1497 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

RIP SLYMEになりたい

いつでもかっこいい憧れの大人たちへ

「リップスライムになりたい」
初めて思ったのはたぶん小学生のときで、音楽番組で『楽園ベイベー』を歌うブラウン管のテレビの中でお揃いのツナギを着たお兄さん達は、不自然なほどハシャいでいた。2回目に思ったのは中学生のときで、3回目は初めてライブを観に行ったとき、大人になった今ではもう常に、リップスライムになりたいと思っている。とはいえ、ラップがしたいとか歌いたいとかステージに立ちたいとか、そういうことではなくて、何故かと聞かれたらうまく答えられないけれど、やっぱりリップスライムになりたい。あんな大人になりたい。小学生の時に初めてテレビで観たメンバーはたぶん20代のお兄さんだったけれど、”30歳になるくらいなら死ぬ!”なんて雑誌のインタビューで冗談を言っていたPESは今年41歳らしい。なるほど、だって楽園ベイベーを狂ったように聴いていた小学生の私は今年25歳になった。
“ユルくておしゃれ”リップスライムのパブリックイメージはたぶんきっとこれで、勿論私もそんなリップスライムが大好きだ。だけど実際はそんなユルいだけな訳ではなくて、”リップスライムはこうじゃないと”という世間のイメージのために、意図的か無意識かは分からないけれどそう見せてくれていたのかもしれないということには薄々気付いている。いや、それもこちらの勝手なイメージに過ぎないのかもしれないけれど。

リップスライムのワンマンライブはいつも必ず定刻に始まる。これまで何十回とライブを観てきたけれど、たぶん開演時間が押して始まったことってほぼないんじゃないだろうか。チケットには”開演時間は定刻で始まります”という注意事項がいつも書かれていて、開場が遅れようがしっかり定刻に始まる。これって凄いと思う。ユルくない一面を垣間見ると、尚更やっぱり思う、リップスライムになりたい。色々なアーティストのライブを観るとグっとくるようなMCだったり演出だったり、エモーショナルな瞬間に涙が止まらないことって多いけれど、リップスライムのライブで泣いたことってほぼ無いに等しい。(ちょっと泣いてしまったことは勿論ある、けれど。)だってそこは、楽しい、ひたすらに楽しいという感情で溢れている。いつだって楽しいがすぎるのだ。

音楽を聴くことは楽しい、と思う感情の原点は確実にリップスライムで、メンバーが影響を受けたという曲は何だって聴きたかったし、映画も漫画も小説も、何だって知りたかった。The PharcydeだってBeastie BoysだってJurassic 5だって彼らの先輩ラッパーだってロックバンドだって、今お気に入りの曲だと紹介しているものだって、聴けるものは何だって聴きたいと思った。好きなミュージシャンが聴いてきた音楽を、聴いている音楽を、ものを、追いかけることは楽しくて仕方なかった。それは現在進行形で今も。

アルバイトができる年齢になれば、過去に出た作品も雑誌も、集められるだけ集めた。その度にいつも、新しいオモチャを手渡されたようなワクワクが止まらなかった。CDラジカセで、まさに擦り切れるほど聴いて歌詞カードがクシャクシャになった大好きな『TIME TO GO』というアルバムを聴く手段は、MDウォークマンなってiPodになってiPhoneになってSpotifyになって、『ミニッツメイド』という曲にPESが参加していない理由を中学生くらいでやっと理解して惜しすぎると今でも思ったりして、因数分解で既に挫折していた苦手な数学の授業中にイヤホンでこっそり聴いた『楽園ベイベー』は、満員の通勤電車で聴くようになった。10年以上飽きもせず聴いているこの曲は、感涙するようなメッセージ性があるわけでもなく、
「ココナッツとサンシャイン・クレイジー」である。
ココナッツとサンシャイン・クレイジーって一体なんなんだ。

ひょっとしたらこの世界は小さな箱庭で、上から巨人がせかせか働く人間を見てニヤニヤ笑ってるんじゃないか、なんて考え出したら寝られなくなるくらいくだらない中二病みたいな話から派生したあれこれも

「朝まで悩んでた意味は 君が思うより早くムダになる」 / 『ONE』

朝起きたら夜中考えていたくだらない話は何だったのか忘れている。

せっかくの休日に、太陽が高く昇りきった昼まで寝てしまってやりたかったことは何も出来ずに、あっという間にちびまる子ちゃんからサザエさんへの流れが終わって自己嫌悪に陥ったって

「ダラダラして過ごしていたら また1日が終わってしまった バカか? 自己嫌悪 少し反省 明日こそはやろう それに賛成だな あーだーこうだ言っても そう 俺にはちと出来すぎた妄想 今日はもうよそう 明日の天気予報は曇り それよりベッドのぬくもりが欲しい」/『Mellow Morrow』

口ずさめば、まぁいいかこんな休日も。自堕落な休日も超が付くほどポジティブにどうでもよくなる。何をしてくれるでもなく気付いたら横で楽しませてくれるリップスライムの音楽が、ライブが、余裕綽々に見せてくれるユルくてかっこいい大人像が、そこにチラチラ見え隠れするちょっと真面目なリップスライムが、しぬほど好きだ。

私が40歳になったら果たしてそんなかっこいい大人でいられる可能性はあるのだろうか。

まぁいいやそのときになったら考えよう。リップスライムになりたいと思いながら満員電車で聴く『楽園ベイベー』は
「365日が夏休み 太陽は沈まない」
今は冬だし吹く風に手がかじかんで寒くて仕方ないけれど、なんだその楽園めちゃくちゃ羨ましい。

でもやっぱり
「ココナッツとサンシャイン・クレイジー」
って一体なんなんだ。

ああ、今日もリップスライムになりたい。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい