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涙が滲んだ、その先に

NICO Touches the Walls『Ginger lily』が咲いた瞬間

《さあジンジャー 滲まない想いを歌ってみるから》
2017年11月25日、私はNICO Touches the Walls史上初となる主催フェス「ニコフェスト!」本編最後に演奏されたこの曲の最後のフレーズを聴き終えたとき、ステージ上の彼らの姿が涙で滲んでいた。
おそらくこの日、全国各地から集まったNICOのファンは皆、この時点ではまだタイトルが分からないこの曲が「Ginger lily」であることに気付いていたと思う。

「ニコフェスト!」が開催される数日前、12月6日に発売される「OYSTER-EP-」の収録曲が発表された。
発表されるや否やSNS上ではいつもの如くファンによる考察が飛び交う。
ツアーで演奏されたあの新曲は〇〇か?この英単語の意味は?これは造語なのか?
というのも、NICOの楽曲のほとんどの作詞作曲を担当している光村さんがダブルミーニングや裏テーマを込めることが多い事をファンはよく知っているからで、彼らの音楽をより知りたいという一心で私達はああでもないこうでもないと言いながら考察するのだ。
そんな中、5曲目として記載されていた「Ginger lily」。
そもそも「Ginger lily」とは?から始まり、発表されてそんなに時が経たないうちに、7月16日の誕生花であること、花言葉は「あなたを信頼します。」だということが分かった。
7月16日。私達は気付く。この日はNICOの結成日だ。
まだ歌詞もメロディも知らないこの曲は、彼らにとって何か特別な意味を持つ曲なのだろうと私は確信した。新しい名曲の誕生の予感だった。

「ニコフェスト!」本編最後、光村さんのMCのあとに演奏されたのは聴いたことがないイントロ。
歌詞は《ねえジンジャー》という語りかけから始まった。
「ジンジャー」という単語が含まれているから当たり前だろ、と言われればそれまでだが、この曲が間違いなく「Ginger lily」だろうと確信した。
ただ、仮に歌詞に「ジンジャー」という単語が含まれていなかったとしてもこの曲が「Ginger Lily」だと気付いていたと思う。
それほど言葉の端々から彼らのこれまでの苦悩とこれからの希望が滲んでいた。

私がNICOのことを知ったのはちょうど5年前の12月、「夢1号」がリリースされた頃だった。NICOのファンになってからそれ程経っていないと思っていたが、NICOがメジャーデビューしてから10年ということは、メジャーデビューしてからの半分はリアルタイムで追っているのだと気付き少し驚く。
それと同時に、もっと早く彼らのことを知りたかったと思う。
NICOを知ってからの私は音源・過去のインタビュー記事・ラジオの文字おこし・メンバーのブログなどを手当り次第にあさり、「私が知らなかった時代のNICO」を必死にかき集めた。
NICOの音楽の良さに惹かれれば惹かれるほど、その音楽を生み出す彼らの人柄や考えを知りたくなった。
それらを読んだところで彼らのことをすべて理解するのは到底無理なのは分かっているのだが、少しでも新たな面を知れば、今まで聴いてきた曲がまた違った顔を見せることもある。
こうしてNICOの歴史を遡った結果、どうやら何故か彼ら(主に光村さん)はずっと何かと葛藤および格闘しているようだ、と思った。
葛藤および格闘の相手はそのときによって違うのだろうが、彼らの場合、「自分自身」との戦いが割と多くを占めているのではないかと想像した。
私が思うNICOの魅力のひとつは「様々なジャンルの音楽を創ることができて、そしてそれがすべて高水準であること」だと思っているのだが、おそらくかつてはそれが彼らの悩みだったのだろう。
彼らはいとも簡単にやってのけているように見えるが、絶対にそんな訳はないのである。
きっと私達の想像を超える努力があるはずなのである。
最近、各誌では彼らの多彩な音楽性が魅力だと書かれていることが増えてきたような気がするが、私としては、「やっとこの時がきたか」と思わなくもない。
それはともかく、コンスタントに私達に良い音楽を届けてくれる存在というのは、実はなかなか見つけるのが難しい。
その点において、NICOが成し遂げていることは本当に凄いことなんだと感じる。
NICOはいつだって私達に良い音楽を届けてくれる。
いつだって高い壁の向こうから聴こえるその音に呼ばれて私はこれまでの壁を乗り越えてきたのだ。

NICOが結成されてから、この「Ginger lily」が演奏されるまでに、彼らは一体どれくらいの壁を乗り越えてきたのだろう?
ステージを眺めながらそんなことをふと考えた。
これまでのNICOと、これからのNICO。
それが今この瞬間に詰まっているような気がして、たとえ想いが溢れて涙が滲んでも、一瞬たりとも見逃せない、聴き逃せないと思った。
このとき一番印象に残っているのは、会場全体が纏っていた空気だ。
会場全体が「Ginger lily」が咲く瞬間を見守っているようだった。
あたたかく、優しい時間。
あの時間を共有できたことを嬉しく思う。
演奏が終わり、ひと呼吸おいたあと、私達はありったけの拍手を彼らに送ったのだった。

「Ginger lily」の歌詞には2度、「アスファルト」という単語が登場する。
1度目は《ひび割れてるアスファルト》、2度目は《色づいてくアスファルト》だ。
NICOの楽曲のうち「アスファルト」という単語が出てくる曲といえば、「かけら―総べての想いたちへ―」があるが、ここでは《涙が滲んだアスファルトに また花咲くよ/花咲かせるよ》と歌われている。
「アスファルト」はNICOそのもの、もしくは彼らの心のような気がした。
NICOが葛藤の先に、涙の先に咲かせたのはこんなにも美しい楽曲「Ginger lily」だった。

私はこれからもNICOの楽曲と共に生きていくだろう。
これからも、お側に。

「私はあなたを信頼します。」

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