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2017年3月6日

鳥海 (35歳)
37
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真心ブラザーズ ライブレポート

中野から新国立競技場へ

 3月4日、毎年恒例の真心ブラザーズの中野サンプラザでのライブ。最初の何年かは年末開催、その後年始になり、今年は少し遅めの3月になったが、冬の中野は真心のホームグランドと言ってもいいだろう。ファンの中にはツアー等は行かないけれど、このライブは毎年行くという人も少なくないように思う。本人たちはそのあやふな記憶で「毎年、10年ぐらいと言ってる」と言っていたが、実に今年で12年連続の企画である。 
 開演となり、メンバーがぞろぞろとステージへ。例年だと、YO-KING以外のメンバーがまず登場し、一曲目のイントロでYO-KINGが登場、歌いだすという流れが多かったように思うが、今年はメンバー全員が最初から板につく。しかもYO-KINGは早々とギターを抱える。何かがいつもと違う。バンド全体からファンキーなサウンドが飛び出ると、おもむろに桜井がギターを下しハンドマイクに持ち替える。まさか一曲目から桜井がボーカルをとるのか、とびっくりしていたら、三段構造になっている上段に構えるマウンテンホーンズ(西岡、上石、首藤、宇田川)を一人ずつメンバー紹介していく。そして紹介された順にたっぷりソロを回していく。さすがだ。ここ最近では、ドラム伊藤大地、ベース岡部晴彦に真心の2人の4人バンド(Low Down Roulettes)での活動が増えていて、この日の10人編成(MB’s)でやる機会はレアと言えるかもしれない。その意味をバンドもファンも噛み締めるようなオープニングだ。 
 中段にはキーボードに奥野真哉、ドラムはビバさんこと須貝直人が足を骨折、入院中の為、ピンチヒッターの山口美代子、コーラスはおなじみうつみようこ。なんとも豪華である。この3人が急にいなくなってしまったら、日本のロックシーンは大変困ったことになってしまい、途方に暮れる人が続出するだろう。そのぐらい様々なバンドのサポートや、もちろん自身のバンドで年中大忙しのお三方だ。これは飽くまで主観だが、この日のMVPを敢えて決めるとするのならば、ドラムの山口になるだろう。ピンチヒッターであるにもかかわらず、その素晴らしいテクニックと、正確で力強いドラミングでこの豪華客船(MB’s)の一員として、なんだったら彼女が舵取りをしていると言っても差し支えないぐらいの安定感があった。全ての演奏が終わり、メンバーがステージを後にする際、YO-KINGが何やら山口に話し掛けていたが、それが労いの言葉であり、称賛の言葉であることは容易に想像できた。
 紹介も下段に降りてきて、ドラム山口との相性もぴったり、気合入りまくりの上野一郎のベースソロが終わり、真心の2人の紹介が済んだところでやっと一曲目の「BABY BABY BABY」に突入した頃には、今年も中野に来て良かった、と多くの人が思ったことだろう。「ループスライダー」「きみとぼく」とシングル曲を続けて、この日も絶好調であることを見せつけるMB’s。時折みせるYO-KINGのギターソロがかっこいい。この人は物凄くギターが上手いというタイプではないけれど、その程よく力の抜けた技法でとてもいい音を出す。声もそうなのだが、力を抜くことの強さ(彼の哲学のひとつでもあると思うのだが)、みたいなものをステージ上で表現、または皆に教えてくれているのかもしれない。
 MCを挟んで、桜井ボーカルの「メトロノーム」へ。まずマウンテンホーンズのみが演奏し、桜井が歌いだし、サビから全パートが加わるといった新しいアレンジだ。MCでは「ずっと現状維持、成長戦略はダメ」などといって笑いを取っていたが、しっかりと、名曲を新感覚で聴かせてくれる。
 ここでベース上野とドラム山口、真心2人のシンプルな4人編成になり(ここからはメンバーが出たり入ったりする)、桜井のつんざくギターで始まったのは去年行われたツアー(20年前に発表されたアルバムを曲順通り演奏するというもの)の流れで、アルバムGREAT ADVETUREから「アーカイビズム」。ツアーに行かなかった、または行けなかったファンにはご褒美と言えるだろう。まるでさっきとは違うバンドなのではないかと思うくらい、うねって転がってスピード感を増していく。そこに自分の凄さと成長をアーカイブする歌詞でラップしていくYO-KING。20代後半の音楽家として爆発してきたYO-KINGが作った曲だが、その爆発力を損なうことなくこのギターリフをアレンジした、やはり20代後半の桜井秀俊も凄い。曲中、誰かに10回位連続で膝カックンされている(もしくはしている)ような動きになっていたが、こういうギターを弾かせたら、桜井の右に出るものはいない。続くのは打って変わって、THE真心時代のフォークナンバー「同級生」「ふわふわ人」。ここまでコアなセットリストになるとは、長年のファンでも予想出来なかったはずだ。しかしこれはこれで、これこそが真心であるよなあ、などとも思ってしまうから不思議だ。初期のこの2曲がむしろ新しく感じたりもする。この感想はデビュー当時から2人の人間の核心部分は今までほとんど変わっていない(もちろんいい意味で)、ということの裏付けにもなると思う。
 この日のサプライズはこれだけではなかった。しばらくゆったりめの曲が続くので、とお客さんを座らせ披露したのは、別れの歌三部作として、2001年に三か月連続でシングルとして発表した、「流れ星」「橋の上で」「この愛は始まってもいない」にプラスして吉田拓郎のカバー「流星」。ちなみにこの4曲を元に当時、永瀬正敏主演で、短編映画も作られている。これをすべて連続で演奏するのは、当時でもなかったかもしれない。それにしても最初の3曲を聴いただけで、真心の2人のソングライティングの秀逸さがわかってしまう。心憎いほど良くできた曲だ。そして奥野のキーボードとうつみのコーラスにより、ぐんと切なさに引き込まれる中、ここではやはりYO-KINGの歌心が際立つ。元々「イェーイ!」だけで全部持っていってしまう恵まれた声の持ち主だと思うが、こういった哀愁溢れるナンバーを歌わせてもとことん上手い。過去に俺の声には「憂い」がある、と自画自賛していたが、それも納得せざるを得ない、と誰もが様々に似たようなことを思っていただろうところに、「みんな俺がどれだけ凄いボーカルかわかったでしょ?」と決して照れ隠しなどではなく、いつも通りの自慢もみせていた。
 どっぷりとその世界に浸ったお客さんを今一度立たせ、吾妻光良&The Swinging Boppersが演奏してもまったく違和感がなさそうな、老いを自虐した「あれあれ、あの、あれ」。最近はギャグにならなくなってきた、という桜井が歌う。曲の構成、マウンテンホーンズの煌びやかな音に相まって、この日のドラム山口の衣装(薄い青のワンピースで腰の部分が細くそこから下は横に広がりをみせる)がやけにこの曲とマッチ、いや、スウィングしていた。さらに「I’m In Love」「STONE」と畳みかけるよう。「STONE」では途中で上野がファンには馴染みがあるベースラインを弾きだす。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Thank You」だ。これは昔、武道館公演でもやっているアレンジで大いに盛り上がる。そしてスライの曲達のいいとこどりみたいなアレンジを経て、「STONE」の後半部分にまた繋がる。この映像をスライに観せたら、どんな感想を抱くだろうか。またこの場合のSTONEの意味を知ったらどんな顔をするだろうか。
 あっという間にもう終わりが近づいていた。「Dear,Summer Friend」「Endless Summer Nude」で真夏のような空間を作り、客の手を降らす。ラストは「EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」でオープニングに帰ってきたようなファンキーなサウンドで皆を躍らせ、大合唱でめでたし。一体何なら出来ないのだろう?と問いたくなるほどの、盛りだくさんの内容であった。
 で、終わるはずもなく、アンコールの一発目は、真心のデビューのきっかけに大いに関係してるムッシュかまやつに捧げる「バン・バン・バン」。最初にYO-KINGがギターを持ち忘れ、途中で、YO-KINGに指摘されるまで桜井がギターソロを弾き忘れる、なんてシーンもあったが、今日もムッシュは真心を褒めてくれるだろう。
そして轟音と共に始まった「I’M SO GREAT!」、多幸感あふれる「新しい夜明け」、この曲だけは毎年外さない「Relax~Open~Enjoy」で豪華客船のクルーズが港に着く。ちなみに本編ラスト3曲が桜井曲で、アンコールのラスト3曲がYO-KING曲となっている。意図したものかどうかはわからないが、実にどちらとも真心らしい終わり方になっているのが面白い。それにしてもアンコールでの3曲、タイトルだけみても納得できると思うが、これをこのまま、東京五輪の閉会式でやってみてはどうか、と半ば真剣に考える。東京都知事さん色んな視察の中に真心ライブがあってもいいのではないでしょうか。例えそれが公費でも問題ないのでは。少なくとも僕は怒りません。
 あ、真心の30周年は丁度・・・と思ったら、どうやら2019年に迎えるそうです。しかし「周年とかはもう気にしない」とも言っていたので、しばらくいい夢を見ていたいと思います。

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