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2017年3月15日

新井ヒサコ (51歳)

ロックミュージシャンについて思うこと

エレファントカシマシ 「俺たちの明日」を聴いて

なぜ私達はこんなにもロックミュージシャンに魅了されるのだろう。

中学までは図書館にある本を貪るように読んだ。小説やエッセイが殆どだったけれど、田舎の中学生にとってそれはタダの娯楽であり、世界を知る扉でもあった。
今はグーグルで世界の裏側の街並みも見えるし、YouTube で言葉を喋るアメリカの猫の動画を見ることもできる。SNSやブログで誰かがリアルタイムに呟いて、苦労せずとも他人がどう考えているのか頭の中を覗くこともできるし、多種多様の思考回路や立ち居振る舞いを勉強させてもらうこともできる。ちょっと検索すれば誰かの歴史やエピソードがずらり。
世界へあっという間に旅することも、ある意味タイムトラベルのように過去を紐解くのも情報という点では物凄くグローバルに詳細かつ濃厚なものを手に入れる事になったのだと思う。
他人の体験も経験値もまるごとそっくり見られるなんて四半世紀前までは考えられなかった。
とても素晴らしく、とても賢いツール。
世界はとんでもなく広く、そして自由になったように思う。知識や情報や多種多様の人の個性が、いま、同じ世界という地平に立っている。
そして世界は広くなったのと同時に世間は狭くなったように思う。
狭いというのは語弊あるかもしれない。身近になったというか。
何百キロも離れた人とも会話したり普段何をしているかわかったり、一緒に笑ったりしてるうちに、そこに知り合いという人間関係ができる。自分の言動が伝わるのは何キロ以内ではなくて世界中ってことにもなる。
人との距離感を掴むのに、たくさんの人と付き合うのに、人にはどのくらいの許容量があるのだろう。
誤解なんて当たり前だ。自分の発した言葉が歪んだ形で会った事も無い人に一気に伝わる。
パニックになる人が増えてもおかしくない。正解がわからない。

昔、女優は日本で1番人通り多いところで裸になる職業だ、それを出来るのかと女優志望の娘に父が言ったと誰のエピソードだったか忘れてしまったが、確か実際女優になっている人だったと思う。
ミュージシャンは心を裸にする…まで行かないかもしれないけれど、バッシングなんて覚悟の上だろう。それよりも鳴らしたい音がある。伝えたいことがある。
誰かの涙を止めたい。誰かを温めたい。
相手が一人であっても、物凄く多い人数でも。
傷ついているのはひとりじゃない。迷っているのも、完璧じゃないのも、たまに間違えてしまうことだってある。
でも、この世界の素晴らしさも自分達は知っている。それを伝えるんだ。
優しさが、愛が、希望が、安らぎが。明日がある、明日があるんだ。
頑張りは報われ無いかもしれない。
目を曇らせるトラップはそこかしこにある。でも、そんなの踏みつけてやる。

エレファントカシマシがテレビで歌っていた「俺達の明日」。
“さあ がんばろうぜ!オマエは今日もどこかで不器用に
この日々ときっと戦ってることだろう
さあ がんばろうぜ!負けるなよ そうさ オマエの輝きはいつだってオレの宝物”

宮本さんは旧友の気安さで歌いかける。
シンプルだ。シンプルかつどストレート。
昔から不器用で仔犬みたいな目の輝きは変わらない。
そんなに知らないのに私が言うのはどうかと思うが、この曲はとてもとても胸に沁みた。
すごいな、エレカシ。
心の靄が一気にどっかへ行っちゃったよ。

私達はなぜ頻繁にライブに足を運ぶのか?音楽を聞いて涙を流すのか?なぜ、自分の好きなバンドが永遠に活動して欲しいと願うのか。
その不器用さや無垢な魂や、バカみたいに誠実であろうとする姿勢に、浄化され鼓舞されるからじゃないだろうか。
希望がそこには実体を持って頑張って立とうとしている。
本当は傷だらけかも知れない。たまに血が滲んでるんじゃないかと思う時だってある。
その時に思うんだ、ひとりじゃないよ、私達もだよ。
だからその無垢な魂を鳴らし続けてくれ。

ロックは死なない。絶対にだ。

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