマーシーのインタビューを読んで、ロッキンオンジャパンに初めてハガキを送った。勉強をサボりながら、小さいハガキに収まるように丹精込めて書いた。
そうしたら後日、ロッキンオンから荷物が届いた。
そのハガキの内容が次号のロッキンオンジャパンに掲載されたらしいのだ。荷物は掲載された最新号のロッキンオンジャパンだった。
さらに後日、封筒が届いた。そこには懸賞品であったヒロトとマーシーのサインが入った写真が入っていた。
興奮のあまり何度も何度も見返した。
自分のやったことが初めて公に認められた瞬間だった。

その後、僕は大学進学と同時に東京に引っ越した。
 

ここまで長々と書いて来たのは、ヒロトとマーシーの音楽に出会ったからこそ生まれ、連鎖して行った僕の「初めて」を題材とした体験記だ。

2017年2月22日。甲府CONVICTION。
中学のときの音楽友達と観に行った。

2017年3月2日。戸田市文化会館。
リフトに一緒に乗った友達と観に行った。

そしてこの2回のライブを観たら、ヒロトとマーシーは今、「初めて」や「衝動」を歌い鳴らしていた。

『だから今すぐピート そのギブソンでピート ぶっこわしてくれ 僕の部屋』

この「ピート」や「光線銃」も音楽を聴いたときに感じる衝動を歌っているように僕は思えた。
しかもキャリアも30年を超えた54、5歳の人たちが歌っているのに初々しく感じる。

「おとなになるのは たいへんそうだな
はたらいてくのは たいへんそうだな」
(おれ今日バイク)

なんて言ったって、この歳で子供の視点から歌うことが出来るのだから。

ライブを観るとより顕著だ。クロマニヨンズは本当に楽しそうにしているのが1発で分かる。好きなものに対して突き進んでいる人たちがこの歳になってもあれだけ楽しそうにしているのを見るとなんだか希望みたいなものを与えられる。

幼稚園児の僕が聞こえたはずの『あの曲』から始まった物語。
僕はありがたい勘違いから始まった物語だとずっと思っていた。
でもそうじゃないかも。この間のライブを観て感じた。
僕があのとき聞いたのは『衝動』だったのかもしれない。

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