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2017年3月7日

ナナシ (25歳)
29
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GLIM SPANKYの魅力にやられて

不鮮明な時代に鳴り響く希望

別に語るほど衝撃的な出会いではなかった。ただ、某レンタルCDショップでまとめ借りした中の一枚。一度テレビで見たことがあって、もしかしたら好きかもしれないと思ったそれだけだった。
 結果、ハスキーボイスと絶叫するギターに一瞬で虜になってしまった。なんと凄まじい爆発力。今までほとんど女の子が歌う「ロック」には興味がなかったのに、GLIM SPANKYは何かが違う。何だ、彼女たちのこの魅力は。新たな扉が開いたような戸惑いと喜びに導かれるように、どんどん嵌っていって急き立てられるように彼女たちを一通りチェックする。
 その結果。赤茶色の髪、奇抜な色合いのワンピース、ニコリともしない口元、冷徹さすら感じさせるクールな目元。松尾レミの歌う姿にこれまた一瞬で虜になった。張り付けたような作り笑顔で歌う大集団を見慣れたテレビでよく見る「女の子」のイメージが彼女によって一新されていく。誰にも消費されない唯一無二の女の子がそこにいた。
 一体何が、何がこんなに魅力的なのだろう。きっと彼女たちの魅力はそのハスキーボイスだけではない。作品ごとに一つの芸術的世界観を作り出しているファッションやMVなどのアートワークも魅力的だが、きっとそれだけでもない。
 彼女たちの魅力は楽曲に宿るその好戦的な姿勢だと思う。例えば『怒りをくれよ』の一節も。
「怒りをもっとくれ 本気になりたいんだ まだ 全然足んねえな 怒らせてくれてよ」
 あるいは『ワイルド・サイドを行け』の一節も。
「進んでいこうぜ 今日だって道は分岐点ばかり 好奇心辿って 悪い予感のする方へ」
 この2曲なんかは松尾レミのハスキーボイスと亀本寛貴の絶叫ギターがさく裂している攻めの曲だが、どちらかというと晴れた午後を思わせるようなからりとした雰囲気が似合う曲『風に唄えば』なんかでも、その好戦的な姿勢が見受けられる。
 「思い通りいかない方が 毎日飽きずに楽しいもんでしょう 決まったルールに沿って生きているんじゃ 何も学べない だからはみ出していたい」
 彼女たちの曲はいつだって確信的に好戦的だ。先手を切ってはみ出し者であろうとし、奇抜であることを正々堂々と掲げて鳴らす。未来はわからない。だから好きにやる。そう言わんばかりに彼女たちの曲は不鮮明な時代に堂々と殴り込み、守りに入った人たちに楔を打っていく。先が見えないことを不安と捉えて歌う歌はたくさんある。はみ出し者であることの孤独を歌った歌もたくさんある。そういう内省的な歌とGLIM SPANKYの曲は一線を画しているのだ。
 彼女たちの曲ははみ出し者であるという自意識や時の流れには抗えないという事実を真っ向から見つめながら、それでも自分の信じた道を正面から睨んでいる。若さゆえの無鉄砲でも無邪気さでもない。彼女たちはむしろ不鮮明な時代を前提として真っ向から受け止め、それでも尚、個性をさく裂させて周りを自分たちのフィールドに変えていってしまう。
 そればかりではなく、彼女たちは聴く者に後に続けと言うのだ。それもその牽引力は何かを批判する上に成り立つのではない。例えば『時代のヒーロー』の一節なんかが特徴的だ。
「腐った奴が嫉妬する そんな奴ほど笑わせたい 上手に話せないだけで同志なんだろう」
 彼女たちは自分たちを鼻で笑うような人たちのことをわかりやすく攻撃したり、批判したりはしないのだ。それに加えて無視して捨て置いたりもしない。彼女たちの音楽はそんな人たちの中に眠る闘志を見出し、彼らを同志と見做しては引き連れて一緒に行こうと寛大にも手招きする。そうやってGLIM SPANKYの音楽は聴き手それぞれの中に眠る個性的で野心に満ちたワタシを解放するのだ。
 男女二人組のロックユニット。唯一無二のハスキーボイス。奇抜で個性的なアートワーク。クールな目元の女の子。その隣で絶叫ギターを奏でる痩身のギタリスト。ちなみに一度ステージを降りると、どんな時も自分の意見をしっかりはっきり伝える力のある松尾レミの隣で時にふわふわとしながらも、唯一無二の彼女をはっきりと讃え、そして好きな物に対して一心な姿勢を感じさせる亀本寛貴という二人のギャップに加えて、二人の波長の合ったやりとりもたまらない。こんなにも今世間を騒がせている二人なのに、当の本人たちはなんだかひどく自然体なのだ。そんな姿も含めてこの二人組の魅力に取りつかれてしまう。
 たくさんのバンドがいるなかでのレアケースでありながら、その全てが彼女たちにプラスの要素として作用する。どんなものが流行っている時代か、どんなものが求められている時代か、そんなことは関係なく、彼女たちは不鮮明な時代にまるで誰にも見えない確約が見えているかのような確信的な足取りで現れた。そして現れたと思ったら、他に類を見ない爆発力で一度見た者、聴いた者を圧倒する。その無敵な姿に虜だ。
 「ロック」が何かなんて、永遠に答えのない問いかもしれないけれど、「ロック」は形じゃないんだとGLIM SPANKYを見ていると改めて思う。
 形は関係ない。大事なのは気持ちなのだ。はみ出し者でも、先が見えない未来でも、立ち向かっていく。自分たちの鳴らす音を信じていく。そういう貫く強さをロックと呼ぶなら、彼女たちは紛れもなくロックであり、この不鮮明な時代の「希望」だと思う。

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